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世界一しょぼいタイムスリップ【毎週ショートショートnote】

大きな声では言えないがある時を境に私には特殊能力が身についたようだ。

タイムスリップだった。

だがある一定の状況でしかそれが起こらないし制御不能だった。おまけに良くも悪くも世の中に1mmも影響を与える事ができないのだ。

それは数年前から突然始まった。


当時評判のミステリー映画を見ていた時のことだ。その映画は華麗などんでん返しで監督が視聴者に突きつける『予測不能』がウリだった。ネットでもネタバレ厳禁の話題作だった。

小説にせよ、映画にせよミステリー、サスペンスに目がない私はクランクインから注目していた。

満を持しての封切り初日、私は観客で満員のIMAXシアターに乗り込んだ。

映画が始まると一気に私はその映画に入り込んだ。今までに無い没入感だ。掴みに手抜きはない。

とその時だった。まだ始まって間もない頃のことだ。


「うわ~何だこれ?」


私は悲鳴に近い大声を上げてしまっていた。観客は一斉にこちらを見ている。

〝一体何が起こっているんだ?〟

スクリーンでは謎解きが始まっていた。私の目に飛び込んできたのは〝犯人〟だった。

〝まだ始まって10分もたっていないじゃないか?倒叙型なんて聞いてないぞ!〟

私はパニックになっていた。

何が起こっているかわからずなんとなく腕時計を見ると90分が経っていた。

〝えっ?〟

これが私の初めてのタイムスリップだった。

それからというもの映画を見てるといきなり90分経過してるということが頻繁に起こるようになった。しかも、どんでん返しのミステリ作品に限ってだ…



因果応報だった。

たしかに思い当たることがある。

まだまだ私も若い頃のことだった。私は可愛い彼女と連れだって映画館にいた。やはり当時評判のミステリー・ホラーだった。事前に原作を読んでいた私はその映画が決して私達を裏切らないことがわかっていた。

本編がはじまって間も無い頃のこと。ポテトチップスをつまみながら私は得意気に彼女に囁いていた。だが少々声が大きかった。

「ほら、あれが犯人だよ!」

すかさず周囲から怒号が飛んできたのも無理はない。可愛い彼女は怒って帰ってしまいそれきりになってしまった。


若さゆえの失敗だった。

だが神様は私の事を決して許してはくれなかったようだ。

一生この苦しみは続くのだろうか?

決して許されないのだろうか。

〝ネタバレ地獄か…罰が重すぎやしないか〟

何の神様だろう……

映画、芸能……


〝かもしれない弁天?〟


(絶対に410字に収められる953文字😭😭😭)


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