THE LAST ROCKSTARSライブ感想
1月27日にWOWOWで放送された、THE LAST ROCKSTARSの東京公演を観た。ライブ開催が告知された時点では、筆者の知る限り持ち歌は2曲。そのうち実際に音源を聴いたのは『THE LAST ROCKSTARS(Paris Mix)』1曲のみ。これでどうやって公演を行なうのだろう?そう思って当然だが、YOSHIKIにはV2の前例がある。セットリストこそまったく読めないが、長年継続的に活動しているバンドにはないスリルがある。
初めて聴く曲、盛りだくさん
蓋を開けてみれば、未発表曲が目白押しのライブとなった。音楽活動をしているのなら、知らない曲ばかりだと興味を持ってもらえるか不安に思うこともあるだろう。だが、THE LAST ROCKSTARSの強気のセットリストに注目して欲しい。スーパースターの集まりを引き合いに出しても自分とは比較にならない、と耳を塞ぐことはない。
長年特定のジャンルやアーティストを聴き続けているリスナーにとっては、ド定番のヒット曲ばかりのセットリストでは飽き飽きだ。それでは新鮮な驚きなど起こせやしない。地道に活動を続け、ファンにとって馴染みの曲がいくつかある状況までもってこれたら、それに加えて新曲をライブで初公開ということや、知られていない曲にスポットを当てることにもチャレンジする価値はある。むしろ、聴いたことのない楽曲で観客を沸かすことができれば、真の実力の証明にすらなる。
MCからにじみ出る、YOSHIKIの温かい人柄
V2のYOSHIKIから比べると、あの尖りに尖り上げた時代からは随分イメージが変わったものだ。X JAPANは怖そうな人・野蛮な連中という、昔抱いていた間違ったイメージはさすがに払拭できている。根は良い人というのは承知だ。そこから一歩踏み込んで、今回ひとつの公演を通して観て、この目でしかと確認したものがある。YOSHIKIの音楽にかけるひたむきな情熱と、ファン想いの優しく温かいハート。彼が熱い支持を受けるのも納得だ。
従来のファンからは、本家の活動が滞るのを快く思わない声も聞こえるが、新しい始まりが近づいてきているようすを見守っていくのも悪くないだろう。
メンバーとの仲が良いのも、節々に見てとれる。今年、近田春夫がラジオ番組『TOKYO M.A.A.D SPIN』にゲスト出演したときに「バンドの仲の良さは音になって現れる」と言っていたが、このライブを見た後だと本当だなと思う。
2人のギタリストの見せ場
MIYAVI・SUGIZOのギタリスト2人による掛け合いの場面も見どころだ。ギターがサッパリ弾けない筆者にとっても、鳥肌ものの凄い演奏だった。ギターキッズにとっては尚更心に響くだろう。個人技を炸裂させる場面でありつつも、お互いのコンビネーションも抜群。ロック・ギタリストは「オレがオレが!」という我の強い人種ばかりで、チームワークは苦手な印象を勝手に持っていた。しかし、この2人は個人技とチームワークの両方を兼ね備えた、ワンランク上のミュージシャンだ。ステージでの演奏を観て、これを実感した。
Twitterでの投稿に、MIYAVI本人が反応している。
初めて目の当たりにした、HYDEのアジテート
HYDEについては、ミュージック・ステーションでL’Arc〜en〜Cielの出演を何度も見かけている。それで分かったつもりになっていた。だが、このライブで初めて見る側面に興奮した。
歌唱スキルの高さは今更説明不要だろう。それに加えて、楽曲進行中での観客を煽る能力の高さがある。HYDEなら歌の実力だけで十分に観客を魅了できるのだが、そこにプラスアルファの盛り上がり要素を上乗せしている。TV出演ではこんなにハイテンションな様子は見られない。画面越しの鑑賞だけに留めずに、実際に会場に足を運んでみたいと思わせるパフォーマンスだ。
歌の練習はレコーディング音源を聴き込んでもできるが、観客のボルテージを上げる方法は、レコーディング音源からは学べない。歌を志しているのなら、生歌・生演奏に触れる機会を持ち、何が観客の涙腺を震わすのか、自らが観客となって体感してみるべきだ。
HYDEはMCで「ロック少年に戻ったようだ」と、THE LAST ROCKSTARSの豪華な顔ぶれの中で歌えるときめきを口にしていた。TV出演では見せなかった、曲の合間の笑みも新鮮に映った。
まさか、この曲をここでやるとは!?
数々の新曲はもちろん、お馴染みの楽曲も聴けた。『BORN TO BE FREE』から『HONEY』という、X JAPANとL’Arc〜en〜Cielのナンバーを立て続けに披露する流れは圧巻!『BORN TO BE FREE』を歌うHYDE、『HONEY』を叩くYOSHIKI、どちらの姿も強烈な印象だ。
さらに中島美嘉に提供した『GLAMOROUS SKY』という、予想の斜め上からの選曲まで飛び出した。HYDEのソロ公演でなら、まだ予想できる。しかし、この場にはYOSHIKIもSUGIZOもMIYAVIもいる。驚かされた。MIYAVIとYOSHIKIは中島美嘉とは面識がないかも知れないが、SUGIZOは年末年始に共通の音楽仲間の話題で、彼女と打ち解ける機会があったそうだ。そんな舞台裏を知っていたので、この曲は一層楽しめた。作曲者のHYDEはもちろん、中島美嘉と交流を持ったSUGIZOの方にも、自然と目が行く。
もしも中島美嘉本人が会場にいたら、どんな気持ちで観ていたのだろう。想像するとワクワクしてくる。ツアーのどこかで関係者席に通されたのかも知れない。もしそうなら後日談を聞きたいところだ。
YOSHIKI「俺たちに敵はいない」
最後にYOSHIKIが語っていた「俺たちに敵はいない」という言葉が印象深い。V2の頃のYOSHIKIなら、X JAPANを打ち負かすことのできるバンドなどいない、俺たちこそが最強だ!という、文字通りの意味だったろう。
だが今は違う。憎むべき敵などいない。みんな仲間だ。だから敵はいないという意味だ。腫れものに触るようなヒリヒリするイメージのYOSHIKIも魅力的なのだろうが、今のYOSHIKIにもすごく好感が持てる。この温かい心をずっと持ち続けていて欲しい。それに救われるファンは世界中にいるはずだ。
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