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夜光おみくじ【毎週ショートショートnote】

氏子離れでどうにもこうにも経営的に立ちゆかないある神社の宮司が思い切って今話題のコンサルを受けてみた。

その30代のコンサルタントはいかにもといったいけ好かない出で立ちと立ち居振る舞いだったがアドバイスも奇をてらっただけのもののように思えた。

「お宅の神社のおみくじの文言を夜光塗料で書いたらいかがでしょう」

まったく胡散臭いことこの上なかったが、あに図らんや、高額なコンサル料だけのことはある。そのアドバイスは思いのほか適確だった。

神社がやったことはたった二つで、助言通りおみくじの文言を夜光塗料に変え、最初のあいだ凶や大凶を多めにしただけだ。

その結果、境内の木には引いたおみくじをその枝に結ぶ〝結び付け〟だらけになった。そうして夜が待ち遠しくなった。

そう、夜になるとその木はぼうっと光り幻想的なシーンを醸し出し、クリスマスのイルミネーションとはちょっと違うがこれはこれで美しかったのだ。

こうしてこの神社は夜の映えスポットとして一気に駆け上がった。この神社はあのメジャーな写真共有SNSでバズり、#夜光おみくじは、一瞬であるが検索ワードの一位の座を独占した。

たちまちそのあとに続く神社が現われ、神社界の一大ムーブメントとなった。

めでたしめでたし。

と素直に行かないのが昨今の世間である。あらたな勝者が現われる一方で敗者も出てきてしまった。

〝わら人形の呪い支援グッズ〟の製作会社である。

夜光おみくじにより〝わら人形の呪い〟人口が激減してしまったのだ。

無理もない。

ただ〝わら人形の丑の刻参り〟のゴールデンタイムは深夜の1時から3時なので夜の神社への来訪者の増加が原因とも思えない。

それよりも夜光おみくじのそのものの圧が思いのほか大きかった。幻想的で微妙に明るい境内で〝呪い〟が出来るのかという心理的抵抗だった。

〝わら人形の呪い支援グッズ〟の製作会社は困ってしまいやはり、グッズ関連の商品開発を得意とするコンサルタントに相談をしてみた。昨今はどこもかしこもコンサルだ。

2~3日待って下さいと言ったそのコンサルタントは自信満々の笑みをたたえてプレゼンにやってきた。

「こちらをご覧下さい。光をすべて吸収する特殊な塗料によるステルスわら人形です。そしてこちらが丑の刻参り用のやはり同じ素材によるステルス作業着です。どちらも夜であればまったく見えなくなります」

コンサルタントは一息おいてネクタイを緩めた。

「そしてその使い方なのですが、この作業着を着てわら人形を持って歩くとさながら首だけが宙に浮いて移動しているように見え……うっ!」

コンサルタントは胸を押さえて倒れ込んでしまった。事切れていた。

製作会社の経営者はその様を見て目を剥いた。

〝なんということだ!ゆうべの丑の刻参で『夜光おみくじの発案者』を呪ってしまったがまさかコイツだったとは……うーん!……それにしてもウチのわら人形がこれほどのものとは……早速成功事例として商品説明に加えるとするかな……〟

(1200字越え😭)

たらはかに様の毎週ショートショートに参加しました!



↓記事を書く最中に発見してしまいウケてしまいました。もちろんシャレのパーティーグッズです。このレビューも結構秀逸でした。


このほかにもシリアスなサイトもありましたが決して面白半分では見に行かないで下さいね。もちろん本記事もこういったシリアスなサイトを想定した記事ではありませんのでご理解願います。








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