宇都宮隆がTOKYO FMの番組・坂本美雨のディアフレンズにゲスト出演
4月3日にTOKYO FMで放送された番組・「坂本美雨のディアフレンズ」に、宇都宮隆がゲスト出演した。昨年、TM NETWORKの3人で揃って出演したときは、坂本美雨も緊張のあまり、迎える側としてうまく立ち回れなかったと振り返った。
今回の放送は、まるで木根尚登を迎えているかのような…と言ってしまうとやや誇張があるが、笑いの絶えない和やかな雰囲気だったように思う。少なくとも、前回の3人勢揃いのときよりは、だいぶ司会者らしさを取り戻せていた。
坂本美雨が宇都宮隆に問いかけたのは、TM NETWORKのボーカリストとしてステージに立つ場合と、ソロ・シンガーの場合とでの違い。バンドやグルループに所属して活動していたミュージシャンが、新たに個人で活動を起こしてプロモーションを始めたら、必ず訊かれる質問だ。
宇都宮隆は、まずTM NETWORKの方から語り始めた。こちらでは、制作面は小室哲哉が一手に引き受けるので、自分は歌やパフォーマンスに専念できるという。
その次に、宇都宮隆の言葉では「いろんなことやってますけど」と言っていたが、これはBOYO-BOZOやU_WAVE・U Mixなど、ソロ・シンガーも含めて、人数に関わらず自分が起こしたプロジェクトを指すと思われる。こちらは一点集中というわけにはいかない。ライブの流れが良くないところを修正するなど、全体に気を配らなければならない。ボーカリストなのに、「なかなか歌にたどり着かない」と言っていた。これは、ソロ活動ならではの嬉しい悲鳴だろう。
小室哲哉の思い描いたイメージを観客の前で具現化する。これがTM NETWORKでの宇都宮隆の役割なのに対して、自分の思い描いたイメージをそのまま形にできるのがソロ活動ということだ。
その後、坂本美雨は今回のアーティスト写真を取り出して、(手の平を前に差し出している)野村義男が一番目立っていることに触れた。宇都宮隆は「基本はよっちゃんバンドだから」と返し、2人で談笑。ここはリスナーとしても微笑ましく聴いていられる場面だった。インタビューの内容を文字に起こして、紙面や画面で伝えることもできる。だが、これだと笑い声までは感じ取れない。これはラジオというメディアの良さだ。
番組内でオンエアした楽曲は、現在開催中のツアー「それゆけ歌酔曲!!ギア-レイワ5」でやっているジャンルにちなんで、『思秋期』と『優しい奇跡』。どちらも自らリード・ボーカルをとる楽曲だが、前者は自分名義のアルバム『milestone』の収録曲で、後者は野村義男のアルバム『440Hz WITH -LIFE OF JOY-』へ客演参加したものだ。
宇都宮隆はこう話す。歌謡曲は若い時から聴いてきたが、自分が音楽の道を辿り始めた瞬間から「敵」になった。TM NETWORKが売れ出してからは、特にそう。
もちろんこれは、自分たちのやっているものとは違うジャンルを目の敵にして、疎ましく思うということではない。自分たちが頑張るための発奮材料にして、こちらから良い音楽を届けないと!ということだ。
音楽活動が軌道に乗り、しばらく年数も経って自分も落ち着いてきてからは、歌謡曲も「やっぱり良いよな」と、思えるようになったみたいだ。昔と違って、ピリピリせずに歌謡曲と向き合えるようになった。これがひとつの変化だ。もしもミュージシャンとして鳴かず飛ばずのままだったら、いまだにずっと歌謡曲ともピリピリしたままでいなければならなかっただろう。
4月からは、コンサートツアー『それゆけ歌酔曲!!ギア-レイワ5』がスタートする宇都宮隆。日本の懐かしの歌謡曲を題材に、自らが聴いてきた洋楽のテイストを混ぜて表現する、マッシュアップが楽しめる。これが大きな見どころだ。
坂本美雨が資料を取り出して、過去のマッシュアップ例を読み上げた。
沢田研二『TOKIO』×ヴァン・ヘイレン『JUMP』
奥村チヨ『恋の奴隷』×ジンギスカン『ジンギスカン』
松原みき『真夜中のドア』×アバ『DANCING QUEEN』
この間、宇都宮隆はそのパブリック・イメージしからぬ、テンションの高いリアクションをしていた。坂本美雨の笑いもひときわ盛んなひとときだった。曲目を見ながら「ええ、嘘でしょ?こんなの合うわけない」という気持ちもあって、こうなったのかも知れない。
過去のツアーを実際に見た筆者からも言わせていただくと、パッと見で理解に苦しむ組み合わせの方が、実際に音で聴いたときの面白さが増すというもの。逆に、聴く前から相性が良さげな予感がする組み合わせは、思ったほど大きな驚きはない。だから、これでいいと思う。
ライブで披露する曲は、「たまたま耳に留まった曲で探していくんですか?」と坂本美雨が尋ねると、それよりも今までたくさんの洋楽を聴いてきているので、そこから引き出しが開いたものを出していくと、宇都宮隆は答えた。このツアーを観れば、宇都宮隆の音楽のルーツにも触れることができるだろう。まだ未体験のファンの方は、ぜひ注目していただきたい。
番組の最後で坂本美雨が宇都宮隆に「ソロとしてもTMとしても、いらっしゃって下さい、また。」と声をかけた。番組MCである前に、いちファンとしての心情も交えて出てきた言葉なのかも知れない。リスナー心理としては、小室哲哉と木根尚登を連れてきて、また番組に出演して欲しいというところ。これを代わりに言ってくれているような気がして、聴いていて嬉しかった。
坂本美雨が番組を締めるときの挨拶も、なんとなく気分が高揚しているように感じたのは気のせいか。宇都宮隆を目の前にして、私情を完全に抑えて仕事しろなんて言うつもりはサラサラないけど。全体を通して楽しく聴けたし、坂本美雨には今回のMCは成功だと思って欲しい。
宇都宮隆『思秋期』
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