【the pillowsギター機材まとめ】真鍋吉明ギター遍歴(後編)
前編の続きになります。ここから真鍋さんはSagoというメーカーに出会い、以降はほとんどSagoのギターを使用していくことになります。
Sago(サゴ)とは?
Sago(以下サゴ)とは、正式名Sago new material guitars (サゴ ニューマテリアルギターズ)という兵庫県尼崎市に本社を置くギターメーカーである。
2004年設立とギターメーカーの中では比較的新興であるが、サーモウッド加工をはじめとした従来にはない新技術をギター制作に積極的に取り入れているのが特徴。
真鍋さんがサゴと出会った経緯は不明だが、それからは「信頼できるギタービルダーと出会った(本人談)」と真鍋さんはサゴに対して大きな信頼を寄せており、使い続けるのは勿論、その後廉価ブランド「Seed(シード)」の立ち上げにも寄与するなどメーカー発展に大きく貢献している。
また、真鍋さんがサゴと組み始めた2008年当時はまだ知名度は高くなかったが、真鍋さんをはじめとしたプロミュージシャンの使用をきっかけにギタリスト界で認知度を伸ばし、現在ではプロアマ問わず多くのギタリストに使用されている。
⑧Sago new material guitars ケイオス(2008〜2012年)
真鍋さんが2008年にサゴで最初にオーダーしたシグネチャーモデル。
それまで使用していた⑦で紹介したレスポールDCを元に設計されたが、本機はピックアップがハムバッカーである点が大きく異なる(P-90のノイズに悩まされていたとのこと)。ハムバッカーはコイルタップが可能となっており、サウンドバリエーションを広げることが可能。
また、ボディ厚はレスポールDCと比較すると厚め、ネックもビブラートを多様する演奏スタイルを反映して幅広となっている。
先に完成されたプロトタイプは2008年よりメイン使用、その後完成したケイオススペシャルは2009年よりメイン使用され、プロトタイプはサブや海外公演用となった。ちなみにプロトタイプとスペシャルでは指板材が異なり、プロトタイプがローズウッド、スペシャルがエボニーである。
2010年には「ギターキッズにも手が出る価格帯で販売したい」という真鍋さんの思いから「Seed(シード)」いう海外生産の廉価ブランドでも発売された。
しかし、現在ほどネットが発達していなかったため前情報は無く、また生産本数も多くなかったためあまり多くの人に行き渡らなかった模様(筆者も見たのは都内の楽器屋1店舗のみでした)。
2012年リリースのアルバム「トライアル」の頃には、ピックアップをそれまでのサゴオリジナルのものからベアナックルのthe muleというピックアップに変更した(以下変更後の画像)。
ちなみに本機には幻(?)の山中さわおモデル(以下画像)も存在する。
2009年頃にサゴの社長がさわおさんにもアプローチした際、さわおさんが「白黒ペイントにしてくれたら使う」と受け製作された。
しかしライブで使用されたのはほんの僅かで直ぐに使用されなくなり、その後カミナリグモのボーカル上野啓示氏に譲渡された。
後年さわおさんは自身のpodcastにて「高いギターでロックをやるなんてロックじゃない」と回想しており、気に入らなかったのかと思われる。
⑨Sago new material guitars ルチル(2012〜2017年)
ピロウズが2012年に活動休止中に製作された真鍋さんのソロアルバム「Rutile」に合わせてオーダーされたギター。
ソロ活動では上のホワイトパール(所謂ルチル)カラーのものを使用、2013年にピロウズが活動再開されてからはその後完成した下のバーガンディーミストカラーのものをメインで使用された。
2017年のアルバム「Nook in the brain」の頃までメインで使用された。
ジャズマスター風な見た目だが、ジャズマスターよりも一回り小ぶりなボディとミディアムスケールなのが大きく異なる点である。
また、本機よりサゴのお家芸である「サーモウッド加工」をネックに施している。この加工について真鍋さんは「低音弦のハイフレット側がよく鳴る」と高く評価している。
ピックアップは前述のケイオスと同じくベアナックルのthe mule、またコイルタップも可能とケイオスのスペックを引き継いでいる点もある。
コントロールは1ボリューム・1トーン・トグルセレクターだったが、後にセレクターをノブによるバランサーに変更し、無段階でフロント・リアピックアップの配分を調整出来るようにした。
次のトロンにメインが代わってからは見かけなくなったが、2024年9月公演の35周年ライブでルチルカラーの方が久々に使用された。
また、本機もSeedブランドにて廉価版が発売された。
2013年と2017年に2回リリースされており、2013年はバーガンディ1色のみ、2017年はホワイトも追加、さらにサーモウッド加工やサゴ廉価版ピックアップ搭載と、2013年製より豪華な仕様となっている。
⑩Sago new material guitars トロン(2017年〜現在)
2017年暮れからスタートしたライブツアー「Return to 3rd movement 」より使用される2024年現在のメインギター。
最大の特徴はグレッチに代表されるフィルタートロンタイプのピックアップが搭載されている点で、通常のハムバッカーとは異なる独特な粒の荒めなサウンドが特徴。
使用木材等の異なる2本を使い分けている模様。
なお、その後にそれぞれ2本は以下画像のように変更された(紫の個体はボディごと変更とリフィニッシュ、青の個体はアッセンブリーを変更)。
サゴのホームページに詳細なスペックが記載されているが、その他の情報源がないためどういった経緯で製作されたかは不明。
なお、こちらのモデルはSeedブランドでの展開はなく、今後も予定はないとのこと(恐らくSeedの目指す予算10万円を大幅にオーバーしてしまうからではないかと思われる)。
オマケ その他ギター
これら以外にも真鍋さんの使用するギターは他にも存在する。
詳細は不明だが、筆者がこれまで確認してきたものをここでは取り上げる。
オマケ①Line6 James Tyler Variax JTV-59(2012年のみ?)
ライン6はエフェクター で有名なアメリカのメーカー。
本機はツマミ1つで様々なタイプのギターの音を再現できるという夢のようなギター。
2012年のピロウズ活動休止中に制作されたソロアルバムのレコーディングに使用した。
ライブでは使用せず。
また、これ以降の使用は不明。
オマケ②Sago new material guitars Classic style T(2012年のみ?)
2012年リリースのアルバム「トライアル」のレコーディングで使用したとのことで、ライブでの使用は確認できず。
サゴの基本ラインナップにあるトラディショナルなテレキャスタータイプ。
本機は、ピックアップはベアナックルのbrown sugar。
ボディ材はアルダーで、ネックはサーモウッドメイプル。
オーダー品か既製品かは不明。
オマケ③Sago new material guitars テレキャスタータイプ(2014年〜現在)
2014年公演のライブ「Do You Remember The 1st Movement?」に合わせてオーダーされたと思われる。
シェイプはテレキャスだが、ツインブレードのシングルサイズハムバッカー2発にハードテイルブリッジといったスペック。
他にも「クオーター莫逆の友」のPVや野外フェス(ARABAKIロックフェス2017 Theピーズ30周年ステージ)、カミナリグモとのユニット活動での使用も確認できる。
オマケ④Sago new material guitars Charm(2014年のみ)
2014年公演のライブ「Do You Remember The 2nd Movement?」で使用されたギター。
Charmはシグネチャーモデルではなくサゴの基本ラインナップに存在するモデル。
ピロウズ第2期(1993〜1995年)は主に真鍋さんはレスポールを使用していたため、その頃のサウンドを再現したくレスポールとスペックの近い本機を使用したのかと思われる。
真鍋さんに合わせて製作されたものか、それとも既製品を使用したか詳細不明。
このライブ以外での使用は確認できず。
オマケ⑤ Greco? フライングVタイプ(2014〜2015年)
2014年アルバム「moondust」ライブツアーのアンコール曲(トイドール、ターミナルヘブンズロック)にて突如登場した謎の光るギター。
その正体はフライングVで、メーカーはグレコかと思われる。それに電飾カスタムを施したもの。
このライブツアー以降は登場していないと思われる。