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「アンビグラム」6対応旋回


こんにちは、Σです。
先日こんな作品を投稿しました。

風揺さんの「既視感」に大変な感銘を受け「ひさびさに多対応の作品を描きたいな~」と思い、多対応旋回で描けそうな単語のストックから引っぱり出してきた単語のひとつです。奇跡的なことに、「アンビグラム」という単語からは一定の旋回アンビグラマビリティが感じられるのです。もしアンビグラムのことを指す単語が「ノキロメミル」とかだったらノキロメミラビリティは感じられません。
さてこの拙作ですが、6対応にしてはまあ読めなくもないかな、というところまでは持っていけた感じはするものの、私の微力では単語のポテンシャルを発揮させきれていないように思えます。
そこで「うまい人がやったらもっとうまくいきそう」というようなことをつぶやいていたところ、ありがたいことにたくさんの方々に描いていただきました。本当にありがとうございます! 今回はそんな傑作の数々を紹介していきます。



Snow/淡雪さん

まずはSnow/淡雪さんの作品です。これほど難しいタイプの対応でも、1画1画省略なく対応させる解釈への真摯さと手腕がよく現れていると思います。筆画の区切りの見せ方も綺麗で、字影もスマートでとても読みやすく、無駄のなさに驚かされます。


peanutsさん

peanutsさんの作品です。字形のかっこよさが抜群です。可読性・対応解釈もさすがの完璧さですね。全文字がそれぞれ固有のシルエットを留めていて、文字に対する圧倒的な観察眼と愛が伺えるように思います。とにかく美しくて読みやすいです。

なんともう1パターン制作されています。1作目とは「ビ」の解釈が特に異なっています。こちらの作品もとても自然な読みやすさで、筆致の幅広さにも脱帽です。


撫華さん

撫華さんの作品です。柔軟な字形理解が類稀なるアンビグラム作家さんですが、当作でもとてもさまざまな筆画の揺らし方が光ります。「〇」を連結部とも点とも途切れとも捉えさせる見せ方が完璧なバランスだと思います。濁点の処理も素敵ですね。

撫華さんももう1パターン制作されています。こちらも工夫の幅広さが光る作品ですてきです。旋回角度は1作目と近いですが、それぞれの字形の自然さにもより磨きがかかっています。


螺旋さん

螺旋さんの作品です。どの文字もとても自然な字形に落とし込まれていて非常に驚嘆しました。なかでも「アンビ」や「ム」が特に完璧な字形で、頭尾が読みやすいことによるさらなる可読性の向上が起こっていそうです。重ねによる画数の揺らし方も緻密で、全文字で納得感が非常に高いです。驚きの技術力ですね。


O’gustさん

O’gustさんの作品です。対応解釈の大胆さが当作でも存分に発揮されていますね。かなり線の量が多いですが、字形の特徴を非常に的確に押さえていて「読ませたい筆画」と「装飾」を自然にはっきりと読み分けられます。装飾的な作字力の高さがこの読みやすさを実現していそうです。鏡像を用いていないのにも驚きます。


風揺さん

風揺さんの作品です。「既視感」もそうですが、これほどの多対応になっても細部まで対応づけにぬかりがないですね。それでもなお作風も一貫しているというのが、字形の捉え方を確立している証左と思います。筆画の連続・分断や線・面を複雑に揺らしていて、そことそこを対応させるのか、という驚きがあります。


.38さん

.38さんの作品です。アンビグラムである以前に作字として美しい作品になっているうえ、アンビグラムとしてもさまざまな技術で見事に字形を成立させていて驚異的です。旋回角度も30°単位になっていて、そのしばりのなかでの読みやすさとは思えないですね。2色づかいや重ねなどの手法がテクニカルです。


宮倉ひのさん

宮倉ひのさんの作品です。多対応旋回にかけては場数も実力もトップクラスの作家さんだと思います。当作もさすがの対応解釈ですね。大胆な字形処理をしていつつも、6文字ともすべての筆画の構造が自然に読み取れる作品を描ききる手腕は唯一無二のものでしょう。


YФUさん

YФUさんの作品です。フォントとして成立するようなほど整った筆致や字影が神がかっています。どの字にも存在する垂直・水平方向の筆画が支柱的な役割を果たすのか、「文字らしさ」の不自然さが極限まで削られていそうです。文字の見え方もその具現化もさすがの鮮やかさですね。


いがときしんさん

いがときしんさんの作品です。筆画の処理もルールの一貫も、何から何までさすがの緻密さです。幾何学的で整然とした字影がロゴタイプにもなるような美しさだと思います。タイプや技法を問わないアンビグラム力の高さには畏敬の念に堪えません。


戦艦黒猫さん

戦艦黒猫さんの作品です。「ア」など寄りの三角形的な字影や「ビ」など寄りの四角形的な字影が多くなりそうだと思っていましたが、当作はどちらにも寄り添う円的な字影がやわらかでかわいらしいですね。これが6文字ともの文字サイズが整うことにもつながっていると思います。対応解釈も納得感が高く、無欠な作品です。


douseさん

douseさんの作品です。6文字とも一切疑いようもなく極めて自然に読める判読性にただただ圧倒されてしまいます。点描やぼかしを用いることで、筆画の対応づけに対して細部まで妥協を許していないように思います。ここまで無駄のない作品を描き遂げる丹念さがとても素敵です。


Lejeさん

Lejeさんの作品です。余ってしまいそうな濁点などのパーツまでもが洗練されたデザインに落とし込まれていて、タイポグラフィとしてとてもかっこいいと思います。「ア」2画目や「ン」1画目に相当するパーツの交差的な見せ方も巧みですし、全体のまとまりもかっこよく整っていて魅力的です。


海さん

海さんの作品です。こちらの作品も鏡像を用いずに対応させきっており、筆運びの流れが心地いいです。質感やフォルムがやわらかで素敵なデザインですね。回転を示す効果線のようにも見える線が対応解釈にうまくいきています。「ア」と「ラ」の振動にも注目です。


lszkさん

lszkさんの作品です。面的な解釈がほかにない対応づけを生んでいます。これによって「ン」2画目の1ストローク分と「グ」1・2画目の3ストローク分の対応や、「ア」1画目の折り返しと「ラ」2画目の折り返しの対応など、不可能かにも思えるような処理を鮮やかに実現していますね。目をみはる技術です。


ねこくまさん

ねこくまさんの作品です。筆画も旋回規則も非常にシンプルな解にたどりついていてすばらしいと思います。このミニマルな設計でいて字形の特徴もよく捉えていて思わず唸ってしまう作品です。90°単位での旋回ということは最大で8種類のグリフしか現れませんから、最適解でこのルールを貫いているように思います。


見逃していなければ以上になります(増えたら追記していきたいと思います)。
こんなにたくさんの素晴らしい作品を見られて、この上なく幸せです。「みんなも描いて〜」とか言ってみるものですね。6対応ともなると解釈の個性やバリエーションがとても豊富で、楽しくてしかたがないです。描いてくださったみなさん、見てくださったみなさん、本当にありがとうございます。
ところで、「アンビグラム」の6対応旋回型アンビグラム、拙作が初出かのように書いてきましたが、もっと早い例があったらぜひにご教示ください。


おまけ

対応解釈の比較



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