【ロマン・ポランスキー(1933-)】の「1960~70年代の監督作品」のVHSコレクション
映画好きの作家・赤川次郎(1948-)氏の『三毛猫ホームズ映画館』(1983年)に、当時の新作『テス』(79)に絡めて旧作7本を分析した、1980年時点での〈ロマン・ポランスキー論〉?が収録されているので引用させていただく。
《~~一筋縄ではいかない、とはよくいう言葉ですが、ポランスキーの映画ほど、それがぴったりと当てはまる作品も少ないでしょう。 もっとも、それは例えばヒッチコックの映画が、観客をみごとに騙してみせる、とか、アラン・レネの映画が至って観念的である、といった意味での「一筋縄ではいかない」というのとは全く異なっている。 ポランスキーは観客を引っかけて喜んだりはしません。観客にサービスするとか、楽しませようというつもりで映画を作ってはいない。しかし決して難解でなく、見る者を引き込んでしまうのは、ポランスキーが根っからの映像人だからでしょう。 ポランスキーの映画は面白い。それはもう、アンダーラインつきで保証します。しかし、見終って「ああ面白かった」と気分爽快に映画館を出ることはできません。 映画は(何も映画と限ってはいませんが)ハッピーエンドか、でなければ悲劇で終るものだと素朴に考えている人が、ポランスキーの映画を見たら、きっと当惑してしまうことでしょう。「こんな終り方ってあるか!」と文句を言うかもしれない。 映画にカタルシスを求める客へ、ポランスキーはいつも冷水を浴びせます。第一作『水の中のナイフ』からしてそうでした。~~こうして見て来ると、ポランスキーは、自分の映画を、常にハッピーエンドとも悲劇ともつかぬ、中途半端な形で終らせていることが分ります。 価値観の逆転、モラルの崩壊……。ポランスキーの映画が、例えどの時代の物語であっても常に〈現代〉を感じさせるのは、確固たる拠り所を持たないニヒリズムの影が漂うそのラスト・シーンゆえだと言ってもいいのではないかと思います。》
↓単行本の目次。文庫本は『三毛猫ホームズの映画館』(1989年/角川文庫)。
「1960~70年代」VHSジャケ写コレクション
水の中のナイフ ※「1960~70年代の長編監督作品」の古い順
村上春樹氏の評価⇒ 『映画をめぐる冒険』(1985年/講談社)P.80-81より。
《アンファン・テリブル、恐るべき少年ロマン・ポランスキーの記念すべきデビュー作。まさに才気煥発のひとこと。ポーランドでは評価されなかったが、西欧で公開されて評判を呼んだ。ポランスキーの映画文法はこのとき既に確立されており、彼のその後の作品には必ずどこかしら『水の中のナイフ』から派生した部分が見受けられる。べつになんでもない風景がカメラ・フレームの中である種の異常性を帯び、その中での人間の異常性を喚起させる。ポランスキーを語るためのキー・ポイントとなる一作である。》
村上氏は同書で他に『吸血鬼』『チャイナタウン』『テス』の短評も寄稿。
反撥(はんぱつ)
袋小路(ふくろこうじ)
吸血鬼 ※「シリアスなホラー」ではなく脱力系の「コメディ・ホラー」
ローズマリーの赤ちゃん
マクベス
欲望の館
チャイナタウン
↓はレーザーディスク(LD)のジャケット写真
テナント 恐怖を借りた男
テス
ついでに、私の好きな『死と処女(おとめ)』(1994)のVHSのジャケット写真も
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