【the pillowsギター機材まとめ】真鍋吉明の使用エフェクターについて(前編)
今回はthe pillowsギタリスト真鍋吉明さんの現在・過去に使用するエフェクターについて解説していきます。
音にこだわる真鍋さんらしく、これまで数多くのエフェクターを使用してきたため、前編中編後編に分けて解説していく予定です。
今回は主に真鍋吉明サウンドの要である歪みエフェクター(ブースター除く)について解説していきます。
なお、こちらについても筆者が確認できた最も古い情報は2001年のものなので、こちらでは2001年以降の音作りについての解説になります。
筆者が確認できた情報は以下の通りになります。
2004年:雑誌インタビュー記事(2冊)
2006年:バンドスコア
2007年:バンドスコア
2008年:バンドスコア
2009年:ネット記事、バンドスコア、雑誌レビュー
2010年:ネット記事
2011年:バンドスコア
2012年:雑誌インタビュー
2013年:本人youtube、ムック
2014年:バンドスコア
2016年:雑誌インタビュー
2017年:雑誌インタビュー
2018年:雑誌インタビュー、ピロウズ公式Twitter
2019年:リペアショップ「funk ojisan」Twitter
2023年:ファンクラブブログ
2024年:ライブ会場現地
そのため、これ以外の年については不明なため予めご了承ください。
⓪基本的な音作りの考え方
真鍋さんもボーカルのさわおさんと同様、アンプはクリーン〜クランチに設定し、エフェクター中心で音作りをしている。
基本的に①オーバードライブ・②ディストーション・③ファズの3種類を曲やメロディに応じて切り替えて使用している。
加えてそのあとに④マルチエフェクター等を接続し、モジュレーション・空間系エフェクトを足している。
これを基本とし、時期によってまちまちだがこれらの前後や間に
⑤ラインセレクター・ジャンクションボックス
⑥イコライザー・ブースター
⑦コンプレッサー
⑧ワウペダル
を接続している。
長らく真鍋さんは上記の歪みエフェクターの切り替えには⑤ラインセレクターを用いて
Aループ:オーバードライブ→ディストーション
Bループ:ファズ
というように切り替えていた。
詳しくは後述するが2018年頃にマルチエフェクターを導入してからは、各歪みをマルチのセンド・リターン端子に接続し、マルチを介して各歪みを切り替えている。
次は各歪みエフェクターについて紹介していく。
①オーバードライブ編
⑴BOSS BD-2 ブルースドライバー(1997年?〜現在)
こちらはさわおさんも使用しており、以前の記事(山中さわお使用エフェクター)でも紹介したため、そちらも参照してほしい。
真鍋さんのトレードマークとも言えるオーバードライブ。
2017年のギターマガジンの特集にて、「97年頃入手」とあることから、この年から使用と推察。
以来、ボードから外れることはほぼ無く、現在までずっと使用されている。
ちなみに2017年当時のセッティングは以下の通り(下画像)。
2007年アルバム「wake up! wake up! wake up!」の頃には、異なるセッティングのBD-2を2台使用していた(同アルバムバンドスコア機材紹介より)。
⑵MXR M115 ディストーションⅢ(2008〜2012年?)
本機はカテゴリーとしてはディストーションだが、ディストーションという割に歪まずオーバードライブに近いため、こちらで解説する。
2000年代よりリリースされているMXRのペダル。現在も販売中。
その名称から、MXRの有名ペダル「distortion+」に近いのかと思われがちだが、サウンドは大きく異なる。
どちらかと言うと中域に寄ったサウンドが特徴。
2008年アルバム「PIED PIPER」〜2011年アルバム「HORN AGAIN」のバンドスコア機材紹介で使用確認できる。
その後、2012年末からの真鍋吉明ソロ活動の時点ではボードから外れているため、2012年アルバム「トライアル」の頃まで使用されたかと。
⑶Barbarossa ワイバーン(2012年前後のみ)
知る人ぞ知る国内のハンドメイドエフェクターブランド・バルバロッサのオーバードライブ。
現在は生産完了。
2012年のピロウズ活動休止時に行なっていた真鍋吉明ソロの時点でのエフェクターボードに組み込まれていた。
翌年2013年の活動再開時のボードからは姿を消したため、ソロ活動期のみのごく短期間の使用と思われる。
⑷Bogner エクスタシーブルー(2013年前後のみ)
アメリカのアンプメーカー•ボグナーによる2012年発売のペダル。
現在は生産完了。
同社の同名アンプのサウンドを再現している。
こちらのエクスタシーはレッドとブルーが存在し、本機ブルーは歪み量はやや抑え目。
2013年の真鍋吉明ソロの本人解説動画より使用を確認。
その直後のピロウズ活動再開当初の時点のボード内にはあったが、2014年の25周年ライブ時のボード内には無かった。
⑸electro-harmonix EHXトーション(2014〜2017年)
エレクトロハーモニクスのペダル。
現在も販売中。
こちらではオーバードライブとして解説しているが、メーカーの紹介では“オーバードライブ/ディストーション”となっていることから、強い歪みまで作ることが可能となっている。
2014年の25周年ライブのボードから、2017年のアルバム「Nook in the brain」のライブツアーのボードまで組み込まれていた。
⑹funk ojisan ゴールデンバルブ(2019年〜?)
以前の山中さわおエフェクター紹介の記事で紹介したギターショップ「funk ojisan」オリジナルのオーバードライブ。
現在も販売中。
チューブアンプの歪みを再現しているのが特徴。
2019年の30周年ライブ前の時点でボードに組み込まれていた。
その後いつまで使用されたかは明確ではないが、2023年時点のボードからは外れていた。
②ディストーション編
⑴proco RAT2(?〜2001年前後? 及び2023年〜現在)
アメリカ、プロコ社の代表するディストーション。
プロアマ問わず使用者も多い。
本機はRAT(第1世代)の後継機種として1987年に発売。
以降、年代によってバージョンが異なるが現在まで発売され続けている。
真鍋さんはいつから使用していたかは不明だが、2001年のDVD「Busters on the planet」内の1コーナー「1週間でマスター!ハイブリッドレインボウ」で使用するエフェクターボード内にあるのが確認できる。
2004年時点のボードでは次のBOSS MD-2に置き換わっているため、2002〜2003年辺りまで使用と考えられる。
しかし、2023年にファンクラブブログのボード画像にて再び組み込まれていたのが確認でき、2024年現在でも使用していると思われる。
ただし、以前使用していたものは初期型(筐体が平行でノブが大型)、2023年のは上画像の現行品であるため、個体はそれぞれ別のものである。
⑵BOSS MD-2 メガディストーション(2004?〜2005年)
こちらについても以前の記事(山中さわお使用エフェクター)でも紹介したため、そちらも参照してほしい。
2004年アルバム「Good dreams」の頃の雑誌インタビューから、翌2006年初頭発行のバンドスコア「ベストコレクション」の機材紹介まで使用を確認。
具体的なセッティングは不明だが、本機はかなりの歪み量が出るため、”DIST””GAIN BOOST”共に控えめで使用していたと思われる。
⑶VOX ブルドッグディストーション(2005?〜2006年)
英アンプメーカーVOXより「COOLTRON」シリーズという真空管内蔵のエフェクターラインナップの内の1機種。
2000年代に販売しており、現在は廃盤。
かの野村義男の愛用エフェクターとしても知られる。
2チャンネル使用でクランチ〜ディストーションサウンドまで作れるだけでなく、“VOICE”ツマミでキャラクターの変化も可能。
2004年アルバム「Good dreams」の翌2005年公演のライブツアー〜2006年アルバム「my foot」まで使用。
当時のメインギター・ジャグマスターやエクスプローラーに使用された。
⑷BJFE ダイナレッド(2007〜2008年)
BJFEは2000年設立スウェーデンのエフェクターメーカー。
製品全てが手作業によるハンドメイド品である。
本機は2001年発売後、いくつか仕様変更を経ており真鍋さんの使用していた初期型は現在相当なプレミアが付いている。
サウンドについては、マーシャルの所謂プレキシがモチーフとなっている。
2007年アルバム「wake up!wake up!wake up!」〜2008年アルバム「PIED PIPER」頃のエフェクターボードから確認できる。
⑸Barbarossa ガーゴイル(2009〜2013年)
上のオーバードライブ編のワイバーンと同メーカーのディストーションペダル。
現在も販売中で、価格はなんと¥132,000と真鍋さんが使用する歴代コンパクトエフェクターの中で一番高価と思われる。
2009年のライブインタビュー画像から、2013年ソロ活動時の解説動画まで使用しているのを確認。
真鍋さんは使用するディストーションは短いスパンで入れ替わるが、本機は比較的長い間使用された。
⑹Suhr Riot(2013〜2014年? 及び2018〜2020年前後?)
アメリカのハイエンドギターメーカー・サーのディストーション。
ここ近年でギタリストの間で非常に人気が高く、使用者も増えている。
現在は生産終了。
筆者が確認できた限りで使用期間が2回あり、
1回目は、ピロウズ活動再開の2013年から翌2014年の25周年ライブ辺りまで
2回目は、2018年アルバム「REBROADCAST」から2019年の30周年ライブ辺りまでである。
その後いつまで使用されたかは正確には不明だが、2023年のは上で述べたようにRAT2に置き換わっているため、2020年前後と推測。
⑺Sonomatic ドクタードライブ2(2016?〜2017年)
アルゼンチンのエフェクターメーカー・ソノマティックのディストーション。
日本での流通はかなり少なく、真鍋さんはどのようにして入手したか気になるところ。
youtube上にも試奏動画やレビューもないため、サウンドの傾向も不明。
2016年アルバム「STROLL AND ROLL」から2017年アルバム「Nook in the brain」の頃の雑誌インタビューで使用確認。
③ファズ編
⑴electro-harmonix ビッグマフπ(ロシア製) (?〜2007年)
米国エレクトロハーモニクス社を代表するエフェクター・ビッグマフは、年代によって様々な仕様が見られる。
90〜00年代ではロシアでも生産されており、本機は2000年代に生産されていた黒い筐体。
2010年頃には生産終了となった。
真鍋さんの使用開始時期は不明だが、上で述べた2001年DVDでは使用されていた。
その後も次のメタルマフに置き換わるまで長い間使用されており、時期によっては異なる製造年の本機2台を併用していたこともあった。
2004年ムスタングと本機を使用していた頃、当時の雑誌インタビューで真鍋さんは以下のように語っている。
⑵electro-harmonix メタルマフ(2008〜2013年)
エレクトロハーモニクスがリリースするメタル系ディストーション。
現在も発売中。
ディストーションにカテゴライズされるが、真鍋さんは上のビッグマフ的に使用していたことからこちらで紹介する。
2008年アルバム「PIED PIPER」から2013年ソロ活動辺りまで使用されていた。
ちょうど時期的にメインギターがSagoケイオスだった頃に当てはまる。
⑶MI AUDIO メガリス デルタ(2013〜2017年)
MIオーディオはオーストラリアのエフェクターメーカー。
日本での流通量は少ない。
本機も俗に言うメタル系ディストーションに属する。
2013年ピロウズ活動再開時から、2017年アルバム「Nook in the brain」までボード内にあるのが確認できる。
⑷one control バルチックブルーファズ(2018年〜現在)
日本のエフェクターメーカー・ワンコントロールが提案するビッグマフ系ファズペダル。
現行品。
本機はビッグマフの中でも「ラムズヘッド」期を元に現代流にアレンジされた使いやすいサウンドになっている。
2018年アルバム「REBROADCAST」から現在まで使用されている。
真鍋さんは本機をかなり気に入っているようで、ギターマガジン2020年4月号の特集「もしも、ペダル3台だけでボードを組むなら?」にブルースドライバーBD-2、イコライザーGE-7と合わせて本機を選出していた。
次回は真鍋さんの④空間系・マルチエフェクターについて紹介します。