鋼こむらがえり【毎週ショートショートnote】
WHOが緊急事態を宣言した。
人類は再びウイルスの脅威に直面した。
症状はこむら返りだった。その程度はマテリアルの硬度で表現された。最も一般的なレベルは鋼だった。これがチタンであれば致死レベル、プラスティックやマシュマロレベルであればまあ無症状ともいえるレベルだった。
鋼こむら返りに感染すると頻繁にこむら返りがやってくる。
「あぁっ!くるくる!……きた~!……ぎゃーっ!」
満員電車だろうがなんだろうが発症した人は叫び声を上げ脚を引きつらせた。周囲のもの達も感染を怖れて手が出せない。こむら返りは誰にとっても悪夢だった。
そんな中一人のウイルス学者が立ち上がった。彼はマシュマロこむら返りのウイルスが鋼こむら返りの変異種であることを突き止め分離することに成功した。
彼はその分離した弱毒化ウイルスを世界中にばらまいた。ウイルス干渉を目論んだいわば火事でいうところの向かい火だ。
マシュマロに感染した人達には免疫が備わり鋼に感染することはなかった。
こうして人類はウイルスによるこむら返りを克服した。
だが、寝ているときに人々に襲いかかる普通のこむら返りだけはいまだに対処することができなかった。
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