🅿︎80。アニメーション「ＷakeＵp,Ｇirls！」2018年回の設定page31

🅿️16。🅿︎17〜🅿︎34・🅿︎47参照。
裏プロフィールを主軸に、公式プロフィールを補助として創作してます。

「今の I-１clubには珍しい『風雲児』です」
吉川愛は鈴木萌歌を守ろうと意を決し、白木徹に意味深な言葉を以て働き掛けました。

彼女は最後の言葉で［風雲児］を強調しましたが、その意図は…初代センターと同類ですよ…と暗に強く意見したのです。

その言葉は白木徹も理解したようで、顔を綻ばせながら、
「風雲児ですか、懐かしい響きですね」
と、意味ありげな受け答えをします。

言わんとする事が伝わったと察した愛は、緊張のあまり一瞬呼吸が止まったかのような息苦しさを感じます。

二人の対話に少し違和感を持った鈴木萌歌は、低姿勢だった身体を楽にすると、意味深な笑みと緊張した作り笑顔とを見比べ、不安を頂きます。

鈴木萌歌に視線を戻した白木徹は、
「いいでしょう、新たな風をどのように吹かせられるか、思うがまま務めてみなさい。そうですね、正式就任発表は新曲のリリースと同時に行います。それまではセンターを置かず、ステージではそのポジションに、高科里佳君を代役に立ててください。鈴木萌歌君は新曲のパフォーマンスに集中するように、いいですね」
事務報告のように淡々とした口調で指示を出しました。

その指示に目が開かれた萌歌は、
…早坂さんの言った通りだ。私は代役扱いではないんだ…
と改めて驚き、白木徹の顔を漠然と眺めるのでした。

吉川愛からの返事は聞こえましたが、放心したように無言で立つ鈴木萌歌に気付いた白木は、
「どうしました、何か不満でもあるのですか？それとも、まだ他に話が有るのですか」
と尋ねるも返答がなく、愛から声を掛けられて漸く我に返り礼を述べてきたので、その意思を確認すると、
「無ければ戻っていいですよ、しっかりレッスンに励んでください」
何事もなかったように作業に戻りました。

執務室を出ると吉川愛が、
「“もか”ちゃん良かったね」
と喜び励ますと、萌歌は硬い表情で彼女と向き合い、
「愛さん有り難うございました、これからも宜しくお願いします」
と、頭を下げながらも素っ気なく伝えると、先に歩き出しました。

驚いたのは吉川愛です。
…“もか”ちゃんが、私を愛『さん』て呼んだ⁈“もか”ちゃんが、有り難う『ございます』と言った！あの“もか”ちゃんが、お願い『します』と言った！！…
思わず右手を差し出し、引き止める仕草をするのでした。

突然“しおらしく”なった萌歌に驚き、並んで歩く事に戸惑って後ろ姿を見送っていると、何を思ったのか萌歌は足早に戻り、改めて愛と向き合います。
しかし視線は合わせず、何か言いたそうに恥じらってます。
愛は急かさず、笑顔で萌歌の表情を覗き込むように眺めて待つと、顔を赤面させながら萌歌は、
「あ、あの・・。し、しっ！島田真夢に勝たせてください！」
何とか裏返った声で伝えます。

先程以上に驚いた愛は、萌歌の両手を無意識に握ると、勢い真顔で、
「うん、協力する！“もか”ちゃんに全てを賭けるよ」
力強く宣言します。
島田真夢の親友の反応を確かめると恥ずかしく成ったのか、決して目を合わせず、手を振り解き駆け足で去る萌歌でした。

久しぶりに何か少しトキメキを感じた吉川愛は、
…“もか”ちゃんは、こんなに可愛かったんだ・・・。真夢との勝ち負けなんてどうでもいいけど、ＷＵＧちゃんとネクストストーム（岩崎志保）とは、いつまでも『競演』したいな…
鈴木萌歌を握り締めた拳に力が入りました。

I-１club創成期での島田真夢の追放劇による人気の衰退。その困難を再興させた岩崎志保の挫折。その後チーム編成が定まらず、再編成中に岩崎志保の脱退と、華やかなステージの裏で多くの I-１アイドルの悲哀を目の当たりにして来た吉川愛は、真にパフォーマンスを楽しめる環境を願うのでした。

そして……こちらは仙台市のグリーンリーブズ。全員に報告を兼ねたミーティング中です。
ＲunＧirls,Ｒun！の福島県進出プロジェクトの進捗状況を説明し、次に林田藍里と久海菜々美への連絡です。

「早坂さんから連絡が入り『協力するかは曲を聴いてから判断する』との事で『サンプルを送るだけでなく二人と直接面談がしたいので、東京の事務所に来てください』だそうよ」

丹下順子からの伝達で、小さく気合いを入れた林田藍里と、緊張して大きく深呼吸をする久海菜々美です。

「どうかしら、土地勘が無いでしょうけど、二人だけで東京にいける？」
藍里は兎に角、まだ高校生の菜々美を引率なしで送るのが心配な丹下順子でしたが、

「大丈夫よ、無事“あいちゃん”を早坂さんの元に送り届けますから」
菜々美が自信満々に答え、

「頼もしいガイドさんが同行しますので、安心してください」
温かい目で見つめながら、軽く受け流す藍里です。

しかし誰よりも気掛かりで心配したのは島田真夢でした。

page32に続く。