TYOV_Silverio Galie 01
1300年代初頭
記憶01
私はSilverio、ジェノヴァ共和国の商家Galie家の3男として生を受けた。長兄は商人、次兄は貴族の奥方に囲われた画家だ。父は私を僧にするか商人にするかまだ迷っているらしい。
人物01-03
01_心優しき友Dante
10歳から通った算術学校での親友。親は毛織物商だ。
02_卑しい占い師Adria
店に入り込んでは、この家に呪いが降りかかるなどわめきたてる物乞い。
03_飄然とした次兄Filiberto
遊び好きな貴族の奥方に飼われている画家。実際いくらか売れている。
技能01-03
01_算術
この時代には特殊技能だ。
02_読み書き
実用的なものなら大人顔負けにできた。
03_絵画
次兄によく教えてもらった。特徴を捉えるのは楽しい。
資産01-03
01_自画像
次兄と共に描いた。父に見つからぬよう古布を巻いて隠してある。
02_サファイアのブローチ
母の遺品。母は私が算術学校に入る前の年に死んだ。
03_時祷書
誰かのお下がり。途中のページを1枚破いてある。
記憶02
父がシチリアに出かけた隙に、次兄が金の無心に来た。仲が良かった私は、彼の道具を借りて幼いころのように絵を描いた。その素描の自画像は今も大事に持っている。
記憶03
Danteは算術学校の親友だ。いつも優等で、嫌味のないいい奴。ふたりで釣りの真似事をしていて、ふたりして橋から落ちたことがある。私が彼の助けになったのは後にも先にもその時だけだろう。
記憶04
いつものように“呪われている”などと店で騒いだAdriaが、私が手習いに開いていた時祷書に唾を吐いた。私はその夜遅くに起き出し、蝋燭の火にそのページをくべてしまった。
人物04
古典教師、吸血鬼Luciano
父がシチリアから伴ってきたアラゴン出身という若い男。
回想:新入りの家庭教師
Galieの家は大きな商家だが、教皇庁御用商人ではなかった。私の父はそれを目論見、私を僧籍として教会との繋がりを持ちたがっていた。
僧になったとしても、鳴かず飛ばずでは教会の財布を握れない。上の方の覚えめでたくなるようにと、父は私に実用一辺倒の商売知識だけでなく古典教養も身につけさせることにした。
シチリアへ仕事に出た際、父はかっこうの人物を見つけた。Luciano Urquiolaと名乗った男は、バルセロナ家についてやって来たものの水が合わずもっと北での仕事を探しているという。古典についての深い教養に感銘を受けた父は、そのままLucianoをジェノヴァに呼び寄せ私の家庭教師とした。
Lucianoの知識は広大で、字も美しく、詩作をさせても巧みであった。見た目はさほど目立つものでもなかったが、日光を受けると薄く緑を帯びる鳶色の目は黒髪に映え魅力的であった。
そんな彼に、独り立ち前の私が傾倒するのに時間はかからなかった。LucianoはGalie家の近隣に住居の世話をされていたが、私はしばしばそちらにまで訪れて談義に耽っていた。
記憶05
Lucianoの心地よい声にあわせ古典の音読をしていると、情景に入り込む気がする。希臘の神々のなんと放埓なことか! “雷帝は黄金の雨となり――”やがて私もダナエに変じた。
刻印01
Lucianoが私につけた脚の傷からは、いつまでも血液が滲んでいる。私はそこに小さなあて布をして、革のベルトで押さえることにした。