お返し断捨離【毎週ショートショートnote】
当時は〝断捨離〟なんて言葉はなかった。
だがいま思えばあれは間違い無く、おかんとの断捨離バトルだった。
ある日、高校から戻るとお小遣いやら、バイトで苦労して集めたゲームソフトがすべて捨てられていた。
もっと勉強に精を出せ!ということらしい。泣くことこそ無かったがとても悲しかった。
〝うりゃうりゃうりゃうりゃ~〟
僕は留守中に、おかんが通販で買った怪しげな健康器具を全部捨ててしまった。仕返しだ。おとんは目で〝よくやった!〟と言ってくれた。
後日、やはり学校から戻ると今度は漫画本が一冊もなくなっていた。
僕が次に手を付けたのは、やはりおかんが通販で揃えた美容器具だった。その日おとんは僕にカツ丼をおごってくれた。
そして両者が一歩もひくことがなく、断捨離バトルは僕の大学進学まで続いた。おとんが喜んだのも無理もない。実家の不要品が一掃されとても住み心地が良くなったのだ。
こうして覚えた僕のミニマルな生活はもう何十年も続いている。そしてぼんやりと当時のことを思い出してハッとした。
きっかけはゲームソフトなんかじゃなかった。
最初に捨てられたのは部屋のそこら中に隠してあったエロ本だった。
おかんは一冊残らず、すべてを把握していたのだ。
恐るべしおかん……
ウチだけだとも思えない。
世の中のすべてのおかん……絶対にあなどれない……
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