21夜の話
タイトル 書く道具
このところスマホで文章を書いていた。一気呵成に書いたあと読み返すと入力ミスが多いことに気づく。フリック入力が不完全なのと、親指が画面の端まで届かないからだ。こうしてPCで文章を書 いていると、頭が追いつかないほど速く入力できるし、入力ミスも 少ない。でもだからといってスマホ入力がPCに劣っているといいたいわけではない。スマホにはスマホのいいところがあるのだ。
ノンストップで後ろを振り返らずに書くことができるという利点。 スマホはPCと比較して画面が小さく、長文を書くときに後ろを修正しようと思っても、目的の文章を探すのに時間がかかる。だからそのうち後ろを振り返えるより前に前に進む力が働くのだ。僕の悪癖のひとつ。文章を書くときに少しでも気にいらない箇所があると、そこばかりを書き直してしまう癖。そういう癖のある書き手は多いのかもしれない。しかしそれでは生産性はあがらない。
スマホで書いているときは一種のトリップ状態だ。読者に対する文章というよりは書き手にとって心地良い状態ともいえる。独りよ がりになっている状態に近いが、それも悪いことばかりとはいえな い。創作小説においては創造した世界が目の前に存在するほど入り込むことが必要な場面は数多い。それに客観的に書いた小説という代物はどうにも面白みにかけることが多いのではないか。
一方、PCで書いた文章は勢いにこそ欠けても、流れるように読みやすいものが多い。なぜそうなるか?それは文末や前後の論理から文章のリズムが整えやすく、広い画面をみて段落の構成などを測るのが容易だからだ。修正もスマホに比べて簡単だから、綺麗まとまったものが出来上がるというわけだ。
スマホ、PC。どちらも一長一短あるわけだが、つまるところ僕らはどちらでも文章を書くことができる。弘法大師は筆を選ばないというような格言があるように、僕ら書き手は手書きだろうとタイプライタ ー だろうとスマホだろうとPCだろうと、書きまくってやればいいのだ。
僕の愛する【 オンザロ ー ド】 の作者ジャック・ケルアックは文章の命は打撃だと言っていた。文書による打撃、それはテレパシ ー 。一気呵成に書いてリズムになり ーー バンッと机を叩く ーー 読み手に 打撃を与えるのだ。そのためにはいちいち立ちどまってはいけない。文法やこまごまとした文学的配慮など後まわしでいい。溜まった熱を解放してやれば、読み手に伝わらないわけがない。
それがケルアックの教えだ。
さあ、今日も書こう。後ろを振り返るのは書き終わったらでいい。
前へ、前へ。
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