宮谷一彦『人魚伝説』 〈後追い〉で読んだ1984年の実写映画の「原作漫画」
「社会派ノワール(暗黒)」「ポリティカル・スリラー」劇画の描き手として
宮谷一彦(みやや・かずひこ/1945-2022)氏は〈超一流〉だと私は思っていますが、この方面での氏の評価を聞いたことがない。まあ、私には教養が無いので、宮谷氏の「衒学的なハッタリ」に弱いだけなのかもしれませんが。
世代的にずっと下なので、「後追いで読んだ漫画家(というより劇画家の方が相応しい)」なのですが、当時の漫画家志望の読者に少なからぬ影響を与えており、大友克洋(1954-)氏やひろき真冬(1955-)氏は影響を公言している。
『人魚伝説』の一部。この「濃厚な絵」が暗黒なテーマにぴったりハマる。
「ブロンズ社」版の『人魚伝説』上巻の目次
最初に単行本化された「ブロンズ社」版〈上巻〉の書影。〈上下〉全2巻。
「社会派ノワール劇画」「ポリティカル・スリラー劇画」と私が仮に呼ぶジャンル?の短編漫画は、手塚治虫にも『悪魔の開幕』(1973年)、『鉄の旋律』(1974~75年)等がある。当時の流行でしょうか。手塚の作品はもちろん面白いですし、関川夏央が原作の劇画(作画:松森正/谷口ジロー)にも似た傾向の短篇作品はありますが、私はこのジャンル?では宮谷が突出していると思う。散弾銃?で吹き飛ぶ顔面とか人体破壊の描写には、追随を許さぬ迫力があり、更に他とは違うのが、宮谷作品には狙っていない?ユーモアがある点。
「カッコ良さ」と「バロック(過剰さ/馬鹿)」の同居に私は魅力を感じる。
『人魚伝説』は、個人的には「まあまあ」。傑作だと思う作品は他にある。
実写映画化を契機?に出版された「竹書房」版の書影。こちらも上下全2巻。
◆実写映画『人魚伝説』(1984)のVHSビデオのジャケット写真
◆Blu-rayのジャケット写真。映画としては「復讐(リベンジ)もの」となる。
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