心お弁当【毎週ショートショートnote】
ここ数年、僕は料理にどっぷりはまってしまっていて最近では頼まれもしないのに同僚の女子社員のお弁当を作っていくまでになってしまった。
最初は気味悪がられたが、受け入れてくれた同僚もいた。
例えば量子さんだ。量子さんは大きな眼鏡をかけてほとんど化粧っ気もなく髪もぼさぼさだが整った顔立ちでスタイルは抜群だった。興味があるのは数字だけという典型的なリケジョだ。
そんな量子さんのお弁当の中心には必ず梅干だった。そしてここが重心と思われる場所には焼き海苔を三角に切ってマークをしておくのだ。見ていると彼女は食べる前に必ず人差し指の先端でその重心が正しいかどうかを確認している。ずれているときには食べながら調整している。このお約束がいたくお気に入りなのだ。
そしてもう一人はゴシップ好きの可愛い文春ちゃんだ。文春ちゃんのお弁当にはメッセージは欠かせない。今日は「ふじっこ煮」に「にんじんのガレット」と「くらこんの塩昆布」をメインに詰めた。
〝不二子妊娠!彼は部長!〟を意味するメッセージだ。社内政治には欠かせないガセネタだった。本日の夕方までには社内中に広まっているだろう。まったく文春ちゃんの歓心は買えるし一石二鳥の名付けて言えば話題の核心弁当だ。
こんなことをしていれば当然のこと。ケータリング君!とか仕出し野郎!とかいわれて陰口をたたかれているのは知っている。だって男子社員には作ったことがないんだから。
でもいい。自分でもわかっている。いままでもこれからもこれは下心弁当なんだってこと。それ以上でもそれ以下でもない…
(658文字)
たらはかに様の毎週ショートショートnoteに参加しました!
昨年秋から参加させていただきましたが今回が自分にとって一番難しいお題でした。なので無理矢理書いてしまいました。今週も参加できて良かったです😁