見出し画像

サッカー雑誌から学ぶ今後のラグビー報道の在り方〜厳しく激しい愛ある世界に変われるか〜

1.こんな企画が成り立つの?

今日も

サッカーダイジェスト 特集 Jリーグ上半期MVP &ベストイレブン

を読んでいる。サッカー日本代表は殆どが海外組だ。その影響もあり、Jリーグの集客状況は、コロナ前から順調とは言い難いチームも多かった。サッカーファンでない限り、日常生活にJリーグの話題がのぼることはほとんどない、といっていい。

しかし、この雑誌は、

日本国内のサッカーファンの多さ、サッカーへの関心の高さ、深さ

を十分に教えてくれた。

今月号の特集 J1前半戦MVP &ベストイレブン

内容自体はよくある企画だ。しかし、アンケートの質と量が違う。

解説者、サッカー好きタレント、識者、新聞記者の総勢40人、破格の人数だ。

ラグビーでこういう企画があっても、回答者を40人も募ったことはないだろう。

選定者01は、もちろん日本サッカー界のご意見番

セルジオ越後さん

だ。お年は取られたが、変わらず忖度なしの辛口コメントが並ぶ。日本人の心は、ブラジル、という異なる価値観を持つサッカー伝道師達の来日によって、大きな影響を受けた。フランシスコ・ザビエルの来日以来、という例えも大袈裟ではない。

水沼貴史さん、都並敏史さん、福田正博さん等J草創期の豪華メンバーから巻誠一郎さんのような現役を退いてまもない方まで総勢16人。スポーツライターも後藤健生さんを筆頭にNumberでもお馴染みの方々が12人。共同通信、日経新聞、からスポニチ、デイリー、夕刊フジまで8人の新聞記者。

立場によって、切り口は千差万別。とはいえ、

『今のJリーグど素人』の私でも、読んでいくと、注目の選手は嫌でも覚えるし、現代サッカーで

選手がプレーで何を求められているのか、

ぼんやりとわかってくる。

2.司令塔ってそういう意味だったの?

今回の第二特集は『司令塔』特集だった。

司令塔 わかったようでわからないこの言葉。

誰に いつ 何を 指令しているの??

インタビュー①に登場した清武弘嗣選手の記事がサッカー初心者の私には大いに参考になった。

決して『命令している』という意味ではなく、自らボールを動かして攻撃の形を作る人、だろうか。

ボールを持った時、味方が走り出す

質問者が清武選手に問いかけた際の言葉に『なるほど』と感心した。この後、司令塔の役割は昔と今とで変わってきた、という話題に展開していく。欧州サッカーの激しい進化の速さを知る。

全員で守備、攻守の早い切り替え

要するに、90分間走りっぱなし?

そりゃ、ケガも増えるよね、とぼやきたくもなった。この清武選手も、川崎の中村憲剛選手も最近まで怪我に苦しみ、ウッチーはあの若さで引退してしまった。

グラウンドでの華麗なプレイの裏で、たくさんの選手が絶え間ない怪我に苦しみ、この世界を去る。現代サッカー界は、年々光と影のコントラストが強くなっているのだろうか。

この特集は、江坂任選手、青山敏弘選手と中身の濃い記事が続く。

3.どうして熱くならないの?

読み進めて感じる。サッカー界のインタビュー記事は、いい意味で『体温』がない。もちろん、選手へのリスペクトがあることは当然として、冷静で丁寧な質問を続けるインタビュアーと、的確な答えを探し、言葉を選ぶ選手とのやり取りは、読後感が気持ち良い。

そこには、『絆』という言葉も『ONE TEAM』というスローガンもない。

しかし、選手が個々に高いプロ意識を持ってプレーし、その結集がチームの団結と勝利に結実する、ということは十分伝わってくる。その際生じる熱も十分に。

Jリーグ草創期、サッカー界はどこかフワフワした雰囲気だった。フランスW杯予選に向けて、サッカー界に注目を集める、ということが至上命題だったからか。カズもプレーそのものより、カズダンスやグラウンド外の派手なパフォーマンスに注目されがちだった。

あれからもうすぐ30年。私達の生活にサッカーというスポーツは深く根を張り、個々の選手にも競技それ自体にも、高いリスペクトを払うようになった。まだまだ欧州、南米には遠く及ばないが。

その現れが、特集記事やインタビューの質と量であり、インタビューに答える選手の言葉の精度なのだろうか。

4.どうしていつも感動を欲しがるの?

ラグビーは、記事自体にも、インタビューにも、感情移入が過剰気味だ。一定の感動を呼ぶ話にしたい、という意図が見え見えのインタビューもよく見かける。Numberや専門誌ラグビーマガジンはともかく(冷静さを欠く記事が時折見受けられるが)、テレビ、新聞の扱いは時にあまりに表面的だ。なぜ小中学校の道徳授業の如く『ONE TEAM』を連呼するのか。他の言葉を探さない、という意味で、ラグビーは、マスコミにとってまだそのレベルの存在意義しかないということだろうか。頑張った代表の選手スタッフに失礼ではないか、と思うことさえある。

しかし、やはりこれが、今のラグビーの現実なのだ。

とにかく、知ってもらって、なんぼ

30年前のサッカーと状況は似ている。

これから長い期間をかけて、ラグビーをめぐる報道も大きく変わっていくのだろうか。変わるには、ラグビーが日本人の心に根付く必要がある。

あの頃は、カズがいて、ラモスがいて、ジーコがいて、皆口々に『個の確立』を叫んだ。セルジオ越後さんはガンガンに辛口だった。

ラグビー界に、厳しく激しい愛で選手にぶつかってくる、観客に問いかけるジャーナリズムはいつ生まれるのだろうか。

そういえば

ラグビー界のご意見番

て誰なんだろう?






いいなと思ったら応援しよう!