トラネキサム酸笑顔【毎週ショートショートnote】
「じゃあ、あたしから。テストステロン!あっ〝ん〟がついちゃった……」そして笑顔。
「負けたからもう一度いくね……では、ピクリン酸。あっ、またもや〝ん〟」
彼女のニコニコが止まらない。やばい、何か企んでないか?
「どうしよう……あたしってセンスないな……気を取り直してシクロデキストリン!あっやっぱり」
いやいやセンスじゃなく、そもそも化学物質しばりで〝しりとり〟やろうって言い出したあんたやない?
「今度こそっ……ジブロモエタン!やっぱりだめか~。あと1回負けたら何でも言うこと聞くからね。リクエスト考えといてね」
あと1回だなんて。5回負けたら相手の言うこと何でも聞くってルール決めたのあんたですやん。しかも連続でなぜ自分からいきますのん?僕のターンが回ってこないのはわざと?
可愛い彼女だが腹に一物あるのは明らかだった。この時は彼女に対する不安でいっぱいだった。これだけは言える。彼女は僕よりはるかにIQが高い。
彼女とは付き合い始めて4年が経過していた。彼女は医大で脳内物質の研究をしている院生だ。そして彼女と一緒だからこそ霞んでしまうのだが世間的には僕だって負けてはいない。建築土木を専攻した大手ゼネコンのエリートサラリーマンだ。
「じゃあいくね!トラネキサム酸!あっ、また〝ん〟がついちゃったー。降参!なんでも言うこと聞くから!」満面の笑顔だった。
いや決して僕が勝った訳ではない。あんたが勝手に負けただけですやん。
そして、どこをどう操られたのかわからない。僕はこの時を境に彼女と一緒になった。そして僕はなぜか敗北感を感じていた。なかなか煮え切らなかった僕に対して彼女が手を打ったに違いなかった。
こうなる事は目に見えてた。
(706文字)
たらはかに様の毎週ショートショートnoteに参加いたしました。
むかーし昔のこと。私にはナースの彼女がいました。ある暇を持て余した時のこと、どちらかともなくしりとりをする事になりました。しかもお薬の名前しばりで。
「ノーシン」「アスピリン」「ケロリン」そして「正露丸」当時のお薬の名前はほぼほぼ〝ん〟がついてました。何を言っても瞬殺でしたが、2人はそれなりに楽しい時間を過ごしました。
さて、これが原因かどうかわかりませんが、2人は程なくしてお別れする事になりました……とさ。
とっぴんぱらりのぷう。