マピンピ選手が教えてくれる真の『One Team』〜ラグビーマガジン一月号初心者おすすめ記事③〜
NTTドコモ、パナソニックを破る!
練習試合とはいえ、あの反則レベルに強いパナソニックワイルドナイツを撃破、しかも大差で。勝ったのは、今年二月下旬からリーグ中止となった今季、勝ちがつかず苦しみ抜いたNTTドコモだ。
これは、かなりの事件だったと思う。ラグビーは戦力の差がそのまま点差に現れやすいからだ。
大補強を敢行したNTTドコモは、来季『台風の目』になる可能性がある。
ラグビーマガジン1月号131ページ
この大補強の目玉、というべき選手の特集が組まれている。
南アフリカ代表 マカゾレ・マピンピ選手
私事だが、我が家の娘はなぜかアフリカ好きで、大学の南アフリカ研修に参加した事がある。
彼女曰く『南アフリカの人種差別は複雑すぎて、日本人には到底理解不可能』らしい。
マピンピ選手は貧困層がひしめく旧黒人居住区で生まれ育った。
この国は、複数の白人層、カラードと呼ばれる多数の混血層、インド、中国等のアジア系、近隣アフリカ諸国からの移民、等、無数の人種民族で構成され、それぞれにタウンシップなる居住区を形成し、互いに全く没交渉で生活する、というのが現状らしい。あくまで娘の説明なので不十分極まりないが、とにかく
お互い無関心、時にお互いを嫌う
という意識の断絶が日常としてあるようだ。
父のいない家庭に育ち、15歳までに母、姉弟と死別、という過酷な人生を歩んだマピンピ選手。
詳しくは本を参照して欲しい。
彼は、この生い立ち等が公にされることについて
『南アフリカには、同じ状況にある子供達が数え切れないほどいる。そんな子供達が自分も私のようになれたらいいとか、希望を見出してくれるきっかけになれば』
と答えている。
そして、南アフリカ代表がW杯で頂点に立ったことについて
『自分たちの出す結果で国を変えよう、という大きな目標を持っていたから』
と話す。選手達は、肌の色も、話す言語も違う、コーチ陣は北半球出身、
『そんな集団が一つになって大きな事をやり遂げれば、国民に勇気を与え、考えを変えることになると信じた。』
この言葉は、人種という言葉だけでは説明できない極めて複雑な国民間の断絶、という南アフリカの現状を知って初めて実感できるものだ。
しかし、年末まで新聞テレビ欄にあふれるほど企画された『ラグビー日本代表特集番組』に、このような話題はほとんど出なかった。
型通りの『白人VS黒人、アパルトヘイト』で語られるだけの南アフリカ。
日本人が、いかに人種差別問題に関して関心が低いか、思い知らされた期間でもあった。
マピンピ選手に
『南アフリカの人種差別の現状について語ってください』
と尋ねたら、きっと、彼は熱を持って何時間でも語ってくれるだろう。
この思いを受け止め、思考を巡らす作業を、少なくとも若い世代のラグビーファンにはお願いしたい。
来季、沢山の南アフリカ出身の選手がトップリーグに参加する。
彼らの母国に想いを馳せることは、一つの国が『One Team』になる意義を改めて教えてくれるだろう。
南アフリカで、娘は、自らのタウンシップの貧困を無くすために活動する婦人グループの拠点を訪ねた。
1人の婦人が好きな食べ物について語った。
『鶏の爪部分』
『どうしてそこが好きなんですか?』
娘の質問に彼女は静かに答えた。
『そこしか、買えないからよ。』
新型コロナウイルスは、南アフリカで貧困層を狙い撃ちのように襲っている。
あの時お世話になった方々と、娘は連絡が取れないでいる。