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無人島生活福袋【毎週ショートショートnote】

ようやく次の仕事が決まった。

もう短気を起こすこともない……

生来の喧嘩っ早い性分で数々の職場を追い出されてきた。だが今度こそ絶対大丈夫だ。短気を起そうにも相手がいないのだ。

オレが1週間後の移動に備えて生活物資をあさっていたときのことだ。

気がつくとオカルトショップと思われるおどろおどろしいものにあふれる店の中にいた。普段だったら絶対に足もとめないようなところだ。

「お待ちしておりました!」

「えっ?」

店の奥からゴスロリの衣装をまとった厚化粧の少女が現われた。美しい顔をしているが少年にも中年男性の様にも見える。店長か?

「あなたに必要なモノはこちらかしら……」

店長が奥に引っ込んだかと思うと紙袋を4つ抱えて出てきた。

「これは?」

「福袋……無人島の生活のためのね」

店長がカウンターに並べた紙袋にはそれぞれイラストが書かれていた。

一つ目の袋はどう見ても〝ドラエもん〟だった。いや微妙に違うような気がするがひと目で〝ドラエもん〟を連想させるものだ。中国の〝機械ネコ〟といったイメージか……

二つ目の紙袋はどう見ても〝ハクション大魔王〟だ。だがアクビ姫の代わりにピノコが書かれている。そしてよく見るとムーミン谷のメイもいる。一体どうなっているのだ?

三つ目の紙袋はまともだった。誰がどう見てみてみても〝打ち出の小槌〟の絵だった。

四つ目の福袋は〝大黒様〟だった。言い換えれば〝大国主の命〟だ。これもわかりやすかった。

〝なるほど!どれもこれからの生活に役立ちそうなものばかりだ……〟

「ところでこれらの福袋はいくらなんだ?」

店長は大黒様を指さして言った。

「こちら以外はすべて300万円で5%のポイントが付きます。こちらだけは現在セール中でしてポイントは付かないのですが本日だけの特別価格¥980となっております」

〝えっ?……何だその値付けは!これ買うしかないじゃないか……👍〟

「値段のほうはわかった。で中身なんだが300万のほうは何が入ってるか予想がつく。だが、この980円のほうは絵が抽象的すぎて……まさか大黒様が出てくるなんて事は……🤔」

店長はじと~とした目つきでオレを見て言った。

「これは福袋なんですよ。中身を言うわけ無いじゃないですか。サプライズが台無しになる……」

だが途中で考えを改めたようだった。

「ですがウチも今日中にこれを売り切りたい。よろしい……大黒様、言い換えれば大国主の命はさまざまな御利益をもたらしてくれる万能の神様です。いいですか?この福袋は購入者の願う事3つを叶えてくれるのですよ」

オレはすべてを聞き終える前に千円札を差し出していた。

〝3つの願いだって?ドラエもんとハクション大魔王と打ち出の小槌を願うに決まってるじゃないか。980円で900万のものが買えることになる。この店長は頭がおかしいのか……〟

「お買い上げありがとうございます」

店長はオレに釣り銭を渡すと何やら大黒様の紙袋をごそごそし出した。

見ていると紙袋からQRコードが書かれた紙を取り出し奥に引っ込んでしまった。そして5分ぐらいして再び姿を見せた。

「無事アクティベートが完了しました。今からあなたが心に描いた願い事3つが現実のものになります。瞬時ですからね。十分ご注意くださいね。このたびはありがとうございました。あっレジ袋はご入り用ですか?紙袋にレジ袋というのも何ですが……」

オレはイライラしはじめた。

〝そんなことどうでもいいから早くよこせって〟

店長は突然話しを止め福袋を差し出した。

〝うっやばい!不自然な動きだった……まさか〟

「ほら言ったこっちゃない。一つ目の願いが現実化してしまいました。でもあと二つありますからね。いいことを教えてあげましょう。このふたつの願いのどちらかであの3つの福袋のどれかを現実化すれば良いのです」

店長はオレにウインクして消えていった。

〝そんなんあの打ち出の小槌に決まってるじゃないか…残り二つのあのパチモン感というかなんちゃって感はちょっとヤバすぎる〟


オレは帰路を急いだ。

店を出た瞬間、野良犬に吠えられた。

ワンワンワンワン……

〝わっ!ビックリした!あっち行けって…〟

犬は瞬時に50mほど遠くにいってしまいオレは激しく後悔した。

〝二つ目を使ってしまった……〟


こんなことなら早くあの小槌を現実化した方が良い。落ち着いてから事を進めようと思っていたがそうも言っていられない。何が起きるかわからないのだ。

ここでハタと思った。そういえばあの打ち出の小槌なんだがあれを特定するのには何が必要なんだろう。福袋の商品名か?あのイラストを思い浮かべるのか?なにか型番のようなものがあるのだろうか?

〝あの店長に聞いとけば良かった……😭〟

おれは急いであの店に戻った。

ところがあにはからんや店は「Close」になっていた。

店を出てから5分も経ってない。オレはドアを叩いたり大声を出してたりしてみたがいっこうにドアが開く気配も、店長が出てくる気配もない。

途方に暮れかけたがオレだが、ふとあることを思いついた。最高のアイデアが降りてきたのだ。そしてその時はその最高が最悪であることに気づいてなかった。

オレは〝オカルトショップの中にいて店長が出てくるのを待つ光景〟を心に描いた。すべて福袋購入前の状態を再現すれば良いのだ。

そして心に描いた光景はすぐさま現実化した!

〝ああ良かった……✌️〟

ところがそれは悪夢の始まりだった。


タイムループの始まりでもあった。


(😭😭😭)


























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