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2020年版・YouTubeで活動する歌い手のオリジナル推し曲(前編)

 今回は2020年に発表された新曲の中でも、僕の心を特にアツく震わせた楽曲の話をしよう。タイトルは「Flame」。曲名からしてメラメラと熱くなってくるなあ。アーティストはhiro3nimum × Naked Identity Created by King。YouTubeで配信をメインに活動中の人気女性ボーカリスト・hiromiと、4人組音楽ユニット・N.I.C.Kのコラボレーションだ。N.I.C.Kについての深い知識が僕にはないので、こういう紹介の仕方で差し障りないかどうか、ちょっと自信がない。4人組ロックバンドです!とスパッと言っちゃってもいいんだろうか。

 新曲との出会い方は、現在と従来ではかなり移り変わっている。僕の場合だと、音楽に興味を持ち始めた頃は、TVやラジオのヒット・チャートや、街角から不意に流れてくるBGMが新曲を知る主なきっかけだった。しかし現在は街角のBGMと言っても、そもそも外出する機会自体がグンと減っているし、家にTVがないというのも、特別珍しいケースでもなくなっている。TVのある家庭でも、電源を入れている時間、もしくは入れていたとしても画面の方を向いて内容に注意を払っている時間は従来より減っているのが大半だろう。

 そんな中で注目すべき新しい動向が、インターネット発の音楽活動。大手メディアに乗るチャートよりも、自分で見つけた感覚をより強く得られるのが特色だ。だから愛着も深くなりやすい。今後ますます新たな動きが活発に行われそうな媒体だ。

 この楽曲は2020年11月にYouTubeで公開された。YouTubeも音楽鑑賞をするにあたっては、CDよりは音質的に劣ると言われていた頃もあったろうが、現在は新曲のリリースは配信のみというケースはザラにある。音質がどうこういう以前に、そもそも聴くことができるかどうかという点で、YouTubeも重要な鑑賞手段なのだ。

 そのYouTubeに自らのチャンネルを立ち上げたのが、ボーカリストのhiromi。この曲が発表される前から、僕は彼女の活動を追っていて、「このシンガーの歌なら間違いない!」という印象が先にあった。だから、まったく知らない曲でも再生してみようという気になったが、これはどんな歌い手にも当てはまることではない。まずは、自分の歌なら気分よくなってもらえるというイメージを浸透させるまでが一苦労だよなあ。そうでないとなかなかオリジナルの新曲というのは聴いてもらえない。

 「Flame」のサウンドはハードかつスリリングで、僕としてはこの上なく満足。イントロのシンセサイザーによる繰り返し駆け上がる旋律と、その脇を固める他のパートのコンビネーション。これだけでも、これからとんでもない事が起きるぞ!という予感をプンプン漂わせる、鬼気迫る始まり方になっている。最初に聴いたときは、歌い出す前から僕の脳裏には「!」マークが点灯していた。

 彼女のチャンネルで日常的にカバー動画を楽しんでいるファンには、突然いつもとは気色の違う、キリキリとエッジの立った激しい曲がきて面食らった方もいるかも知れないが、僕は「これぐらいやってくれた方が面白い」と思っている。歌唱力は申し分ないけど、音楽的なバックボーンは僕とはそこまでピッタリ一致はしないので、hiromiのYouTubeチャンネルにあるものなら、なんでもかんでも見ているわけではない。だがこのオリジナル曲は僕にとっては間違いなく大ヒットだ。

 hiromiは、親しくしている他の歌い手を引き合いに出してか、「自分の声はそんなにカワイクない。イカツイ声質だからな~」といった趣旨の発言をしていたが、この「Flame」の重厚なサウンドだと、並みのシンガーなら簡単に埋もれてしまうだろう。だが、そうはならなかった。これだけのサウンドにキッチリ対峙できているのだから、イカツイのはむしろ長所だと思って、迷いなく突き進めばいい。

 いちリスナーとしては普段のカバー動画ももっとイカツイ選曲にしてくれた方が、僕にとっては面白いチャンネルになると思う。曲数が多い割には、どれもこれも他所でもやってそうな平凡な並びで、ここでしかやってない痺れるチョイスをしている印象はない。これは諸刃の剣で、こればかりに傾倒すると視聴者層が限られて再生数に影響しかねない。再生数を稼げない動画に時間を費やすわけにもいかないだろう。そこは運営方針もある。口出ししても仕方ない。

 そんなわけで、変わり映えのしない日常に飽き飽きしている方、たまった鬱憤をスカッと晴らしたい方にはぜひこの「Flame」を聴いて、僕のように全身に鳥肌をたてながら、飢えた刺激を満たしていただきたい。本当にゾクゾクする楽曲だ。

 後で調べて分かったことだが、N.I.C.Kのメンバーの作品に、僕は過去に触れたことがあった。それがこちら。YouTubeチャンネル「DANCEROID jp」に掲載の「EZ DO DANCE」だ。

 この他にも、2013年リリースのTRFのアルバム「TRF TRIBUTE ALBUM BEST」収録曲である「Unite! The Night!」でも参加しているクリエイター・ゆよゆっぺによる作品。大手中の大手、エイベックスからリリースされたCDの制作に絡んだ人物とのコラボだったとはなあー!これは凄いことになるはずだ。

 hiromiもメインストリームに上がってくるのは時間の問題なような気もする。2020年のNHK紅白歌合戦の話題をさらっていった、LiSAやYOASOBIの楽曲と、「Flame」を並べて聴いてみたとしても、「Flame」の所だけガクッと落差を感じるかと言えば、まったくそんなことはない。すでに流行しているヒットソングに匹敵する質感で聴ける楽曲だと僕は思っている。