リベンジトリートメント【毎週ショートショートnote】
気の置けない仲間と始めた怪談百物語も98話が終了した。連日の熱帯夜であったが今夜はなかなか涼しい夜を過ごすことができた。
僕で99話となりこれでお開きの予定だった。夜も明けるのもあと3時間余りだ。
さて最後の話者となった僕は隣にいる妹と体験した最近の出来事を淡々と語り始めた。それは僕の家に古くから伝わる市松人形にまつわるものだった。
その人形は祖父母の時代から〝お菊〟と呼ばれていた。
そしてそのお菊人形は不思議なことに髪が伸びるのだ。
そう、そして僕が小さい頃はその伸び方はわずかであったがここ数年は尋常じゃなかった。1ヶ月に5cmから10cmも伸びるのだ。
最初は怖かった。
だが僕の妹がその人形の髪の手入れを始めた頃から僕たち兄妹はその上質な髪質に注目するようになった。
たまに妹がトリートメントを施したりなんかすると烏の濡れ羽色なんてものではない、キューティクルMAXの極上の黒髪と化すのだ。
そのうち妹がその黒髪をちょいと拝借してエクステなどをするようになった。
それをみた僕はコレはイケると思って最近寂しくなった前頭部の増毛を大規模に始めた。
高価な人毛がただで手に入るのである。お菊様様である。僕たち兄妹はたっぷりとお菊人形の恩恵に預かった。
そしてつい先ごろの事だ。僕たち兄妹は同じ夢を見たのだ。
夢に出てきたのはいつもお世話になってるお菊人形だった。
〝おのれお前たち!わらわの髪をなんと心得る。調子に乗るのもいい加減にしろ!懲らしめてやるから覚悟しておけ!〟
僕も妹も真っ青になって目覚めた。一体何が起きるんだ?そして震えてその時を待った…
そう、そしてつい2-3日前のことだ!一体何が起きたのだと思う?
その場にいた一同、ゴクリと唾を飲み込んだのは明らかだ。
ついにお菊人形のお沙汰がくだったのだ。
あろう事か妹のトリートメント剤がハチミツに変わっていた。そして僕が愛用していた育毛トリートメントがマヨネーズになっていたのだ。
一同ホッと胸を撫で下ろすさまが手にとるようにわかった。
なんだ!そんな事か!だがよく考えて欲しい。
シャンプーした後のトリートメントがハチミツやマヨネーズだったらどうなると思う?…大惨事間違い無しだ!
その時ふと灯りの代わりにしていた1本のローソクが消えた。そしてあたりが真っ暗になった。
えっ何が始まった?99話で問題ないはず…
その時友人が叫んだ。
今の話、妹さんと一緒だっただろう?妹さんの分もカウントされて百物語が成立してしまったんだ!
まさか!
〝ぎゃー〟
〝うわっ!何だこれ?〟
〝やめてー〟
〝来るなっ!〟
お菊人形が突然現われた!
たちまちその場が阿鼻叫喚の様相を呈した。まさに地獄絵図だ。
そしてそのお菊人形はなんとショート・ボブだった。
なぜかって?
一週間前に妹のやつがへア・ドネーションをしたせいだった…
(😭😭😭)
たらはかに様の毎週ショートショートnoteに参加しました!
皆様の作品を確認しておりませんのでネタかぶりのないことを祈っております😭
そして今回の怪談百物語なのですが以前にも百物語にまつわるショートショートを書いたことがありました。興味がおありりでしたらぜひこちらもどうぞ!
ただしこちら本当に怖い話で閲覧注意です。
読後感が最悪で精神に異常をきたしたというクレームが絶え間なく寄せられました。
くれぐれも自己責任でお読み下さい。くどいようですが筆者はこのショートショートに関していかなる責任も負えませんので…