令和の【『ダーティハリー』論争】で思い出すのは昭和の【『ゴルゴ13』論争】
『ゴルゴ13』論争は、たまたま入った、わりと大きめの新刊書店(とっくの昔に閉店)で平積みになっていた『バカにつける薬』(1988年/双葉社)という本で知った。著者は「呉 智英」という初めて聞いた読み方もわからない人。挑発的なタイトルと帯文を目にし、生意気にも自分を「利口」だと思っていた若い頃の自分は買ってすぐに読み始めたが、読んでいる間じゅう「ずっと怒られてる」感覚だった。それと、「この著者は、なんでこんなにあらゆる事象に怒りまくってるんだ?」という疑問も芽生えた。これがきっかけで、過去の著書は古本で、これ以降のものは新刊で買い、合計で7~8冊読みましたが、個人的には本書が著者の代表作だと思います。色んな雑誌での連載や単発の寄稿を集めた本なので、統一感?は乏しいが、論旨は一貫していると思います。多分、著者の中で一番売れた著作が、本書ではないでしょうか。
で、『ゴルゴ13』論争ですが、詳細は憶えていませんが、漫画評論を「評論活動」の柱の一つにしている著者が、有名な劇画『ゴルゴ13』のある話について「ご都合主義だ」というような批判を雑誌でしたところ、『ゴルゴ13』を愛読している複数の一般読者が雑誌の投稿欄で著者に反論し、呉氏がさらに再反論し、更に愛読者が…という、興味の無い人(私もその一人)にとってはどうでもいいと感じる些末的な論争のことです。これを読み「こえー(怖い)な」と思ったのは、呉氏が雑誌掲載時に載っていた一般人の名前と住所をそのまま単行本に掲載していたところ。「民主主義における〈大衆という聖域〉に穴を開ける」とかなんとかの理由だったと思う。ぜひ読んでほしい。
論争に勝者と敗者がいるなら、『ゴルゴ13』論争でどっちが勝ったか不明。
単行本(1988年)の書影。当時ベストセラー?になり、この本のおかげなのか、『朝まで生テレビ』には放送中に合流する「飛び入りゲスト」として出演。
単行本の「裏表紙」側の帯文。おそろしいことが書いてある……。
↓こちらが1996年に文庫化された時の挑発的・戦闘的な惹句(じゃっく)
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