
命乞いする蜘蛛【毎週ショートショートnote】
「いーとーまきまき、いーとーまきまき…なんかあんまりでてこない」
「ううっ…園児はあと何人?」
「いーとーまきまき、いーとーまきまき…なんかよわってきたじょ」
「これでは身が持たん…子供は加減を知らん…」
クモ男のピーターの本日のミッションは幼稚園でのボランティアだった。
いつものようにニューヨークで犯罪者と戦うより日本の永田町で子どもと遊ぶ方が遥かにラクだと思ったのが間違いだった。
まだデパートのイベントの方が良かった。営業であれば実入りもあるし、こうして身を削る事もない。
ところでサナエちゃんのお父さんは日本でも有数の政治家だ。総務省の大臣だとか。今日はサナエちゃんの発案で幼稚園で糸電話の電話網を構築するという保育だった。いわば糸電話のウェブだ。父親の仕事の真似らしい。
こんな依頼断れないではないか。
そしてそのためにこうして30人もの園児を相手にして糸電話用の糸を提供する事になった。
別にクモ男のでなくても良いのに…
さて、ようやく園児の列も終盤にさしかかった。
「いっていのくぎりがついたので、じにんします」
助かった。1人でも脱落してくれたらそれだけ身が保てる。しぞーか出身のヘイタ君だった。なんかものすごいプロジェクトを邪魔するぐらいのスーパー園児らしい。だがいつも一言多い問題児という事だ。
「おいおまえ!しょかんがいなのか?いとのでがわるいぞ!ちうごくのぱちもんのほうがまだましだぞ!」
すぐにキレるタロウ君の番だった。なんかタロウ君のお弁当箱には中国の国営企業のロゴがうっすらと入っているらしい。タロウ君のお父さんも有名な政治家で私的な事業では日本と中国に会社を立ち上げたという話だ。
「おまえ!ぼくがそうさいになったらおまえなんかひとにぎりでつぶしてやるからな!」
これはパワハラではないのか。
「勘弁して下さ〜い。どうか命だけは助けて下さ〜い!」
クモ男もさすがにタロウ君には敵わない。
それよりなにより飲まず食わずで糸を出し続けて息も絶え絶えだ…
(😭)
たらはかに様の毎週ショートショートnoteに参加しました!
強引すぎましたがギリギリ今週も参加できて良かったです😁またまた皆様の作品を確認しておりませんのでネタかぶり等ございましたらご容赦願います。