TYOV_Silverio Galie 06

1600年代末

記憶29

 取引で失敗し折角の写本達を失った。
 形あるものだけを信用していては奪われると学んだ。定命の者は、限りある時間を物品の移動に費やすのは馬鹿らしいと考えるようになったらしい。私も考えを改めねば。

技能10

取引
形のない物でも取引をうまくしおおせる。

記憶30

夕暮れに道を来た旅人を考えなしに食らった。
ああ、まただ、また私は何かを失っている。

記憶31

貪り、満ち、眠るのはいつも夜明け前だ。
夜明けを最後に見たのはいつだったろう?
もしかすると初めてかもしれない。
紫から青、黄が混じり白い光が目を灼く。
美しかった。

記憶32

食事に趣向を凝らして遊んでいる。愉快なものだが、薬品には注意が必要だ。実験中に危うく自分が昏倒するところだった。これはつまらない、と配合を改める。目は覚めている方がいい。

技能11

麻痺
薬品の使用で対象の動きを制御できる。意識は奪えない。

記憶33

酒場に出向く。葡萄酒を飲めば今晩は特に飢えも感じない。
隣の男が木炭で何か描いているのを取り上げる。なぜかすらすら肖像が描けた。

技能12

描画
さらさらとした素描が得意だ。

記憶34

 詐欺の疑いを掛けられる。誠心誠意の手紙たちを当局に提出し難を逃れた。――おや、老Silviaの手紙も交っていた? いや、その中身など知らないが。彼女は逮捕され、私はそろそろ煩くなっていた玩具を失った。

記憶35

酒場は同時にいくつかの欲求を満たせる、食指の動く獲物が多い。飢えていなくともそれ以外だけ満たすこともある。当たりがいない間は延々カウンターで絵を描いた。50年でも。

1700年代中盤

記憶36

Donatiの古めかしい別荘を欲しがる者があり、その代金で街中に小ぶりな住宅を持った。家を当代風に飾り、最後に銃を買った。興味深い道具だ。

資産11

ヴェネツィア市街の住宅
ひとりで住むには十分だ。

資産12

フリントロック・ピストル
実用性と装飾性をひとところに押し込めた奇怪な形と、相応しい吠声。

記憶37

気配を消すのが昼間でも容易になっている。
定命の者共が、自分たちにしか興味を持たなくなったということか。

技能05の変更

夜歩く→ただ歩く
日没後ならば気配を消すことができる。→望めば気配を消すことができる。

記憶38

Germainと名乗る男とは長い確執があった。だが興味が同じと知り友となった。私たちはふたりで使うための薬学実験室を作り、入り浸った。

人物08

Germain
同族ではない。だが不死らしく見える。シチリアにいるころに出会い、何かと目障りで、詐欺罪騒動にも彼の影があった。

記憶39

古い記憶が現れ、骨董品の時祷書を高値で買い取った。代金はほぼ帰っていなかった住宅を売って工面した。

回想:祈りの形

 その時祷書は私のものだ、と喉元まで出た言葉を飲み込んだ。ローマから来た商人が広げた骨董品の中に、小さく粗末なそれがあった。捲っていけば1ページだけ不自然に破けて失われている。私が破り、蝋燭の火にくべたものだ。Adriaが唾を吐いたから。
 彼女の発していた言葉は、正しく未来を予言していたのか? それとも、そのものが私への呪いだったのか?

記憶40

その男は危険だと感じた。銃を持って追い、路上で発砲した。
取り押さえられた私の胸を、男が私の銃を拾い撃ち抜いた。私は死ななかった。人々が息を呑む。男が言う、これを殺すには7つに裂き――

回想:緑光の妖

 時祷書を毎日眺めている。時には音読する。
 こうして昔も、教師と音読していたのだろうか。恐らくそうだろう。顔を上げた私は戸口に立った男に気付いた。Germainは奥で実験に夢中だ。その男はなぜか恐ろしく危険なものに思えた。私は銃を手に飛び出した。目の眩むような光の中、私は先を行く男を躊躇いなく撃った。
 そんなことが許されるわけもない。私は周囲の人々に取り押さえられ地面に押さえつけられた。男が戻ってくる。彼は私が落とした銃を手に取り、私を見下ろした。その目は白昼の反射光を受け緑色に光っていた。


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