自粛疲れ…こんなときこそ、聴きたくなるロック3選

2020/04/29


 Stay homeが叫ばれだしてから、結構な月日が経過した。我々音楽愛好家にとっても、何とも煮えきらない状況が続く。こんなときこそ、元気出していこう!今回は音楽講師が執筆した、元気が出るブログ記事を紹介する。

ボイス・トレーナーのMISUMIさんが執筆するブログ「声出していこうっ!」から掲載。体調までは崩していなくても、このご時勢に気分がすぐれなくなるのは誰にとっても自然なことだろう。みんなエネルギーを必要としている。幸いにもまだ健康で活力に満ちた音楽愛好家は、積極的に自分のパフォーマンスをウェブ上に出して、心や体の弱っている人たちにエールを送ってみてはいかがだろうか。
 僕も記事の最後の一文を受けて、自分の引き出しから「とっておきの元気出るやつ」を、ロック縛りで3曲引っ張り出してみた。
 これ聴いてアガってこー!Here We Goー!
Jazztronik「CANNIBAL ROCK」Soil &"Pimp" Sessions Rework
Jazztronik「the REMIXES PART:II」7曲目に収録。2006年発売。

 まずはインストゥルメンタルものから。Jazztronikの持ち曲をSoil &"Pimp" Sessionsの解釈で表現したのが、こちらのバージョン。楽曲タイトルの読みは「キャニバル・ロック」だ。作曲者の野崎良太本人が、自らのレギュラーFM番組「ジャジン・ザ・ナイト」でそう読んでいたから間違いない。この番組ではゲストにSoil &"Pimp" Sessionsのメンバーを招いて、この楽曲を流した回もあった。
 野崎良太自身もこのバージョンを気に入った様子だった。本当は自分もこんな風に作りたかったが、(自らの同名タイトルのアルバムに収録のオリジナル・バージョンを指して)何故かあんな風に仕上がってしまって…という主旨の発言をしていた。
 緻密な構成が売りのJazztronikの音楽に慣れ親しんでいるリスナーには、このバージョンの大胆な荒削りっぷりには肝を抜かすことだろう。僕は野性味溢れるこちらのバージョンも大好き。2:50あたりからのドラムのみになる部分は、Jazztronikのオリジナル版では音程がついているのだが、あえて音程を取っ払うことで、逆にテンションが高まっている。
 CDリリース当時は、僕もレコーディングされたもので十分満足していたが、後にSoil &"Pimp" Sessionsのライブを体感してしまうと、CDを聴き返した時に「いやいやいや、こんなもんじゃないんだよ、生演奏はもっと凄いから!」と思わずにはいられない。
 僕は全員揃ったSoil &"Pimp" Sessionsの本公演から、その派生バンドのピアノ・ベース・ドラムの3人組であるJ.A.M、さらにピアニスト丈青のソロ公演まで、いろいろな形態で彼らの生演奏に触れてきた。だから感じることだが、あのドラムのみになるパートは、ライブだともっと低音域がドスドスと体に響いてくるところだ。家で聴いていると、ものの見事にオイシイところが差っ引かれてしまっている気がしてならない。
 Soil & "Pimp" Sessionsのライブを一度経験してしまうと、家庭用の再生機器の限界を、否が応でもまざまざと見せつけられてしまうだろう。どんな腕の立つエンジニアであっても、彼らの演奏の熱量が高過ぎるあまり、これをまるっとパッケージングすることは不可能ではないかとさえ思える。それぐらいパワーに満ち溢れている生演奏なのだ。
 Soil &"Pimp" Sessionsについては、その録音内容自体を楽しむというよりも、CDを流しながらライブの思い出に浸るという聴き方を僕はしている。旅行から帰った後に写真を眺めているような感覚だ。
 一日も早く、すべてのミュージシャンが大観衆の前で高らかに生演奏を披露できる日が戻ってきて欲しい。まあでも、とりあえずは録音物でアガってこう。彼らのライブを体感したことのあるファンならば、CDではこうであっても、現場ではどんな音で鳴っているかイメージすることができるはずだ。
 よっしゃあ〜、アガってけー!

TRF「ROCK IT ON!!」
TRFミニ・アルバム「EZ DO DANCE」2曲目に収録。1993年発売。

 続いてはボーカルも入ってるチューンを。このミニ・アルバムは発売前日に入手して、めっちゃリピートした。やはりDJ KOOの高速ラップ・パートがブチ上げポイントだろう。当時はJ-POPにラップ・パートが挿入されている楽曲もそんなに多くはなかった。TRFは日本のダンス・ミュージック形成の雛型になったとも言えるぐらい、シーンへの影響力のある存在だと僕は思う。
 ミリオン・セラーのシングルもいいけれど、こういう人目にあまり触れない所にある楽曲の方が、アツいのがたくさんあるんだよね〜、TRFは。シングル「Silence Whispers」のカップリングでは、先のJazztronikリミックスによる「Going 2 Dance'06」を聴くことができる。
 DJ KOOは最近You Tubeでの配信もしている。ボーカルのユーキがゲスト出演していた放送もあって、そのときは視聴者からマニアな選曲がコメントされる度に嬉しそうな反応をしていた。その中には「Reason of love」も挙がっていたのだが、僕も「それそれそれ!おお〜、分かってるやん!」と、嬉しくなってしまったものだ。
 TRFのレパートリーは、ブチ上げダンス・ミュージックの宝庫。シングルを一切使わなくてもフロアを熱くすることが可能だ。もし、このノー・シングル・パーティーを開催するとなったら、「ROCK IT ON!!」は間違いなく主力となるチューンだろう。
 DJ KOOもYou Tube上でDJプレイを披露してくれることがあるのだが、リスナーの僕としては、ライブ・ツアーのセットリストやベスト盤の収録からは漏れがちな曲を多めに詰めこんでもらえたら、もっとアツいのに!と思う。会場の動員やCDのプレス枚数なんて数字に捉われない、フットワークの軽い選曲をして欲しいところだ。
 バラエティーの仕事もいいけれど、もうちょっとミュージシャンの方に比重を置いたっていいんじゃないだろうか。こんなときだからこそ、Burst drive Mixの続編を制作するのもアリ。あれ良かったのにな。リスナーには見えていないだけで、既に水面下では動いているのかも知れないが。
 発売当時は、こんなコアな曲の入手には、シングルの購入とは違ってまとまったお金が必要だったが、現在では配信があるのでバラ売りしてもらえる。すごい時代になったなあ。
 もっともっとアガれー!

m.o.v.e「ROCK IT DOWN」
m.o.v.eアルバム「electrock」5曲目収録。1998年発売。

 最後は、主旋律の音階にもうちょい動きのあるものを。m.o.v.e一番の売りは、motsuのマシンガン・ラップ。パフォーマンスのみならず、作詞のスキルにも長けている。僕の一番好きなラッパーだ。アルバム全体を通して言えることだが、この楽曲においても、16分音符でこまごまと刻まれるシーケンス・フレーズとドラムのコンビネーションに、多彩な展開で絡む打楽器のフィルインが心地良い。さらに、ラップの途中でボーカルのYURIがスポット的に加勢するのが、元気が出るポイントだ。メンバーの木村貴志は自らのユニットのみならず、先のTRFにも楽曲提供をしている。
 僕はm.o.v.eのデビュー当初からずっと聴いている。YURIには大変申し訳ないが、最初の頃は、プロフェッショナルな仕事をしている男性2人の足を引っ張っているようにしか映らなかった。なんで仲間に入れてもらえているんだろう?と不思議で仕方がなかったが、リリースを重ねていくうちにメキメキ成長を遂げ、今となってはボーカルはYURIでなければあり得ないと思えるまでになった。スカウトした木村貴志の眼はやはり本物で、僕の眼は節穴だったわけだ。プロって凄いねー!
 YURIがすっかり成長しきった後で、改めてこのデビュー曲「ROCK IT DOWN」を聴くと、リリース当時は「作曲とラップは完璧なのに、歌だけ物足りん!んん〜、めっちゃ惜しい」と思いながら聴いていたのに、今ではその物足りないボーカルまでもが、なんだか愛おしく聴こえてくるから不思議なものだ。ユニットに対する愛着が、印象を変えてしまうこともあるんだろうか。
 最後は、このブログでもちょくちょく引き合いに出している、第一興商のカラオケ録音・録画サイト・DAM★とも公開曲の話もしておきたい。motsu役をMC DOCさん、YURI役をコマのまあこ休止さん、このお二方による同曲のコラボ動画(2017/10/27公開)がある。僕もハマったなあ。新しいテイクも生まれにくくなっているし、過去の公開曲をDigっていく良い機会かも知れないね。これも見て元気出してこー!

 以上、ロック縛りの3曲だった。どれを聴いても元気出てくる!全部挙げてみてからやっと気づいたけど、3曲とも生ギターがサッパリ出てこないんだよね…あぁどうしよう。こんなん何がロックじゃ!?と言われたら、何も返答できない。
 でも昔誰かが言ってたな。ロックは音楽のジャンルじゃない。人の生き様だ!スピリットなんだ!てな感じのことを。それならば、ギタリストを使わないで表現するロックがあっても良くない?それがこの記事だ。
 
 あなたが大きな音で聴きたい音楽は何ですか?