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神0話「女神と魔王」③ #4

 〈  カタルシス編  -  前半  〉

あれから、天空界は、3年がたった。
(人間界は、300年がたった。)

神の国(天空界)の王宮から、39000kmほど、離れたギリシャのミクロスという小さな街がある。そこに住んで3年になる、とある家族がいた。

街の外れで、白の部分と、黒の部分が入り交じった翼をパタパタと動かしている、薄紫色の髪の長い少年3歳が、

「おかあさん! みて! つばさがはえたよ!」

母親であるアテネが、それをそばで見て、思わず飛び出し、少年を抱き寄せ、両手で頭を、髪の毛がグシャグシャになるまでとても撫でながら、言った。

「よかったわね~! リンネ~!」

一緒にそばにいた、父親であるサタンも、それを見て、成長を噛み締め言った。

「3歳でもう翼が生えたのか! 早いな!」

少年、3歳のリンネは、親に褒められて、照れた。

「えへへ!」

そう!アテネ(女神)と、サタン(元魔王)は、子供を産み、神、悪魔、人間、どんな種族でもその者を救い出す光となるように「リンネ」と名づけられ、子育てをしていた。
ゼウスの言った条件を守り、神の国、天空界で、家族3人暮らしている。
だが、サタンにとって天空界の空気は、どうしても有害である。だから、天空界で唯一、日当たりが少し悪く、影になる時間が比較的多い、ここミクロスの街の外れを探し出し、そして、住むことを選んだのだった。

リンネは、パサパサ!パサパサパサ!と、羽を動かし、飛んでみようとしている。

そのリンネの行動を、そっと見守る、アテネとサタン。
そこへ、王宮がある方向の空から、声がした。

「アテネ姉さーん! サタンさーん! ちょっといい?」

そう呼ぶのは、アテネの弟、アレスである。

アテネは、「はーい」と返事をし、リンネと同じ目線までしゃがんで言った。

「ちょっと行ってくるわね  !  ここで、 お利口さんに待っててね 」

リンネは、元気よく返事をした。

「わかった  ー  !  」

そして、アテネとサタンは、 アレスのいる空中へ、翼を使い、飛んで行き、去っていった。

その後、リンネは、1人で、翼を使って飛ぼうと練習を頑張っている  !  。

すると、そこへ。ミクロスに住んでいる。リンネの家の近所の神2人と、天使たち3人がやってきた。その神と天使たちは、14歳くらいの年齢である。

リンネは、(パタパタパタパタ)と飛ぶ練習をしていた。そのリンネの近くにわざとらしく行き、近所の神々と、天使たちは、ガッツリ聞こえるような声のボリュームで、話し始めた。

「なんなの  ?  その羽  !?  」
近所の神々の1人が、汚い物を見たように、大きな声で言った。

と、それに乗っかるように、わざとらしく天使たちも言い出した。

「白と黒が混ざった翼  ??  !!  」


近所に住む神が、黒が悪だと思い込み、また、汚い物を言う言い方で言った。

「穢ったない   !  浄化しなければね  !  」

「浄化するも何も、この子、 魔王の子ですよ ?  」

と、天使たちは、悪ノリを始める。

近所に住む神2人は、ケラケラと笑いだし言う。

「あら  ~  そ  ー  だった  !  浄化しても無駄じゃん  !  」

近所に住む神の内、1人が、突然リンネの翼を乱暴に鷲掴みにし、持ち上げた  !  。

「こ  ー  んな翼じゃあね  ~  」

「アテネ様が可哀想だわ  !  」

かぶせるように、近所に住むもう1人の神がそう言った。

リンネの前で、誰もいないことをいいことに言いたい放題、やりたい放題し、ケラケラと笑い声が大きくなる近所の神々と天使たち。

突然、焦ったように天使の1人が、怒鳴った  !  。

「何触ってるのですか  ?!   穢れますよ  !!  」

リンネの翼を鷲掴みにし、持ち上げていた近所に住む神が、急いで、翼から手を離し、

「いやー  !!   誰か浄化して  !!  !!  」

と、腰を抜かし、叫んで逃げ、暴れ出す。

するとリンネは、相手にしないでおこうと考えていたが、とうとう口を開いてしまった。

「おまえらだれ  ?  」

可愛いらしい見た目をした少年なのに、あまりの口の悪さに神々と天使たちは、驚きの表情を見せ、言葉を吐く  !  。

「この子  !  口が、悪いですわ  !!  」

「あら  !   ヤダ、穢らわしい  !!  」

リンネ、今度は、可愛い顔でニヤケながら神々と天使たちを見て言った。

「ん  ?   なにが  ?  おまえらが、 きたないよ  !  」

そう言われ、近所に住む、神々と天使たちは、怒りを込み上げ、大きな声で言った。

「きたない  ?!   なんですって  !!  」

リンネは、からかうようにヘラヘラと笑いながら、天使や神々の周りをクルクル走り出し、

「ごめんなさい~ 。あっ、まちごた  !!   おまえらくず  ?  」

と、いきなりピタッと止まり言った。

天使たちは、それに腹を立て、苛立ちがヒートアップした。

「クズ  !?  !!  」

神々や天使は、腹を立てヒートアップすると共に、近所に住んでるからこその日頃の不安や、恐怖があり、それをぶつけ始めた。

「魔王の子  ?  。元魔王  ?  。
そんなのが、この世界にいること自体、私たちは恐怖よ  !!  それに  !   この世界、神聖である天空界が穢れるのよ  !!  あなたの存在が  !!   その穢い翼が  !!  邪悪な悪なのよ  !!  ...  わかっているの  ?!  」  

と、激怒した   !!  

天使たちも、近所に住んでる為、神々に共感、賛同し、無意識に口が開いた。

「そうだ  !  浄化しないと  ...  」

それを聞いた、近所に住む神々2人は、良い考えだと、狂ったように真顔で言った。

「そうね  ~  !  浄化してあげましょう  !  」

この時、天空界に住む神のはずなのに、表情がまるで悪魔のように怖く、天使たちもその神々を見て、行動を開始した。

「あなた  !  ちょっとこっちへ来なさい  !!  」

とリンネを呼ぶ。

リンネは来ない。なので、天使たちは、無理やりリンネの腕を引っ張り、肩を突きとばして、尻もちをつかせた。そして、そのリンネを瞬時に囲み、リンネの翼を 神々と天使たちは、何度も強く踏み始めた  !!  。

リンネは、横たわり、痛がり、苦しむ。

「うわ、いたい  !   やめて  !」

と、叫んだ。

だが、近所に住む神々と、天使たちには、リンネの声は聞こえないし、止めようともしない。止める人もいなかった。

むしろ、これが浄化だと、神として相応しいことをしていると思い込んだ行動なのだった。

「この翼は、悪よ  !  穢い  !!  」

「だから、私たちが、 浄化してあげるのよ  !!  光栄に思いなさい  !  悪魔  !!  」

と、まで言った。

翼を踏みつけ行為は、どんどん力が増し、憎しみを込めるように踏み方も様々になってくる。
そんな時  !!  。リンネの翼から、 (ボキ  !  ボキッ  !!  ) という骨が折れたの音がした …  ...

リンネは、悲鳴を上げた。

「うっ  ...  うあっ  ー  !  …  」

その音もリンネの苦しむ声にも、気づかず、踏みつけ行為を続ける近所の神々と、天使たち。

「やめろ  !!  !!  」

と、何とか、抵抗するリンネだが、それを許さない近所の神々と天使たち。

近所に住む神々の1人が身動きが取れず、もがくリンネに言葉を浴びせる。

「あなたが悪いのよ  !   反省なさい  !  」

リンネは、嫌になり、耳を塞ぐ、そして言った。

「わかった、くずさん  !   ごめんなさい  !   くずさんたち  !!  !!  」

天使たちは、もう戻れない。

「えっ  ?!  なんですって  ??  」

ここで、近所に住む神は、足に力を込め、思いっきり、言葉にも力にも込め、言った。

「まだまだ浄化が必要みたいね  !  」

近所に住んでる神々と天使たちは、リンネの翼、踏みつけ行為を止める気配は、一向にない。
リンネの黒と白が混じった翼は、見る見るうちに羽が複数 抜け落ち、散らばり、ボロボロになっていく。

リンネは、悲鳴をあげ続ける。

「わぁー あっ  !   うっ  !   あ  ー  !!   やめろ  」

近所の神々 天使たちは、足だけにとどまらず、
(ボカッ) 蹴ったり、(バシッ) 叩いたり、(ズシャー) 爪を立て引っ掻いたり、してきた。

リンネは、とうとう、涙目になり、

「やめて  !  、いたい  !  ...  ...  助けて  !  」

と言う。

近所の神は、リンネ言葉  助けて  !  を聞いた途端、目を輝かせ言った。

「助けて  ?  いいわよ  !  助けてあげる  !  」

天使たちは、

「浄化しないとですね  !  この穢い翼  !!  」

と言い、(ガシッ)と、リンネをおさえた  !!  

天使、3人に、手足を地面に拘束され、身動きが全くとれないリンネの周りに結界まではられた。

すると、近所の神、2人は、力を合わせ、

「翼を崩壊しなさい  !  エデン  !  

【  カタルシス  !!  】 」

と、神力(エデン)をリンネにぶっぱなした。

エデンとは、神が遣う力のこと。
この近所に住む神は、強いエデンはあまり遣えず、神ならば、誰でも出来る能力、浄化(カタルシス)を遣ったのだった。
【  カタルシス  】は、遣う神によって、威力が変わるが、まだ、なんの為にエデンを遣うのか分かっていない、未熟者の神2人が力を合わせたエデンは、それなりに脅威な威力になったのだ。

その為、リンネの翼は、(  バリ  !   バキバキバキバキ  !!  )と音をたて消えた。

その消え方は、キラキラと粉々になって空中へ舞い散った。

リンネは、今まで聞いた事のない悲鳴を叫んだ。

「  うわぁっ  ー  ー  ー  あ  ー  ー  ー  ー  あ  ー  !!  !!  」

リンネの翼は、跡形もなく崩壊され、金赤色の血が、背中を流れる。

粉々に舞散ったリンネの羽たちは、太陽の光が当たると、キラキラと綺麗にひかり出し、それはまるで、宝石のような輝きを見せた。

これを見た、近所の神々は、嬉しく思った。

「まぁ~ほら  !   浄化されたわ  !  」

天使たちは、その光景に見とれて言った。

「綺麗  ~  」

リンネは、意識が遠のき、気絶した。

と、そこへ、
遠くの方から、アレス (アテネの弟)とアテネとサタンの話し声が近づいてくるのを感じた。

リンネ達がいる、真上くらいで止まり、少し立ち話を始めた。

「姉さん、サタンさん、 ありがとう  !  」

アレスは、お礼を丁寧にした。が、

アテネは、言う。

「いいけど  !   なんでこんなことで呼ぶの  ?!  」

アレスは、アテネの無神経な発言に、驚き、少しキレぎみで言う。

「えっ  ?  こんなこと  ?   大事な事だよ  !!  」

その2人を止めようと控えめに入るサタン。

「まぁまぁ  !  」

アレスとアテネは、留まった。
口喧嘩が始まりそうになったついさっきのことを忘れたように、切り替え、アレスが笑顔でアテネに言った。

「ねぇ、姉さん  !   リンネ君と会ってから帰ってもいい  ??  」

アテネは、嬉しそうに答える。

「あら、いいわよ  !   きっと、リンネ喜ぶわ  !!  」

「やった  ー  ー  !!  僕も喜ぶよ  ー  !  」

アレス、無邪気に喜んだ。

サタンは、その2人の会話を横で聞き、微笑んでいた。

そして、3人は、リンネのいる所へ降りてこようと、移動し始める。

その近づいてくる声に近所の神々と天使たちは、
気づき、魔王の凄まじい気配にも気づいた  ! そして、怯える 。

「まずい  !   魔王が来ます  !!  」

近所の神2人は、焦り、慌てる。

「逃げなきゃ  !   殺される  !!  」

近所の神2人と、天使2人が急いで逃げようとしている中、1人の天使が、ピクリとも動かないリンネを見て、疑問に思う。

「ねぇ  ー  !  この子、 死んでないですよね  ?  」

近所の神々は、答える。

「私達が、殺すわけないでしょう  !   そんなのするのは悪魔よ  !  …  ほら  !  早く行くよ  !!  魔王が来たら、あたしらが殺されちゃう  !!  」

近所に住む神々と天使たちは、そう言い残し、慌てて飛んで、その場を去って行った。

そして、アテネとサタン、アレスが、戻ってくる。

アテネは、お利口に待っているであろうリンネにサプライズな気持ちで、降りてくる。まだ、空中にいる段階で話し出した。

「リンネ  ~  ただいま  ー  !  あなたの大好きなアレスが遊びに来てくれたわよ  ~  」

言葉が終わると同時に地面に足をつけた。
すると、すぐ、悲惨な状況を目に突きつけられた。

アテネは、翼で飛ぶ練習をしていたリンネとは変わり果てた姿に驚いた。
背中からは、血が流れ、翼がどこにもなくて、気絶して、倒れているリンネに気づいた。

アテネは、涙を浮かべ、リンネを強く抱きしめ、ショックや色んな感情が入り交じり、

「リッ  ...  リンネ  !!  !!  どうしたの  !!  何があったの  ??  」

と、言葉をこぼした。

【続く】

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