名前にTokyoを冠したアーティスト

2020/03/01


※執筆当時とは情勢が変わり、現状にそぐわない文面もありますが、ひとまずそのまま公開しています。

 2020年はオリンピック・イヤー。世界中から東京に熱い視線が注がれる。今回は、アーティスト名に「Tokyo」を冠した3組の楽曲をピックアップした。
 …というのは後付けの設定で、2019年12月22日の当ブログ過去記事でも取り上げたミギヒダリアリサさんが過去に開設していたブログ「Griot」から再び着想を得ている。そちらに掲載されていたオススメ楽曲からTOKYO CRITTERSを抽出し、さらに僕の引き出しからも「コレだ!」と思う楽曲を併せて執筆してみた。

TOKYO CRITTERS「CRITTERS」

 シンガー3人にトラックメイカーを加えた4人組音楽ユニット。このトラックメイカー・Shingo.SはMINMIの楽曲クレジットに名前があったので記憶に残っていた。彼は加藤ミリヤのアルバム「MUSE」収録の「19 Memories REMIX」や、Beat Buddy Boiが2015年に発売した「JUICE BOX」収録の「DEPARTURES feat.ふくい舞」の制作にもタッチしており、意外なことに小室哲哉と接点がある。

 これはいいね!聴きごたえ抜群!お洒落なアレンジだ。大衆性にも気を遣っていて、「分かる奴だけ聴いてくれ!」っていうのとは違う。それでいて、コアな層にも「この程度じゃ手ぬるい」と言わせない、凝った音作り。こういうの両立させるのって、簡単じゃないんだよね。音楽だけにとどまらず、ダンスでもアートでも、どんなジャンルであっても何かを表現しようとしている人にとっては、制作意欲をかきたてられる一曲なのではないか。

 チャートで1位を獲得しているくらいだから、ある程度の知名度はあるはずだが、僕は今の今までノーマークだった。これはイカン。もうEPが5作も出ているというのに。もっと現在のシーンの動向にも聞き耳を立てておかないと。

 自分の選曲眼だけだと、どうしても限界がある。でも他者のプレイリストから拾ってくると、絶対に掘り起こせなかった場所からDigってこれるのが良いよね。元々はJazztronikの楽曲で踊るこの方の映像に先に興味を持って、いつの間にやらブログにも目を通すようになった。僕はダンス・ミュージック・フリークといっても踊る方はサッパリ。踊りに関しては専ら鑑賞する側の立場だが、実際に踊れる側のアンテナに引っかかる楽曲って、どんなのだろうと思ってブログを読んでいた。

 JazztronikとShingo.Sには直接の接点はないとは思う。Jazztronikの楽曲をShingo.SがRemixとかいうのは過去に例がないだろうが(僕が知らないだけかな?)、結果的にはJazztronik好きが興じてTOKYO CRITTERSを聴くようになったわけだ。これはストリーミングの時代ならではの面白さだと言える。



東京パフォーマンスドール「恋しさとせつなさと心強さと -Rearranged Ver.-」

 新たな世代に代替わりしてスタートした東京パフォーマンスドールが、先代メンバー・篠原涼子の大ヒット曲をニュー・アレンジでカバー。2017年にアルバム「WE ARE TPD」が複数形態で発売されたが、その形態によって収録されていたり、されなかったりしている。入手の際には収録曲をしっかり確認してからにしたい。

 ボーカル・スタイルはオリジナル歌手の篠原涼子よりも押しが強くて肉迫してくる感じなのが特徴。振りがしっかりつくことで、視覚に訴える要素が強くなって生まれ変わった。人数の多さを活かしたフォーメーション・ダンスで魅せる。このような立体感を出す動きは、カメラアングルをコロコロ変えられると視聴者には十分に伝わりきらない面もある。だがライブでなら、映像だけでは感じ取れない要素も楽しめそうだ。

 多人数ダンス・ユニットの映像に興味を持ったなら、映像鑑賞だけにとどまらせておくのはもったいない。機会を見つけて、ぜひ生のパフォーマンスに触れ、空間的・立体的にダンスを堪能していただきたいものだ。そうすれば、後々映像を観るときでも、「生で見たらこんな感じかな」というイメージを働かせながら、違った味わい方もできるようになる。これでますますダンス・ミュージックが楽しくなるだろう。



TOKYO DISCOTHEQUE ORCHESTRA「正しいディスコ」

 Watusi、堀越雄輔、松岡"matzz"高廣の3名が、それぞれが持つ活動基盤とは別に立ち上げた集合体がTOKYO DISCOTHEQUE ORCHESTRA。ベーシストのWatusiについては、当ブログ2019年12月22日公開の過去記事から、中島美嘉の「LIFE」の記述の際にCOLDFEETとして触れた。

 アルバムには錚々たるシンガーが参加アーティストとして名前を連ねているが、その中でもSOULHEADのYOSHIKAの存在はひときわアツイ!COLDFEETと、quasimodeの松岡"matzz”高廣の共演は必然性があると思う。しかし彼らとYOSHIKAは住むフィールドが同じではない、と僕は勝手に解釈していた。なのでYOSHIKAがこの輪の中に入ってくれたことは、涙がチョチョ切れる程嬉しいね。

 さて、MVの方はSILVAが歌う「正しいディスコ」の方を掲載してみた。大所帯の東京パフォーマンスドールとはうって変わって、出演ダンサー独りで演じ切るスタイルだ。締めのフレーズ「正しいディスコ…ダーンス!」で、指を立てて手を挙げる振りにもっていくまでに、どう繋げるかこねくり回して試行錯誤したんじゃないかな。

 多人数のときとは違って、フォーメーションを気にする必要はない。カメラワークは振り付けやポージングが最も映えるアングルを常に狙って、積極的に変えていく方がいいだろう。それこそ1コーラス目と2コーラス目でもアングルを別にして映像に変化を出すとか。

 一人でやり通すのは実力がないとなかなかできないことだ。でも、うまくいったら手柄は全部自分のものというのがオイシイ。それに振付を作る過程で、意見が分かれてケンカになることもない。制約はあるが、悪いことばかりではないね。

 このほかにもMONDO GROSSO「ラビリンス」や2019年12月15日の過去記事でも取りあげた米津玄師「LOSER」のMVは、一人で踊りきっているタイプに入る。ソロ・シンガーという用語は存在するけど、ソロ・ダンサーという言い回しはあるのかな。



 アーティスト名や楽曲タイトルに付くfeat.○○の部分に、シンガーやラッパー、トラックメイカーといったミュージシャンの名前がついていれば、歌の持ち主は知らなくても「このミュージシャンが絡んでいるなら聴いてみようか」という気にもなる。

 その延長線上で、このダンサーが出演しているのなら、知らないアーティストだけど「このMVを観てみようか」という風潮は起きるようになるだろうか。もしも将来的にfeat.に続く部分にダンサーの名前が冠せられるのが当たり前に行われるようになってくると、ダンスミュージック界もますます盛り上がるだろう。

 アーティスト名ではなく、楽曲タイトルにつく方だと、イチオシは何といっても渡辺美里の「Tokyo」だ。他にもピチカート・ファイヴ「東京は夜の七時」などがあるね。最近の作品だと、昨年末12月13日リリースのRAM RIDER「東京論」は、音楽だけではなくMVの出来栄えも含めて大変面白い仕上がりになっている。さあ、2020年は東京でアツく燃え上がろう!