この中にお殿様はいらっしゃいますか?【毎週ショートショートnote】
創立記念日に必ず開かれる社長主催の管理職会での一コマだった。
社員4000人余りの一部上場企業の管理職80名ほどがコンサートホールのような会場に集められた。ともすれば平社員より管理職のほうが多いんじゃね?と思わせる職場が多い中、ここではバランスのとれた人事が行われていた。
訓示の後、〝匿名の社員からの投稿があった!〟と社長自らがそれを読み上げた。
「私達の職場には〝お殿様〟と影で呼ばれている管理職がいます。それにはこんな意味があります。部門では絶対的な権力を持ちながら平民ともいえる我々平社員に寄り添って下さいます。平民の職場環境や労働状況改善には熱心なうえ、トラブル発生時には白砂ともいえる真っ白な会議室で、公平で適確なお沙汰ともいうべき見事な判断をされるのです」
社長がここで一息をついた。
「この投稿の社員も部署も特定できないのだが、この中に我こそはこの〝お殿様〟!と思うものはいるのかな?手を上げて貰いたい」
集まった管理職全員の手が挙がった。
「そうか、これでは誰が〝お殿様〟なのか特定できんな?実は続きがあるんだ……」
社長は投稿の続きを読み上げた。
「そんな〝お殿様〟と関係が始まってもう長いことになります。深い関係になって気づいたのですが、優しいのは私だけでになく全女子社員に対してでした。その優しさというのも過剰なスキンシップを含みます。ただし私の事だけは特別に姫扱いをしてくださいます。また優しいのは女子社員に対してだけであって男性社員には指導と称して厳しいハラスメントともとれる行動を取ってることがわかりました。そしてお殿様の優れた問題解決能力は現在奥方様との離婚に向いているようです。私はその晴れの日を今か今かと待ちわびているところです」
社長が再び全管理職を前にして問いをした。
「この中にこの〝お殿様〟はいるのかな?」
すると全員が自分以外の誰かを指さした。
〝おお!管理職不適格者が3人もおったか……実はこの投稿、我ながら見事としか言いようのない出来だな〟
社長はにんまりとした。
〝来年は『大統領』でいくとしよう😁〟
(850字ぐらいです😭)
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