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楳図かずお『わたしは真悟』とアメリカ映画『狩人の夜』に感じる〈暗黒童話〉

わたしは真悟(しんご)』(連載期間:1982-1986年)は楳図の最高傑作との評価もあるが、雑誌連載時には知らず(私は基本的にジャンプ系列の漫画誌しか買わなかった)、古本屋で買った単行本(B6判・全10巻)で後追いで読みました。美しく感動的な話で胸を打たれた。私の評価は◯秀作。その後にまんだらけに売却したので手元にはありません。アメリカの名優チャールズ・ロートンの「唯一の監督作」であり、非常に評価の高いカルトな作品として、映画ガイド本では何度か目にしていた『狩人(かりゅうど)の夜』(1955/米)も大昔にビデオ鑑賞。白黒の映像は美しいが、個人的には「肉でも魚でもない」といった印象で、評価は▼凡作となる。両方とも細部は忘れてしまってるけど、私の記憶の中では大別するとどちらも黙示録的?な暗黒童話〉である。


〈子供の時間が終わる〉『わたしは真悟』は、「軽いセンチメンタリズム」が嫌いらしい楳図流の「重たいスーパー・センチメンタリズム」と言える。
短編漫画の『Rojin』(1985年)と、私的には楳図の最高傑作の『漂流教室』も含めて〈子供の時間が終わる〉話か。『狩人の夜』は1990年に日本初公開。




楳図かずおインタビュー。初出誌は『文學界』(文藝春秋)の2022年4月号。

――楳図さんは「子供」、「少年・少女」を描き続けてらっしゃいますが、『わたしは真悟』を含む後期の作品は、青年誌で発表されているんですよね。「だからこそ子供を描くんだ」と主張され、子供がテーマの作品を描き継いでいらっしゃった。一方で、私が『わたしは真悟』を最初に読んだのは18歳ぐらいなんですが、あの作品はある程度年を重ねないと真のすごさが分からないものだとも思うんです。楳図さん自身は、子供をテーマにした作品を同世代の子供に読んでほしいという思いが強いのか、むしろ大人になってしまった人間たちにもあるはずの子供性を狙って描かれているのか、どちらなんでしょうか。

楳図 子供が読んで内容を理解してもらうというのはちょっと難しいと思うんですね。昔子供だった大人の人たちに、「ああ、私たちもあんなようなことはあったねえ」というふうな見方をしていただいたほうが、素直に作品を見てもらえるかなと思うんです。 どうして青年誌でも子供をいっぱい描いたのかというと、子供が出てくる話のほうが、僕にとっては気持ちがいいんですね。子供って大人よりは動きは活発だけれども、ヘンな常識とか権力とかがない。どんなにバカバカしいことが起きても、「いや、ほんとだねえ」とか、「そんなのあるの?」とかって乗ってくれる。大人を描いていると、その登場人物自体がもう僕に向かって「私にあんまりちょっかい出さないで」と言っているような感じに見えてくるんですよ。「好き勝手言わないでください」とか、そんなふうに見えてくるんですね。 現実では起こらなそうな、飛躍した話を描くには子供が出てくるほうがいい。そういう意味で、僕のお話作りの基本は、おとぎばなしとか昔話とか、そこなんだろうなぁと思うんです。

https://bunshun.jp/articles/-/74669?page=2


↓チャールズ・ロートン監督『狩人の夜』の解説(映画サイトallcinema)。

 ある死刑囚から、銀行を襲って手に入れた1万ドルを子供たちに託した事を聴いたハリーは、出所するや福音伝道師を装って未亡人と子供たちの住む町へ向かう。そして言葉巧みに未亡人に取り入り、結婚してしまう。彼の凶暴な正体を知り、母までも殺された幼い兄妹はふたりだけで逃亡を企てる。小舟に乗って川を下る兄妹はやがて身寄りのない子供たちの面倒を見ているクーパー夫人の家にたどり着くが、そこにもハリーは迫っていた……。名優チャールズ・ロートンが生涯ただ一度監督をてがけたダークなムード漂う作品その雰囲気は、まさに“悪夢の童話”と呼ぶにふさわしい。どこかのんびりした風景と、その裏に潜む恐怖--子供たちの視点で描かれた、身近な“恐怖”は、意表を突く画面造りと、それを支える白黒画面の美しさでいっそうの効果を上げている。一度観たら忘れられない、そんな原初的なイメージに溢れている傑作だ。

https://www.allcinema.net/cinema/4843


なんか強引に?両作を関連付けしたみたいですが、再見して確認などする気も無く「解像度が低い」私の頭では両方とも「同じジャンル」に入ります。
暗黒童話の「暗黒」は英語(わからない)だと「ダーク」か「ノワール」か?

常人を装うオトナの殺人鬼がコドモに近付く映画」だと、ヒッチコックの『疑惑の影』(1943/米)が、有名ですが、なかなか面白かった記憶がある。


◆『わたしは真悟』(1982-1986年)の関連情報



「奇蹟は 誰にでも 一度おきる だが おきたことには 誰も気がつかない」

https://order.mandarake.co.jp/order/detailPage/item?itemCode=1071467253


↓本作では、この哀愁を帯びた「謎のナレーション」が極めて効果的です。

「謎のナレーター」の正体は、途中で判明します。
https://order.mandarake.co.jp/order/detailPage/item?itemCode=1041172170


「My First WIDE」版の『わたしは真悟』第1巻での「登場人物紹介」ページ

https://www.amazon.co.jp/dp/4091621732


主人公の「近藤 悟(さとる)」と「山本真鈴(まりん)」

https://natalie.mu/comic/news/216005
https://natalie.mu/comic/news/216005


多くの人が、楳図の、あるいは日本マンガ史上の最高傑作と位置付ける、世界に誇る超絶的な作品です。国宝とかノーベル賞とか、そういうレベルの作品だと言いたい。この作品を語るには「子ども」というテーマがまずは重要でしょう。

↓からの引用


1回目しか読んでないし、やや難解で長文ですが、詳しい方の追悼ブログ。


私が読んだ最初の単行本(B6判/全10巻)

https://order.mandarake.co.jp/order/detailPage/item?itemCode=1266405555
無よりはじまる言葉ありき空の階段光ふりてめざめの子見るは知る三角我は地球奇跡起こりてそして愛が
https://order.mandarake.co.jp/order/detailPage/item?itemCode=1265507372


◆『狩人の夜』(1955/米)の関連情報



クライテリオンのサイトでの「解説」を機械翻訳で日本語(一部を太字)に。

「ナイト・オブ・ザ・ハンター」は、信じられないことに、偉大な俳優チャールズ・ロートンが監督した唯一の映画であり、まさに独立した傑作です。グリム童話のような性質を持つホラー映画で、崇高で不吉なロバート・ミッチャムがハリー・パウエル(刺青の指の関節の男)という巡回説教者を演じ、シェリー・ウィンターズ演じる脆弱な未亡人と結婚する極悪非道な動機が、彼女の怯えた幼い子供たちによって明らかにされます。不気味な美しさと卑劣なユーモアのセンスのイメージに彩られたこの優美で表現主義的なアメリカの古典は、女優のリリアン・ギッシュと作家のジェームズ・エイジーの貢献もフィーチャーされており、善と悪の戦いを映画で最も風変わりに表現しています。

https://www.criterion.com/films/27525-the-night-of-the-hunter


わたしは真悟』にも白人青年が「まりん」に近寄る↓似た場面なかった

https://www.criterion.com/films/27525-the-night-of-the-hunter


VHSビデオのジャケット写真

https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/c781901139
https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/c781901139

トリュフォーらが絶賛し、欧米で近年とみに評価の高まっている幻の傑作。名優チャールズ・ロートンの唯一の監督作品であり、日本でも完成から35年の歳月を経て初めて公開された伝説的なカルト・ムービーの名作が遂にビデオ化! ロバート・ミッチャムの悪意に満ちた身も凍る演技や名手スタンリー・コルテスの魔術的映像美、そしてグリフィスの『散り行く花』のイメージから、大女優リリアン・ギッシュをキャスティングするなどのハイブリッドな演出。商業主義のハリウッドからは無視された、光や構図へのこだわりとLOVE & HATEの暗示的な寓話が今だからこそ胸に迫る! 処刑された男が家族に大金を残していたことを知った服役中の伝道師ハリー(R・ミッチャム)は、釈放されるとその未亡人に近づき彼女を殺害。大金が詰め込まれた人形を持って逃げる子供達を執拗に追う。そしてクーパー夫人(L・ギッシュ)が子供達を匿(かくま)っていることを突きとめるが………。                                                                                                                


LDのジャケット写真

https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/d1160191277
https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/d1160191277


アイキャッチは『狩人の夜原作(デイヴィス・グラッブ著)の原著版表紙。

「凍りついた注意を引くスリラー。それはまた、美しさと力、そして驚くべき言葉の魔法の作品でもあります。」—ニューヨークタイムズ


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