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カバーで楽しむ、モンスターファーム主題歌

 今回は1999年から2000年にTBSで放映された、TVアニメ「モンスターファーム」のテーマ曲の歌ってみた動画を鑑賞していて、思い浮かんだことを書き綴っていきたい。


Re:place「Close to your heart」

 愛内里菜のシングルのカバー。この動画を初めて観たときに一番驚いたのが歌唱力の高さだった。これを観る前にもRe:placeの過去作はたくさん観ていて、どんな歌声なのかは十分承知の上で鑑賞したのだが、いやはや本当に凄い!開いた口がふさがらなかったな。Re:placeの動画を初めて観るという方は、僕の何倍も驚くだろう。オリジナル歌手・愛内里菜本人のCDを聴いた直後に鑑賞したとしても、まったく遜色ない!と思った。

 と言っても、僕は愛内里菜のリリース作品を買ったことがない。ヒットチャートや音楽番組の出演を通して耳にしたことはある程度だ。彼女のリリース作品をコンプリートしているような生粋のファンにはどう映るのか分からないが。少し後に愛内里菜(当時のアーティストネームがR、現・愛内里菜)本人のYouTubeチャンネルでこの曲のセルフカバーが公開されたので、実際に2作続けて聴いてみたが、やはりガッカリさせないボーカリスト・Purinの歌唱力は本物だ。サビの音程が高くなる「この胸」のところなんかは、愛内里菜本人以上に正確にピッチが当たっているんじゃないか?と思えるぐらいだ。

 Re:placeの売りは独自のアレンジができることで、オリジナルを何度も聴いてしまっているリスナーにも真新しい感覚で楽しめるカバーを出している。今回は僕が愛内里菜のオリジナルに精通しているわけではないので、変わりっぷりに驚くというのではなく、ボーカルも伴奏も共に、シンプルにこのカバー動画のクオリティーの高さに感動した。後追いでオリジナル・バージョンもじっくり聴いてみたのだが、愛内里菜版はシンセサイザーとギターが程よく混ざり、盛り上がる部分と音数が減る部分の落差が激しい。かなりメリハリが効いていて、いかにもシングル・カットしてチャート・インを狙いに行くような作りだ。

 Re:place版はメリハリよりも全体を通してビート感を止めないような作り。音使いではシンセサイザーの配分を極端に多くとっている。ギタリストに刺さるかどうかは分からないが、この手のサウンドが好きなリスナーには深く刺さるに違いない。例えば、僕がB'zの曲を聴くときでも「Real Thing Shakes」は、ギター弾ける人にはたまらなく良いんだろうけど、あの曲は鍵盤がまったく入ってないんだよね。ダメな曲だとは思わないけど、それよりも僕は初期のミニ・アルバムの英語バージョンのようなアレンジの方をよく聴く。使用楽器の好みって、やっぱあるよね。

 彼らのカバーは本当に聴きごたえがあるので、愛内里菜のファンにも届くといいなと思う。僕が彼らのglobeカバーを聴いたときのように、聴き慣れたはずの曲なのに、どこか新鮮に響く!という経験を、愛内里菜のファンにもしていただきたい。

TAKA「Be Truth」

 TM NETWORKのボーカリスト・宇都宮隆のソロ活動作品をカバー。シングル「FLUSH」のカップリング曲。後にベスト盤「TAKASHI UTSUNOMIYA THE BEST 2000-2004」にも収録された。オリジナル・アルバム「WHITE ROOM」にもアニメで使われたものとは別バージョンで、鍵盤のみのしっとりしたアレンジの「Be Truth」が収録されている。

 こちらのカバーは声質の良さが一番に耳につく。オリジナル歌手のイメージを崩さずに気持ちよく聴けるという点では、先のRe:placeと相通じるものがある。同じ宇都宮隆の曲を歌って楽しむ者としては、心底羨ましい。僕もオリジナルに寄せに行く歌い方をよくやるんだけど、なかなかこんな風にはならないな。

 僕はどちらかと言うとアッパー・チューンを好んで聴く方だが、この曲はバラードであっても僕の心を捉えて放さない。ライブで生歌に触れる機会も何度もあった。最初は2000年のアルバム「WHITE ROOM」リリース・ツアー。Zepp Fukuokaがまだ福岡PayPayドームのすぐ側にあった頃だ。新作アルバムを1曲目から曲順どおりに全曲キッチリやりきる、それにMCも挟まないというコンセプチュアルなツアーだった。9曲聴いた時点で次はBe Truthがくることは察しがついたが、ギターの葛城哲哉・ドラムの山田わたるもステージ袖にはけてしまって、しっとりアルバム・バージョンが始まるのではなく、全員でやってくれた。僕としてはこちらの方で良かった。アルバム・バージョンを否定はしないが、この曲については先行発売された原曲バージョンを知った上で、その対比を楽しむものだと思う。アルバム・バージョン単体だけだとやはりインパクトが不十分。これから後追いでこの曲を聴いてみようかという方には、順を追って鑑賞することを強くオススメしたい。

 このライブでは、Be Truthのアウトロで演奏中なのに幕が降りていく演出が印象深い。幕といっても布製ではなくシャッターみたいな見た目だった。元々の曲の良さも相まって、あのときは涙腺ヤバかった。

 新作アルバムを全曲披露して一区切りすると、次は「長い長いアンコール」と宇都宮隆がMCで言っていたように、それまでのリリース作品から選りすぐりの曲を歌う第二部に突入。最大のサプライズは「次は友達の曲を歌っちゃおうかな〜」というMCから始まった、FENCE OF DEFENCEの「SARA」だった。メンバーの山田わたるがこのツアーのサポート・ミュージシャンに入っているゆえの選曲。シティーハンターのファンには「Get Wild」同様に馴染みの深い曲だが、まさか宇都宮隆のボーカルで「SARA」が聴けるとは!あのときは本当に夢見心地だった。

 TV番組のタイアップがついた持ち歌のあるアーティストは、自分が担当していない方のカバーを出してみると面白い。自分がオープニング曲を担当したのなら、エンディングの方をカバーするのだ。また、人気シリーズなどでテーマ曲が途中で差し変わった場合、自分がシーズン前半を担当したのなら、シーズン後半の方をカバーしてみたり。番組のファンからすると、かなり興味深い試みだろう。例えばスラムダンクだったら、大黒摩季がライブを行うときにBAADのメンバーをサポート・ミュージシャンに起用しておいて(全員揃えるのは大変だから、誰か1人だけでもいい)、「君が好きだと叫びたい」を歌うのだ。そこから自身の持ち歌「あなただけ見つめてる」に繋いでいけば、アツイ展開になること間違いなし!レーベル・メイト同士だし、余計な邪魔も入らなさそうだ。背番号096のユニホームも着用しとけば鬼に金棒。

 Be Truthはリリース直後に歌ったきり、その後お目にかかることもなくなったりはせず、再演率も高い。大事にされてる楽曲だ。直近では2018年のツアー「Thanatos」で披露。何度となく宇都宮隆のライブへは足を運んだが、この曲がセットリストに組み込まれているたびに「ああ、来てよかったな」とより強く思う。

 カラオケで歌うときには、サビでフォールを要所要所に挟みこんで表情をつけると良さげだなと思う。例えば「ゆずれない答え」の「ず」や「な」の所とか。でも、そこに固執し過ぎると全体的なピッチが乱れるんだよね。簡単にはいかないぶん、やりきったときの達成感は大きい。

 僕自身が歌ったテイクも、この際掲載させていただく。曲は宇都宮隆「FLUSH」。先の2曲同様、モンスターファームのテーマ曲だ。いつ頃までアップし続けるかは決めていないが、少なくとも一ヶ月間は下げないでおこうと思う。