たまには実績について話す② "長瀬有花/SEEK"
過去のお仕事・制作物を振り返ってみよう、第2回目。
今回は、RIOT MUSICさま所属のアーティスト・長瀬有花さんによるコンセプトライブ・「SEEK」という企画にあわせて制作させていただいたものについて書いてみる。
※「実際のライブがどういったものだったのか」については、ぜひインターネットを探索していただくといろいろ見つかるはず。
オーダーいただいたものとしては、以下の5点。
テーマフォント選定
フライヤー(チラシ)
リングノート(楽譜ノート)
ステッカー【5種】
CDパッケージ
※制作したものは、当時発売された『オリジナルCD付き豪華セット』として販売された。現在はすでに完売(おめでとうございます)。
はじめにやったこと
テーマフォントの選定後は、まず「なにかモチーフを作れないか」ということを考えていった。最近の自分はデザインでなにか迷うとき、こういう手法で突破していくことが多い。
長瀬有花さんというアーティストは、「二次元と三次元を行き来する」という存在。過去に行われた「Alook」というライブでは、バーチャルとリアル・2つの姿でパフォーマンスを行い文字通り【行き来】する内容となったが、今回のライブでは「全編三次元」で行われるという。
というわけで(いろいろあれこれ考えて)、「跨ぐ」という行為を想って作成したのがこちら。
ちなみにライブ「SEEK」開催前には公式側から多くの【暗号】がインターネット上やコンビニプリント等にて放たれ、ファンの方々の間ではその解読・考察が行われていった。その多くは文字列の【暗号】で、それが一体どういう意味なのかを考え、その意味を探索していった。
そんな中、このモチーフ・記号にも関心を示してくれる方も見かけた。嬉しい限りである。
そんな方々をがっかりさせるかもしれないし、デザイナーとして参加しておいてこんなことを言うのも良くないが、実は「こういう意味です!」という明確な正解は作っていない。自分としては「次元を跨ぐ」ということを2本の線で再現してみただけで、それをどう捉えるかは任せてしまった。
ぱっとこれを見たとき、「こちら側に来た」か「向こう側に行った」か、もしくは別の行為か……? 捉える人によっていろんな意味が見えてくるものとして作り、考えてもらおうということに繋げた。自分としては、これも「SEEK」の一種なのだという思いで。
続いて、実際に作った制作物について振り返っていく。
フライヤー
方向性を「フォント選定」というかたちで提示させていただいた後、最初に着手したのがフライヤーだった。パターン数としては10種ほど作成。
使用しているお写真は、一度自宅にて写真用紙にフルカラー印刷したものを、再度スキャナーで取り込んだものを使っている。
古紙っぽい用紙を使いたいというのはプロデューサー陣からのアイデア。
リングノート
リングノートの表紙には、他グッズやデザイン物に採用された・されなかったものを含めていろんな要素を入れ込んだ。ぱっと見てよくわからない、けど間違いなく長瀬有花さんのグッズ。そういうものが作りたかった。
ちなみにこういったノート、自分は全く手を付けずに袋に入れて保管してしまう側の人間である。ノートとして生まれてきたのに……とたまに真剣に考えるが、なかなかどうして難しい。
ステッカー
ステッカー5種の方向性は、プロデューサーさま側から提示いただき、それを自分なりにかたちにしていく作業となった。
文字のみで構成したステッカー(写真右上)は、「S」「E」「E」「K」部分のみが透明で、貼られる側の素材や色によって見え隠れするという仕掛けを作った。「よく見ると分かる」くらいが良いと信じた。
1点だけ、もらっていたオーダーを半分無視して作ったものが、写真右下のコミック調のもの。前述の通り、長瀬さんは次元を行き来する存在なので「漫画次元に来てしまった長瀬さん」として作ってみた。
(自分もそうだが)ステッカーは保管しがちになるが、ぜひパソコンやスマートフォン、キャリーケース等に貼ってほしいと思い「貼りたくなるもの」を目指した。
ちなみに、本当にステッカーだらけのキャリーケースが当時販売されていた。
CDパッケージ
当時販売された『オリジナルCD付き豪華セット』の購入者のみゲットできた、CDパッケージ。自分にとっては、はじめてのCD媒体に関連する実績となった。
提供いただいた写真が大変素晴らしく、ロゴやタイトルすら入れたくないほどに写真を見せたかった。レコードジャケットサイズで欲しい。
フライヤーと同様、こちらもデジタルデータをフルカラー印刷→スキャンしたものを使用。
もともと収録楽曲やアーティスト名の表記も入れていたが、最終的にはそれすらも排除し、フライヤーデザインと対になる半円、アーティストロゴ、「跨ぐ」モチーフのみを入れるシンプルな案で進めることに。ここに落ち着くまでにはパターンとしては8案ほど作成した。
歌詞カードの歌詞の文字組みにもかなりこだわった。楽曲を聴きながら眺めるものなので、リズム感を意識した少し変わった組み方をしている(実物を持っている方には伝わっているだろうか)。
個人的な話
普段Webサイトを作るお仕事が圧倒的に多い自分に、こういったお仕事を任せていただいたのはとても貴重だったし、何よりものすごく嬉しかった。
特にステッカーについては、個人的に(主に同人グッズとして)昔から作っていたものだったので、このタイミングで初めて「商品」としてのお仕事ができてとても感慨深いものがあった。
反省点
作業中に手を動かしていると、「アーティスト本人、そしてファンがどういう体験をしてくれるかをしっかり意識する」ということをふと忘れてしまうことがあった。それは、ビジュアル的に自分好みなものが意図せず誕生してしまったときである(デザイナーあるあるだろうか、それとも自分だけだろうか)。
時間を置くと気づくのだが、つい「良いのが出来たぞ!」と案を提出したあとに「やっぱりそれ撤回します……」と自らボツにしてしまうことがあった。これはかなり大きな反省点である。「わあい!」とバンザイしてしまうような案が生まれたとしても、常に冷静でいたい。
雑談
「姉の結婚式までにダイエットを成功させる」、失敗した。