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ツカミはOK! 注意をひきつけるイントロ3選 TM NETWORK編

 今回はイントロに着眼点を置いて音楽鑑賞をしてみたい。ポピュラー音楽のイントロは、リスナーが最初に触れる部分。第一印象を良くすることは大事だ。シングル・カットしてリリースする楽曲なら、尚いっそうのこと。オリジナル・アルバムの中盤や終盤に収録するような楽曲とは勝手が違う。

 シングルを切るということは、電波に乗ったときに、ありとあらゆるシチュエーションで流れることを想定する必要がある。最新のヒットチャートにランクインさせるには、流行に乗り遅れるわけにはいかない。旬が過ぎた後も節目節目でリスナーにその存在を思い出してもらい、長く愛される曲にするためには、エヴァーグリーンな魅力も必要になってくる。

 シングル・カットした曲だと、その直前・直後にかかる曲というのは、最新のヒット曲から往年の名曲に至るまで、どれがくるかは分からない。邦楽・洋楽どちらもあり得るし、NHK紅白歌合戦の舞台なら、演歌の次に聴かれるかも知れない。もっと言うと、直前に流れるのは音楽だけとは限らない。ニュースや天気予報に続いて流れることだってある。楽曲がスタートする時点で、リスナーの注意がよそに逸れていることも多分に考えられるわけだ。オリジナル・アルバムに収録する楽曲は直前も直後も自分の持ち歌であるから、すでに注目は集めた状態でのスタートだ。シングル制作では、純粋に良い楽曲を作るのとは別なところにも気を遣う。

 強い印象のイントロでリスナーにこちらを向いてもらうことは重要だ。そこでTM NETWORKのシングルのイントロを改めて振り返ってみよう。名曲というのは、始まったその瞬間からリスナーを虜にするものなのだ。


TM NETWORK「Get Wild」

 まずは押しも押されぬ一番の代表曲からピックアップ。北条司原作アニメ「シティーハンター」のタイアップ曲である。楽曲の使われ方が印象的で、物語の結末からエンディング・テーマ曲へフェイド・インしながら移行する手法は、斬新に感じたものだ。主人公が依頼を遂行した後、空港で依頼人を見送るシーンに、この曲のイントロが覆いかぶさる。僕にはそんなイメージが強い。実際には毎度毎度、空港で話を締めているわけではないのだが、僕にとっては「Get Wild」と空港は結構密接に結びついている。

 この曲のイントロの魅力は、音色の良さ。サビの主旋律を奏でる、きらびやかな音色と、それを支える裏メロの柔らかな音色のコンビネーション。この最初の15秒間のパートは、元々あったものではなく、後から付け足されたという。おそらく、登場人物の最後のセリフと音楽が交錯するので、セリフが聴こえやすいようなサウンドに仕立てる必要があったのではないか。

 このイントロで使われている音色は、特に音程を上げ下げしなくても、単発でポンと鳴らしておくだけでも心地良い響きだ。シンセサイザーには数多くの音色が内蔵されている。機材を手に取ったら、それらを片っ端から試すだろうが、そのときに最初に鳴らした瞬間にピーンときた音色は、ぜひともイントロに使おう。設定を調節して、より自分の楽曲にフィットするようにブラッシュアップしていきたいところだ。

 フレーズを奏でなくとも、単に鳴らすだけで心地よい音を出す。このことが大事なのはシンセサイザーだけとは限らない。ピアノなら幼稚園児でもプロでも、ひとつ打鍵するだけなら同じ音が出せてしまうが、管楽器だと初心者と熟練者の差は如実に出てしまう。最初に発音したその瞬間から、ギャラリーにこちらを向いてもらえるような音が出せるように、日頃からロングトーンの練習を大事にしておきたいところ。目的がわからずに行うロングトーンの練習は退屈かも知れないが、この音一発で観客の注意を惹きつけられるかどうか?と意識しながら行う練習では、結果はかなり変わってくるだろう。

 イントロの魅力に迫ってみたのはいいが、題材が「Get Wild」ではディグったことにはなるまい。そこで、続けてこちらの楽曲のイントロにもご注目いただきたい。過去記事でもピックアップしたNine Universeの最新作「Sweet dreamin' night」だ。こちらもきらびやかな高音シンセサイザーの響きから始まって、インパクトのあるディストーション・ギターとバッキングのリズミカルな調べで一気に盛り上げる幕開け。どことなく「Get Wild」との共通点も感じられる。



TM NETWORK「COME ON EVERYBODY」

 続いてはこちら。音楽雑誌の誌面でH ZETT Mが先の「Get Wild」とともに推していた曲。Chicのナイル・ロジャースによるリアレンジ版もチャート・インするなど、プロ・ミュージシャンからも支持を受けている。

 僕もこのインパクト抜群のイントロは大好きだ。これだけ派手なイントロなら、否が応でも最初から注目してしまうよね。アタックの強いリフはもちろん最高だが、その前から鳴っている、徐々にボリュームが大きくなってくるS.Eが良い。危険が間近に迫っていることを警告するような圧迫感のある音だ。

 金属を叩いたときに出る破壊音を録音しておいて、それを逆回転再生し、音の消え際から鳴らし始めると、似たような感じを出せる。身の回りにあるいろいろな物を使って音を出し、逆回転再生してみよう。音楽制作においてイントロに使うのに格好の素材を見つけられるかも知れない。

 過去記事で、広島県呉市のPRに使われた「呉ー市ーGONNA呉ー市ー」をとりあげたが、こちらの曲・及び元になったTRFの「CRAZY GONNA CRAZY」のイントロでも、同様のテクニックが使われている。もっと深いところからディグるなら、1994年にリリースされたANISSのシングル「PRIDE」のイントロにもご注目いただきたい。




TM NETWORK「Love Train」

 最後はこちら。90年代にTMNと名乗っていた頃にリリースされたシングルで、好セールスを記録した。僕にとっては、メンバーの顔と名前に担当楽器も一致して、彼らについての知識もあり、発売を心待ちにしていた中でのヒットだった。ひと際思い入れの強いシングルだ。

 前作のハードロックに傾倒したサウンドから一転して、高音のシンセサイザーによる16ビートのシーケンス・フレーズを押し出した、TMらしさが復活。歌いだす前のイントロから、すっかり釘付けになったものだ。こちらは最初の第一音であるS.Eのインパクトが強烈。シンセサイザーは、実在する生楽器では不可能なほどの極端な音程・音色の急激な変化をつけることができる。この特色を活かして、魅力的なイントロを作ってみたいものだ。

 電子ピアノや音源モジュールを操作しているときに、アンサンブルの中で他の楽器と混ぜにくいような、特殊な音色を見つけて「こんな音いつ使うんだろう?」と思ったことはないだろうか。一見、調和を乱すようであっても、サウンドの特攻隊となって先陣を切り、よそ見をしているリスナーの注目を集めるという点では絶大な効果を発揮する音もある。使いどころを工夫してみよう。

 電子楽器の奏者ではなくとも、生楽器奏者であってもイントロはアピールできる絶好のポイントだ。アンサンブルの中で行うと、「ちょっと無茶かなあ」というような大胆な奏法でも、イントロならうまくハマることだってある。アイデアを振り絞ってみよう。

 先の「Get Wild」同様に、90年代のヒットチャートを知るリスナーに対しては、「Love Train」を掲げてディグりました!と声高に叫ぶことはできまい。そこで、やはり過去記事に登場したアーティストからオススメの楽曲も併記する。今年リリースされたLIPSELECTのアルバム「Dynamite Summer」から、「Fire Figher」。こちらも熟練のシンセサイザーの使い手が制作した楽曲。イントロから、音色に注目してお聴きいただきたい。



 以上、魅力的なイントロについてTM NETWORKのシングルを題材に語ってみた。ボーカリストにとっては、既存の伴奏を使用したり、サウンドメイクをバンドメンバーに一任したりで、直接介入する事柄ではないかも知れない。しかし、選曲の際に今回述べたことも意識することで、新規リスナーの獲得につながることもあり得る。バッキングサウンドにも興味を持って音楽鑑賞をしてみよう。

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小室哲哉の配信番組・TK FRIDAYに出演経験のある、藤田太郎がイントロクイズの開催をnoteで告知。