TYOV_Silverio Galie 04
1500年代中盤
記憶18
私がシチリアに根付いて100年が経った。私は今や住む者の亡くなった小屋の屋根裏から古い指輪を手に入れた。
資産07
西ローマ帝国の指輪
金、エメラルド。
回想:魚の臭いが取れぬ少年
小さな入り江を持つ山に囲まれたこの村は、他との交流が少ない。住民は先祖がローマの貴族だという伝説をすっかり信じている。私は大きな町で家庭教師をしながら時おり食事にこの村を使っていた。最近は飢えを感じることも少なく、自分の制御ができていると感じる。
だが、長くひとところで食事をしていればいつか尽きる。私はある晩、ついに襲ってきた激しい飢えを満たすために少年を食い、その祖母が病で死ぬに任せた。それが村の最後の1人だった。老女は屋根裏の箱に執心していた。見てみると分厚い金の指輪が入っていた。
記憶19
私はヴェネツィアに移った。
シチリアで教えていたArangi家の当主から仲裁を求める手紙があり、相手は当地の貴族Donati家とのことだった。私はDonati家当主に手紙を書き、双方から礼として絵画を1点ずつもらい受けた。
人物05
絵画狂のヴェネツィア貴族、Vittorio Donati
いかにも優雅で高慢な男。若くして当主となった気負いもあるのだろう。
資産08
絵画2点
後ろ暗い揉め事の仲裁で、口止め料としてArangi家当主とDonati家当主双方から1点ずつ譲られた。
記憶20
血を吸う気にならない脂ぎった女が、祖母の手紙に私の顔を見つけたといって追ってくる。昔に教師をしたものらしい。きっとその祖母とやらも食指が動かず、孫が出来るに至ったのだ。女を夜更けに橋から落とす。誰かいれば助かったかもしれないが、残念だ。
記憶21
かつて食卓にしていた、シチリアの滅んだ村を学者たちが調べるそうだ。ローマ貴族の話が真実なのか確かめるのだろう。
この機にまた名を変えたほうが安全そうだ。Fabrizio Grieco、異国風でもあり気に入った。
記憶22
Vittorio Donatiを同族とした。その衝動を抑えきれなかった。彼はLucianoによく似ていた。
回想:滴る願い
ヴェネチアに居ながら、私はDonati家の当主とは面会したことがなかった。例の諍いの時はずっと手紙のやり取りで、絵画も取次ぎのものが運んできた。私は名前も変えたことだ、と、伊達者と評判の当主を見に行くことにした。
社交好きのVittorio Donatiは、頻繁に会食の場を設けている。私は適当に偽造した学者の肩書でそこに入り込んだ。食事はこれだけ人数がいれば、誤魔化しながら僅かに口にすればよいだろう。
だが着飾って入口をくぐり、客に愛想を振りまくVittorioを見た瞬間私は急速な本物の飢えを感じた。よくぞ会が終わるまで堪えたとすら思う。使用人に宿泊を勧められ、誘いに甘えて客室に入る。Vittorioが私を気に入ったのは会話の様子でわかっていた。彼はまだ話し足りないと、葡萄酒を提げて客室までやって来た。彼はどれほど酔っていたのだろうか? ……すべてが終わってから気にすることではない。私は彼を貪り、平らげ、窓から月の光を入れようと立ったところで気が付いた。彼の唇も赤く染まっていた。
私の傷だ。脚に巻かれたベルトは何のためだと問われ、毎回答えているように“お守り”だと言った。かつて脚を患った時、神に祈って癒えたのだと。そのメダイをこうしていつも巻いているのだと。彼はそれを欲にかられて外したのか、そこから滴る私の血を飲んだのに違いなかった。あの日、私がLucianoの指を噛んだようにして。
意図せず同族を殖やすのは望ましくなかったが、私は彼をそのままにした。彼はLucianoによく似ていた。ああ、彼がこんな風に鳴くのなら。