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楳図かずお『猫面(ねこめん)』は9歳で出会った最大の〈トラウマ〉漫画

※※※ネコ好きな方、ネコを飼われている方には、オススメしません※※※


貸本出版社から1963年にだされた単行本の完全復刻です。著者自身が「残酷表現を極めた」といういわく付きの作品で、凄まじい描写がこれでもかと展開されています。物語は、猫嫌いの城主の一子・秀信が猫そっくりに生まれたことから始まり、心が醜くゆがんで成長し、残虐な仕打ちを繰り返してゆきます。この作品で 著者は、人の心に潜む残酷さ、非情を描いたといわれています。

猫面 _ 楳図かずお – 小学館コミック

残酷表現の極北へ挑んだ、貸本期最大の問題作!

完全復刻版 猫面 - 株式会社小学館クリエイティブ




===私の評価===


リアルタイムではなく、最初に「貸本として出版された1963年(昭和38年)から10数年以上あとに、近所の2席だけの小さな床屋(理髪店)で順番を待つ場所のミニ本棚に並んでいた本で読んだ。小学三年生(9歳)の時で、どのような体裁の本だったかは記憶に無いが、「貸本上がり」の単行本だったかもしれない。楳図かずおの漫画は、多分ギャグ漫画の『まことちゃん』ぐらいは読んでいて作者を知っていたのだろう。初めて見る残忍さトラウマ確定


20代後半に古本(『妄想の花園』収録)で買って再読した時のおぼろげな記憶による「あらすじ」は、時代劇の舞台になるような大昔に、猫を殺しまくる「異常な猫嫌いの城主がおり、ようやく生まれたその跡継ぎの息子は猫にソックリな顔(片目は潰れ、口は三つ口(みつくち))だったが、父親と違い猫を溺愛し、猫からもなつかれる。成長し後を継いだ「猫面」の城主は、美しい町娘に一目惚れして求婚するが、頑なに拒まれる。娘には、イケメンで勇敢な武士の婚約者がいた……という話だったと思う。人間の「(ごう)の深さ」を感じさせる恐ろしい話であり、ハッピーエンドなわけはないが「オチ(最後の着地)」がとても見事で、私が読んでいる楳図かずおの長編では、『漂流教室』『洗礼』『おろち』『まことちゃん』に並ぶ◎傑作だと思っています。


1963年に貸本で出した時代劇「猫面」(佐藤プロ)は、僕にとって重要な作品です。僕の中で「恐怖マンガ」の手法がはっきり確立した作品なんです。

読売新聞連載企画[時代の証言者]の「楳図かずお」の第6回『外見と内面 変化の連鎖』より。


本作は「貸本漫画」だったから出版できたんだろうというのが、当時の環境を知らない私の推測。1963年(昭和38年)当時は、まだ青年漫画誌も無かったようだし、当然、こんなに残虐な漫画は少年誌では掲載不可能だったろう

昭和三十年(※1955年)ごろから悪書追放運動が起きたのです。この時に、我々漫画家は自主規制して大人しい内容にしたため、漫画出版がガタッと落ち込みました。ところが、そのスキを狙って、少し読者層の高い漫画をミニコミ誌のような形式(貸本劇画?)で出す出版社が現われた。その一つが大阪の日の丸文庫で、ここの本が、当時の貸本屋の代表格であるネオ書房を通じてブルーカラー(※製造業などの肉体労働従事者)層にものすごく読まれたんです。~~彼らに受け入れられたのは、幼稚な子供漫画でもなく、大人が読むような内容でもなく、日活のアクション映画に似たものか、残酷さや暴力を売り物にした講談ネタだったのです

手塚治虫と呉 智英の1988年の対談」より、手塚の発言


昭和39年に週刊漫画ゴラクが発売され、昭和40年代初めには漫画サニーなどの青年向けのエロと危険と暴力の匂いのする雑誌があり、昭和42年の週刊漫画アクション誌でルパン三世などがヒットして市場と分野が成長した。》


掲載可能?な「劇画誌」も、まだ創刊される前⇒ 《次々と劇画雑誌が創刊される。1966年(昭和41年)創刊の「コミックmagazine」(芳文社)を皮切りに、1967年(昭和42年)創刊の「週刊漫画アクション」(双葉社)と「ヤングコミック」(少年画報社)、1968年(昭和43年)創刊の「ビッグコミック」(小学館)、「プレイコミック」(秋田書店)などが挙げられる。》


日本漫画史の傑作
の一つであろう白土三平忍者武芸帳 影丸伝』も貸本発


※※※グロ画像注意!※※※ ↓のような絵が頻出するエゲツない漫画です

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非モテをこじらせた男〉が絶大な権力を手にするとどうなるか……という地獄絵図。外国の俳優ならピーター・ローレ(1904-1964)が適任だと思う。

右側の男(城主)が「業(ごう)が深すぎる」本作の主人公↑。
https://www.yomiuri.co.jp/serial/jidai/20230319-OYT8T50025/


↓こんな無茶な場面が頻出する漫画、絶対に小学三年生には向いていない

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↓この「水責め」の場面なんか、中学生以上なら笑える?かもしれないが……。

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===単行本===


電子書籍を除き「新刊」として流通しているのは文庫本『こわい本 11 猫』(2022年)だけか。2000年代には複数作品を集めた『妄想の花園』(2001年)や完全復刻版の『猫面』(2008年)がありました。私は前者を古本で購入した。


一番最初に出版された1963年(昭和38年)の貸本版『猫面』(佐藤プロ)の表紙。

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佐藤プロは劇画家の佐藤まさあき氏の会社⁉⇒ 《1962年に桜井昌一と佐藤プロダクションを設立。漫画単行本や劇画短編誌の出版活動を行う。》


===関連映画===


人から忌み嫌われる外見」と「人格」に関連性は見出せるのか?の映画


◆『ジョニー・ハンサム』(1989/米)     ※個人的には▼凡作でした

「実生活で整形前のミッキー・ローク」が演じている役は「整形手術後の顔」です(ややこしい)。
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◆『ファンハウス 惨劇の館』(1981/米)       ※胸糞なホラー映画

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◆『エレファント・マン』(1980/米)    ※小学生の時に映画館で観た

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https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/m1157285679


◆『悪魔の植物人間』(1974/英)     ※内容は全く記憶にありません

この〈胡散臭い〉VHSのジャケ写が一番好きだ
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