妄想レイディオ#33
「スキンハンガーって、ご存知ですか?」
午前0時を回り、今夜も始まりました「夜な夜な倶楽部・妄想レイディオ」
こんばんは、DJのKUNIです。
毎回、ボクの独断と偏見で気になるニュースを取り上げ、そのニュースの内容をキッカケに、知的で、お馬鹿な、お気軽トークを繰り広げます。
番組の命綱は、この一台の電話だけ。
(SE:リリ~ンと、電話が鳴る音)
リスナーの方とこの電話を繋いで、KUNIとのお喋りと、素敵な音楽で、朝までお付き合い下さいませ。
さて、今日のテーマは「注目されるリアルハプティスク」って、これ何?
は~い、今、スタッフからメモが届きましたが、「人間の触り方を遠く離れた場所に伝え、保存し、再現する技術」とのこと。ロボットに人の触り方を再現させ、色々な分野で活用しようと言うものね。なるほど。でも、ちょっと難しくない?あっ、他に別のネタもあるのね。何、何?「タッチケアが今、注目されている。女性健康雑誌に、今、特集が組まれるほどに」、
って、これも「触り方」について、と言うことなのね。簡単に言うと、今「触覚」が注目されていると言う訳か?ボクが触り方をテーマに話し出すと、随分、話がそれちゃうよ、だんだんと“下”の方の話題になっちゃうけど、って「そうならないようなゲストを呼んでいます!」と言うのね。うちのスタッフは優秀だね~。では早速、今日のゲストをお呼びしましょう。
おっ、この本「看護にいかす 触れるケア」と言う本の共著者のお一人なのね。
ではお呼びしましょう!見谷貴代さんです。もしもし、こんばんは!
「こんばんは」
まずは、自己紹介して下さい。
「はい!アイグレー合同会社の副代表、見谷貴代です。私たちは、タッチング、これを“触れるケア”と言うのですが、実際に肌に触れて、メンタル面のケアを目的とする技術を看護師や介護者の方々に伝えて、普及する仕事をしています」
なるほど、今、写真を拝見していますが、医療関係者や介護関係者など、いわゆるプロ向けに“触る”“触れる”と言うことを教えておられるのですね。そんな見谷さんからすると、こうした「タッチング」に関心が集まることはありがたいことなんでしょうね?
「いえいえ、KUNIさん!そんな悠長なことを言っている場合ではないんです。KUNIさんは、ご存知ですか?スキンハンガーと言う言葉?」
スキンハンガー?直訳すれば、肌が飢えてる・・・詳しくは分かんないけど、ニュアンスは分かりますよ。この2~3年のコロナ禍の影響で、肌を触れ合うことって、随分減りましたもんね。あぁ~、ボクも最近、若い子とは、メッキリと・・・
「触覚は安心感に繋がる感覚です。触覚って、人間の五感の中では一番早く発達して、8週から9週の胎児で早くも発達し始めます。生まれた後も、お腹がすいて泣いているときとか、何か怖いことがあったときに、お母さんに抱きしめられて、そして、お母さんを感じて、安心を感じる。大丈夫だ、と思うんです。すなわち、肌の触れ合いを通じて、安全な場所があると言うことを確認し、安心した思いで人との絆を感じ、そして、さらに社会性を培っていく。繋がりを感じる。触覚には、そうした重要な働きがある。生きるためには、私は、本当に必要だと思っているんですね。それが今、随分減ってきている。最近、孤独を感じていると言う人が多いのも、一つの原因が、このスキンハンガーではないかと思います。実際、エリエールが、全国の20代から70代の男女3000人を調査したところ、コロナ以降孤独を感じることが増えた人が38%で、幸せを感じる時が減った人が42%という結果が出ていて、
さらにTwitterの分析では、コロナ以降、人や動物などの生き物に触れたいというツイートが急激に増えたという結果があって、スキンハンガーが日本でも慢性化している可能性があることがわかりました。これは、本当に忌々しき事態、史上最大の危機だと言う人もいるくらいです」
なるほど、それは、実感としてある!確かにそうだ!それは理解できます!これは、忌々しき事態ですよね。
ところで、“触れる”と言うことは、本当に身体にいいんですか?
「人に触れるとオキシトシンと言う幸せホルモンが出ると言われています。私たちが看護師や介護士の皆さんにレクチャーしているマシュマロ・タッチと言う手法があるんですが、このタッチング手法を5分行うと、私の研究では、血圧と脈拍が統計学上、下がりました。さらに、合わせて心理テストを行うと、緊張が和らぐ、抑うつ感が和らぐ、イライラが和らぐ、と言った結果が、明確に出ていて、医学的にも認められています」
そのマシュマロ・タッチと言うのは、どうやって行うんですか?
「マシュマロ・タッチは皮膚にある触覚センサーを刺激します。触られて気持ちいいな、という感覚を脳に伝える専用のセンサーが皮膚にあるんです。これをC触覚繊維と呼びます。そのセンサーが上手く反応するために5つの触れ方のポイントがあるんです。例えば、手のひらを密着させるように触れる。人肌の温かい手で触る。あと、1秒間に1センチから10センチぐらいでの速さで触れる、など。そうすると気持ちいいという感覚が脳に届くんです。マシュマロ・タッチは、ただ触るだけでもないし、マッサージでもないんです。」
これ、ボクにも出来ますかね?
「小さい頃、お腹が痛かったときにお母さんが優しくお腹をさすってくれたことありますよね。あるいは、優しい看護師さんが、背中を優しくさすってくれたことありませんか?
それだけで十分、身体は楽になったでしょ。難しいことは置いといて、そうしたときのことを思って触れてあげればいいんですよ。KUNIさん、ここで、一つ蘊蓄を!看護の“看”って、“手”が“目”と書きますよね。看護とは手が果たす役割が大きいんです」
おぉ!その蘊蓄、戴きます。最近、田舎の母親に会ってないなぁ~。今度、帰ったら、背中さすってやろうかなぁ~
「KUNIさん!もう一つ良い情報を!この触れると言うことは、何も、触れられる側だけが気持ちよくなるのではありません。触れる側も、気持ちよくなるんです。今、コンプライアンス的にも、若い女の子に触るなんてことは難しい世の中。実家に帰った際にでも、お母さんの手にハンドクリームを塗ってあげる、それだけで、お母さんはもちろん、KUNIさんも気持ちよくなると言うわけです」
健全、かつ、安上がりですね~(笑)しかし、しょっちゅう田舎に帰る訳にもいかず、自分で、自分をタッチするのはいかがなんですか?女性誌などには「セルフタッチケア」とか「セルフハグ」みたいな言葉で紹介されているようですが・・・
「残念ながら、明確なエビデンスはまだありません。ただ、授業やセミナーで、セルタッチをすると『気持ちよくなった』『眠たくなった』などの声があがりますので、経験則的には効果はあるように思えます。一方、一つエビデンスが出ているものは、抱き枕のような柔らかいものを抱きながら、好きな人と電話する。そうすると、ストレスを減らすホルモンが出るそうです」
それ面白い、と思うけれど、ボクがそれをやっている姿を想像されると、ちょっと嫌かな。
「いやいや、田舎のお母さんに電話する際には、KUNIさん、抱き枕を抱きしめながらお話しして下さい」
なんでボクと相手してくれる女性は、母親限定なんですか!?・・・って、まぁ、今は、実際そうやけど(汗)
「冗談はさておき、私が怖いのは、学校の授業などで、私が、このマシュマロ・タッチの仕方を教えている際に、他人に触れることに躊躇する学生さんが、10年前よりも増えたような気がします。あくまでも個人の感想ですが。それは、彼ら、彼女たちが小さいころからあまり触れられてこなかったからという理由も一つ考えられます。しかし、先ほども申し上げた通り“触れる”“触る”と言うのは人格形成においても、非常に大事です。このスキンハンガーと言う状態を打破していかねばならないと思います。そこで、私は、今後『触育』を進めていきたいと思っています」
おぉ~「食育」ではなく「触育」ね。それも面白いかと。あぁ~やっぱり、もっと触れ合いたい!
「KUNIさん!もう一つ、役立つ情報を。今、むやみに身体に触れると、特に異性の場合はセクハラと言われかねないのですが、オックスフォード大学が面白い調査をしています、いわば人体の“おさわりマップ”。どこまで触ってもいいのか、ダメなのか、と言うのを様々な関係性ごとに示しているんですが、関係性が希薄になればなるほど、触ってもいい場所は当然減っていくんですが、まぁ、唯一残されているのが・・・手の甲かなぁ」
手の甲!よくドラマで二枚目俳優が「大丈夫だよ!」と、恋人役の手の甲を軽く握ると言うシーンが出てくるけど、ボクでも、許されるかなぁ~、どうかなぁ~。やっぱり、母親限定にしておきます。
「そうですね。親の手が、一番健全だと思いますよ」
それにしても、このスキンハンガーの時代、なんとかしなければなりませんね。
「特にお子さんに関しては、触れ合う時間をもっと持っていただければ、と思いますね」
分かりました!今日は、貴重なお話し、本当にありがとうございました。
「こちらこそ。また、呼んで下さい」
はい!今日のゲストは、「看護にいかす 触れるケア」と言う本の共著者のお一人で、アイグレー合同会社の副代表、見谷貴代さんでした。
では、最後に、今日は、この曲でしめくくりましょう。
青山テルマ で 「ママへ」 って、やっぱりお袋か~い!
皆さん、おやすみなさい。また、良き明日、良き朝をお迎え下さい!(了)
参考:アイグレー合同会社|マシュマロ・タッチⓇ【公式サイト】 (aegle-llc.com)