あるべき成仏宴【毎週ショートショートnote】
今世紀最大のイベント『日本縦断成仏宴ツアー』もファイナルを迎えた。本日をもって悪霊の皆様とは二度と出会えなくなる。
本来はこういったイベントはもっと早くに行うのがあるべき姿だがマスメディアなどのエンタメ界の要請により先延ばしになっていた。大人の事情だ。
司会は世相を反映したのかAIのミーガンだったが、出席者はファイナルに相応しく日本の霊界を支えてきた錚々たる面々だった。
昨今の最大のヒロインといえば貞子、伽椰子あたりだが彼女らは末席で、上座はやはり悪霊界の重鎮ともいえるお岩、お菊、お露が占めた。
稲川淳二からの祝電が披露された。
割愛する。
余興はキョンシーによる舞踏だった。
チャッキーによる人形劇もあった。
途中、お菊による〝お皿が一枚足りない!〟というクレームがあったがおおむね成仏宴ファイナルは粛々とスムーズに進行したといえる。
そして最大のクライマックスを迎えた。
お岩による今生最後のスピーチだった。
「……今日までは〝恨めしい〟が口癖でした。
だけど明日から生まれ変わります。
いや死んでいるからこそ明日から生まれ変われると信じているのです。
これからの口癖は〝今日生きていることに感謝!〟
皆様、私のわがままを許してくれてありがとう……幸せになります!」
お岩のスピーチは涙を誘った。
そして会場の割れんばかりの拍手の中
お岩はマイクを両手で握りしめ
ゆっくりとかがんで
ステージにマイクをそっと置いた。
(593文字)
たらはかに様の毎週ショートショートnoteに参加しました。
伝説のラストはこちら……