日本の格闘技と切り離せないPFLのBellator MMA買収騒動~格闘技コンテンツを提供し続ける難しさ~
最近の格闘技業界は常に話題が絶えませんね。
日本国内では、K-1が世界的コンテンツへと復権するために体制を一新し、QUINTETと資本提携を結び、キックボクシングだけでなくONEのような様々な格闘技のプラットフォームのようになって本格的な格闘技を見せてくれると思えば、K-1“ガールズ”と世界進出に関する意見交換会を行ったというキャバクラの接待のような写真とともにX(旧Twitter)に投稿されるというツッコミどころ満載の話題を提供したり、RIZINではRIZIN.44で金原正徳がクレベルコイケに大金星を上げて実力者同士のThat’s MMAという試合を見せたかと思えば、RIZIN LANDMARK6 in NAGOYA大会直前まで朝倉海vs皇治を組もうとしたという安定のRIZINクオリティを魅せてくれたりと常に団体や選手がSNSを中心に話題を作ってくれています。
世界で見ると、ONE Championship CEOのチャトリ氏が武尊選手を獲得し、話題を与えたり、夢の対決という妄想を我々に抱かせたと思えば、各方面にチャトリ節全開の毒舌っぷりを見せて時に格闘技ファンを不快にさせてみたり、青木真也選手の久しぶりの復帰戦が、マイキー・ムスメシのスイカによる食中毒になるわ、計量ミスが2,3度あるわで試合を迎えるまでに二転三転する事態が起こりました。MMA市場No.1で圧倒的・世界的人気を誇るUFCでは日本の格闘技ファンお馴染みのマネル・ケイプが何度目かの試合について変更があったり、ショーン・ストリックランドがいきなりのタイトルマッチ挑戦のチャンスでかつてのミドル級絶対王者で前試合で王座に返り咲いたイスラエル・アデサニヤを打撃で効かせて判定勝利で沈め、ワンチャンスをモノにするなど、MMAの試合に関する話題が中心となっており、国内とは違った話題の提供の仕方が行われていて、個人的にはUFCのような話題の提供の仕方こそ目指すべきなのではないかなとは少し思う所はあります。(笑)
格闘技の話題について書きたいことを書いていたら、すっかり前置きが長くなってしまいましたが、今回はMMA市場における大きな話題と言っても過言ではない、PFLのBellator MMA買収騒動について色々話していきたいと思います。
PFL・Bellator MMAについて
今回の騒動について色々話す前に、まずは今回話題について話す上で重要になる2つの団体について自分が調べた範囲ですが、解説したいと思います。
・PFL (Professional Fighters League)
PFLは、2012年にNBC Sports Networkとテレビ契約を結び創設されたWorld Series of Fighting (WSOF)という前身の団体の株式をMMMAX Investorsが獲得し、支配権を獲得したことで名称変更されたMMA団体で現在UFC(Ultimate Fighting Championship) 、Bellator MMAに次ぐ大きなMMA団体で、かつてK-1で活躍したレイ・セフォーが社長を行っていたり、最近では石井慧選手が出場するなど日本の格闘技界にも意外と関係している部分のある団体です。最近では、前UFC世界ヘビー級王者のフランシス・ガヌーがPFLと契約するという大きな話題も作りました。
PFLの一番の特徴はシーズン制を採用している事です。
UFCやBellator MMA、日本国内の団体など基本的にランキング制度を採用している事が多い中、他とは違う制度を採用しており、他とは違う面白さがあります。日本のMMAファンには、そこまで周知されているかと言われると微妙ですが、ここ数年で急成長をしており、日本人選手も出場しているので今後目を離せない団体になっていくと思います。
・Bellator MMA
Bellator MMAは2019年12/29のBELLATOR JAPANや2022年大晦日(12/31)のRIZINvsBellator対抗戦、今年2023年7/30に行われた超RIZIN.2など、日本国内最大の格闘技団体・RIZINと協力関係にあるアメリカや世界的に見てもMMA市場で2番目と言われるMMA団体で、RIZINを見ている方は知っているのではないでしょうか。
BellatorにはRIZIN出身選手が多く、第7代Bellator世界バンタム級王者にもなった「史上最強のMade In JAPAN」・堀口恭司選手やBellator世界女子フライ級3位の渡辺華奈選手、RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2019優勝者で現在Bellator世界ライト級3位の「コーカサスの死神」・トフィック・ムサエフ選手、RIZINヘビー級トーナメント2015に出場した第7代Bellator世界ライトヘビー級王者・ワジム・ネムコフ選手といった強者が活躍してます。
逆に、Bellatorの選手が他団体で活躍している事もあり、現在RIZIN世界バンタム級王者でBellator世界バンタム級王者になった事もあるフアン・アーチュレッタ選手やTUF(The Ultimate Fighter) Season31でコーチを務め、UFC史上初の2階級同時王者・コナー・マクレガー選手とUFC300で対戦の噂のあるマイケル・チャンドラーも元Bellator世界ライト王者とUFCに負けず劣らずの実力を持っています。
PFLのBellator MMA買収とその経緯
2023年の年明けからBellator MMA代表・スコット・コーカー氏が資金難で身売り先を探している、市場に売り出すのでは?というのが、アメリカのスポーツ記事等で明らかになりました。身売り先に関しては、UFCやPFL、はたまたあの元UFCライト級王者で29勝0敗という完全無敗でかつ王者のまま引退した伝説のMMAファイター・ハビブ・ヌルマゴメドフが買収するといった噂が立ちました。しかし、UFC代表のデイナ・ホワイトは以前よりBellator MMAの買収については「Bellator MMAを買収することに価値はない」と完全に否定をしており、ハビブ・ヌルマゴメドフについては特に目立った動きが見られませんでした。 (調べた限りですが…)
そこから暫く音沙汰がないまま月日がたった9月ごろにPFLがBellator MMAと契約し、買収していると報道されました。そして、10月に入ってPFLが完全にBellator MMAを買収した事、加えてBellator MMAの運営・団体の今後についての報道がされ、買収してからの数年はBellatorの運営を継続すること、Bellator MMAの運営の首脳陣がBellator300をもって退陣する事が明らかになっています。現在、契約下にある多くのファイターが今後どうなるかについては不透明になっており、元Bellatorフェザー級・ライト級の2階級同時王者のパトリシオ・”ピットブル”・フレイレはUFCへの挑戦を考えており、この事から、他のタイトル保持者や実績のある選手も買収に伴うPFLへの移籍という選択肢を選ばず、フリーエージェントとしてPFL以外の他団体に移籍する可能性もあると考えられます。
実は日本の格闘技にも影響が…
Bellator MMAの買収に伴って、実は日本の格闘技、特にRIZINにおいて一つ問題が生じるのです。それは、RIZINに参戦しているBellator選手との契約問題についてです。
これまでRIZINにBellatorの選手が参戦する、あるいはBellatorにRIZINの選手が参戦する際には、Bellator MMAとRIZINの間で話をした上で団体との契約等が行われてきました。ただ、これはRIZINとBellatorの強い協力関係があってできた事やRIZINはあくまでFEDERATION=連盟であるが故に出来たことで、普通ではありえない事です。しかし、今回Bellator MMAがPFLに買収されたことで恐らくこれまでのような契約はできない・難しいのではないかなと思われます。
その要因としては、1つはPFLとの関係性がないという事。
RIZINがBellatorと対抗戦をしたり、自団体の選手を送り出す・迎え入れることができたのは長い年月をかけて信頼関係・協力関係を築いてきた賜物であり、共同開催した大会の運営もそれなくしては出来なかったと思います。そういった点でこのような両団体に参戦するような契約は難しいと思われます。
もう一つは、ファイトマネーの問題です。
PFLがBellator MMAを買収できる背景には、富豪や投資家、大手スポンサーによる手厚い資金援助にあります。仮に、Bellatorの契約下にいる選手のほとんどが正式にPFL所属となった場合でも、定期的な参戦を行っても高額なファイトマネーを支払うことが出来るでしょう。特にAJ・マッキーやピットブル兄弟、セルジオ・ペティスなどのBellatorの有名選手は一試合辺りのファイトマネーはかなりの高額になるはずですから、長期的な契約をしても全く不安がなく、選手が納得のいく金額を提示できると思います。
しかし、RIZINはそこまでの資金力はなく、現在Bellator所属でRIZINに参戦しているフアン・アーチュレッタ選手や堀口恭司選手を定期参戦させるので精一杯だと思います。恐らくBellator選手はBellator参戦時と同程度の報酬は求めると思うので、それを考えると、他のBellator選手をRIZINに参戦させるのは難しいと思われます。仮にRIZINに参戦するとしたら、元々RIZINで戦っていた選手(トフィック・ムサエフ選手や渡辺華奈選手)やフアン・アーチュレッタ選手のような日本の格闘技に憧れを持っている選手じゃないのかなと思います。
個人的に危惧している事
この買収騒動によって個人的に危惧している事として、仮にBellatorの選手がRIZINに定期的な参戦をすることが決まり、契約に至った場合、日本の格闘技界の人気や注目度が落ちてしまうのではないかと思っています。
その理由としては、これまでのRIZINは”RIZIN”という箱庭の中で物語が作られてきて、その中で朝倉兄弟であったり、平本蓮といった人気選手が生まれ国内での人気を集めてきました。しかし、ここ数年で日本の格闘技ファンの需要が変化してきており、これまでは”人気選手の勝つ試合が見たい”というものだったのが、”実力で魅せる試合が見たい””誰が一番強いのかを見たい”というものに変化してきたとともに、RIZINのレベルが露呈されてしまった事で、海外の強豪がいきなりドカッと入ってくるとなると、これまでの構図が崩壊し、格闘技のライト層のファンが離れてしまう可能性が高くなるのではないかと個人的に考えています。しかし、これはあくまで可能性であり、国内のレベルが上がったり、我々ファンの見る目が肥えてくる事でその心配はないのかなとは思っています。
ファンの求める格闘技コンテンツを提供し続ける事の難しさ
Bellator MMAが今回買収されたという事ですが、改めて格闘技のコンテンツを提供し続ける事の難しさを思い知らされる騒動だったなと感じました。
正直、自分もここまでの状態にある事は最近まで知らなかったですし、あそこまで大々的にRIZINとの対抗戦や超RIZIN.2を共同開催していたので、問題なく運営が出来ていると思っていた分、尚更この業界で団体を運営することは難しい事なんだなと思いました。
日本国内でも、大きな団体が経営難や資金難で活動終了することもあり、世界中を熱狂させ、今のMMA人気の基盤を作り上げ、そして世界中の格闘家に夢を与えたPRIDEもUFCに売却しましたし、DREAMやSRC (戦極)も経営難から活動を休止しました。
正直、長きにわたってMMA市場はUFCが圧倒的知名度と人気を持ち、一人勝ちしている状態にあります。その背景には、潤沢な資金力だけでなく、WFAやPRIDE、WEC、Strikeforceといった魅力のあるコンテンツを買収し、それを遺憾なく使いこなしているからなのではないかと思います。他団体からすれば、それを超える団体にすることは絶望的な事ではありますが、他の団体はその中でもファンやスポンサーを獲得し、そしてそのファン達が求める格闘技コンテンツを提供するとともにスポンサーが資金提供して良かったというコンテンツを作り続けないといけないのです。
そのためには、UFCとは違ったものを提供することやRIZINのように実力者同士のカードや独自性のあるカード、想像を超えるようなカードなど手を変え品を変えて提供する事が我々が思うよりも重要な事なのかもしれませんね。
最後に
実は今回、初めてnoteを書きまして、とにかく読んでいて何を言いたいのか分からないことがかなりあるのではないかと自分で書いていて凄く思います(笑)
更に言えば、今回の記事ではかなり不確定要素もあったりするので、自分のサーチ不足や情報の間違いもある可能性がありますが、それはご了承ください。
自分がその時その時思ったことや調べた事を書いた結果なので、「なんか変な奴がなんかつらつら書いてるなぁ~」程度に思っていただけるととてもありがたいです(笑)
今後も暇なときに、自分の好きな事(恐らく格闘技の事がメインにはなりますが…)を書いていけたらいいなと思います。
では、また。