
失楽園ぼっち【毎週ショートショートnote】
気が付いたら僕はこの世界にいた。そこは美しさと快適さに満ち溢れていた。温暖で見渡す限りのお花畑と自然が織りなす絶景しかない。生き物達も美しい。ただ人間だけは見かけなかった。
僕はしばらくその世界で過ごしたが、思ったことは何でも実現できてしまうため何不自由ない生活だった。
なんで僕はここにいる?自慢じゃないが僕の人生は善意しかなく終始ご機嫌だった。人には愛情をもって接するのが常だった。これは日頃の行いのご褒美なのか?
これはもしや転生?いや最後の記憶は僕の乗った旅客機が墜落するところだ。するとどうやら僕は・・・
どうでもいいが、何で誰もいないのだ!人との葛藤が懐しい。
僕は寂しすぎてヤケになってつい暴れてしまった。するとたちまちその楽園を追われてしまった。
楽園ぼっちからの、失楽園ぼっちだった。
僕は荒れた。もうぼっちは嫌だ!僕は失楽園では悪行の限りを尽くした。ただしぼっちでできる悪行など限られている。
そうするとたちまち暗くて、寒くて、熱くて、臭いところに連れてかれた。一瞬でもここにいたくないと思わせるところだった。
だけど、ここには人があふれていた。見知った顔も多かった。テレビでお馴染みの政治家やタレントはいわずもがな、ハリウッドの大物やら、歴史上の人物だって多数見かけた。セレブ、庶民関係なくとにかく人がひしめきあっていた。
この喧噪が懐かしかったのだ。この猥雑さに恋焦がれていたのだ。
そして僕の見立てでは同級生や、同寮や、友達や、家族だって・・・ここで待っていれば必ず会えるに違いない。
そうこうするうちに最後の出張で一緒だった先輩に出会った。
「先輩!」
「あれっお前なんでここにいるんだ?天国に行ったんじゃなかったのか?」
「それが・・・」
「まさか飛び出してきたわけじゃないよな?今じゃあそこにいける奴なんか皆無だって閻魔様がぼやいてたぞ。で、どうだった?天国は」
「だから人っ子ひとりいないんですって!」
(だいたい800字。さーっせん!)
たらはかに様の毎週ショートショートnoteに参加いたしました!
このさい、天国=楽園、天国≠楽園、天国≒楽園とか、えっ失楽園ってあるの?とかのツッコミはいっさいナシということでおねしゃす。_(._.)_🙏