横断幕中耳炎【毎週ショートショートnote】
【ママ、結膜炎をぶっ飛ばせ!】
〝おおっと、横断幕が上がった!〟
サングラスの女性が応援席に向かって手を振る。
30代の男性と8歳ぐらいの女の子が手書きの横断幕を掲げていた。
世界一の主婦を決めるママリンピックが国立競技場で開催されていた。主婦力を競うのだ。
現在の競技は、陳列棚に並べられたおびただしい商品から最もお得な商品を選ぶ〝コノワスール無差別級〟だった。コノワスールというのは〝目利き〟のことだ。主婦力近代7種のうちの一つだった。
サングラスの女性は3位だった。
【ママ!中耳炎に負けるな!】
再び横断幕が上がり、サングラスの女性がやはり手を振る。
競技は、多くのノイズの中から子供の泣き声を聞き分ける〝リスニング〟の決勝戦での事だった。
サングラスの女性は惜しくも2位だった。
それにしても、結膜炎に中耳炎だなんていったいこの女性はどうしたのだろう。
注意していると、料理の匂いを嗅いだだけで作られてからどのくらいの時間が経っているか判断する〝スメリング〟競技の時には【ママ!鼻づまりに注意して!】の横断幕だった。
そして料理を一口食べただけで使われている調味料すべてを言い当てる〝テイスティング〟の時には【ママ!口内炎は無視!】の横断幕だった。
この2種目は残念ながら4位、6位入賞だった。
このサングラスの女性いったい何者なのだ!
まるで体調不良のショッピングセンターではないか!
だがついにサングラスの女性は見事、家族の応援に応えることが出来た。
ママチャリで隣町まで買い出しに行くタイムを競う〝バイク〟、世間をいかに上手に泳ぎ切るかということでウソの出来映えを競う〝スイム〟、高い重いといわれる某有名メーカーのハンディクリーナーを1kmもかけてその順位を競う〝ラン〟という3種目の主婦トライアスロンで見事に金メダルに輝いたのだ。
ちなみにこの種目では自称主婦を申告する主夫も現われたがこの大会ではエントリーは認められなかった。
そしてこの種目の健闘が功を奏して、とうとう総合でも表彰台の一番高いところに立つことができたのだ。
体調不良の中、この女性は彼女の家族、そして日本の誇りでもあった。
女性としてもつい先日行われたパリ五輪のリベンジも果たすことが出来た。
実はこの女性ママリンピックの直前に行われたパリ五輪のトライアスロンの日本代表でもあったのだ。つまり二つのまったく異なる競技をこなすボスウェイアスリートだった。
パリ五輪のトライアスロンでセーヌ川を泳がされたのがすべての体調不良の始まりだった。
(1000字前後で今回も失格!😭😭😭)
たらはかに様の毎週ショートショートnoteに参加しました!
今回の投稿で〝見たことのないスポーツ〟にもエントリーしようと思いましたがそれも周回遅れ……😭
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