カフェ4分33秒【毎週ショートショートnote】
彼は実家の近くの喫茶店「カフェ4分33秒」に私を連れ出した。
「お前と一緒になるんだ。このカフェの一風変わった名前の由来をお前とシェアしたいと思ってここに連れてきた……」
私はその一言で涙が出そうなぐらい感激したが表情には出さないでいた。
「実はここの娘さんが不治の病で……」
うっやばい!いきなりのNGワードだ。
私の涙腺は早くも崩壊しそうで必死に耐えたが……
「医師によると余命3ヶ月の診断が下され……」
すでにぽろぽろと涙が止まらなかった。
「ご家族はもう気も狂わんばかりに悲しんだ……わらをもすがる思いであらゆる手だてを講じ、その中には多少怪しいものもあった…そう…あるご祈祷師の助言に従って……遠く離れた名医にセカンドオピニオンを求めたんだ」
彼は続けようとしたが…正直私はこれ以上聞きたくない…悲しい結末は絶対にイヤだ……
「その名医の診察では…娘さんの病気は…」
何?何?悲劇と言えば…
「ただのじんま疹だったんだ……」
「えっ?」
「食生活を変えたらあっという間に治ってしまった」
「なんだとっ!💢じゃあ4分33秒の由来はっ?💢💢💢」
「ああ、ここはもともと『4分35秒』という名前のカフェだったんだ…」
彼は再び悲しそうな顔になった。
私は自制を取り戻し、再びおだやかに聞いてみた。
「2秒はどこにいったの?」
「…ここは最寄りの駅から歩いて『4分35秒』だったのでその名前にしたんだが、改装でドアの位置を駅寄りに付け替えたんだ。それで2秒早くなり…」
私は最後まで聞かずに無言で立ち上がった。
ドアに向かう途中、背後からすがるような声を聞いた。
「待ってくれ!頼む!最後まで聞いてくれ。2秒早くなったところでウルトラマンがたどりつけないことには変わりなく……まだまだ話は続くんだ!……聞きたくはないのか?」
私はカフェのドアを勢いよく閉め、力強く歩き出した。
未練も何も一切無かった。
(777文字。字数オーバー申し訳ないです😭せめてぞろ目にすることで…)
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