月刊『アンビグラム』参加作まとめ・2
こんにちは、Σです。
1年前に引き続き、制作秘話的ななにかを残しておこうと思います。
2023-1月号(お題:フリー)
4ヶ月以上かけてのんびりコツコツと、全1000文字をアンビグラム化しました。
アンビグラムの制作はとても楽しいので、1000文字分もあると制作に終わりが来ないわくわくがずっと継続して楽しかったです。特に『千字文』は1文字もダブりがないので、ずっと新鮮な楽しさがありました。
普段はアンビグラマビリティの高い語句を見つけて制作することが多いので、与えられた文字の組み合わせをひたすら対応させていった本作はとてもいい鍛錬になりました。この『千字文』のおかげで、パーツの構造が異なっていたり密度が遠かったりする難しい組み合わせのアンビグラマビリティにも気づきやすくなり、とても制作の幅が広がりました。
特に好きな組み合わせもまとめてあります。ぜひあなたの好きな組み合わせも見つけてみてください。
2023-2月号(お題:TV)
「液晶/映像」と「通信衛星」は、Wikipediaなどを眺めつつテレビに関する単語をリストアップしていって、単語どうしの全組み合わせを検討することでそのアンビグラマビリティの発見にいたりました。かねてより可能性を考えていた2文字どうしの交換共存など、かなり幅広い型を検討することで「通信」/「衛星」の交換ビリティにも気づくことができました。この単語をリストアップする方法を初めて用いてみて、かなり制作方法の幅が広がりました。あらたかなさんもこれに近い方法で制作されているようです。
お題が出た時期にちょうど「どうする家康」のロゴがアンビグラムっぽいという話題をちらほら見かけていたので、実際に回してみることにしました。もとのロゴをさまざまな方向に向けたものを観察して最もアンビグラマビリティが高そうだった/軸鏡像型に決め、もとのロゴを真似して制作しました。
2023-3月号(お題:クイズ)
制作した「競技クイズ」『和同開珎』「パラレル問題」「早押しクイズ」のうち2作品を寄稿。
競技クイズプレイヤーらしく「競技クイズ」という単語を選択しました。「口口」/「又」の対応がおもしろくてお気に入りです。
クイズの出題そのものがアンビグラムになっている作品も制作したいと思い、以前制作した和同開珎よりも発展的な作品も考えてみました。真ん中に来る熟語の組み合わせを「液晶/映像」と同じ方法で案出し、それらと熟語になる文字どうしの組み合わせをひたすら検討して制作しました。解答例はこちら。
2023-4月号(お題:健康)
候補作「睡眠時間」と悩み「眼精疲労」のほうを寄稿。メモからお題に合う単語を探し、以前アンビグラマビリティを感じてメモに入れていた「眼精疲労」で制作しました。
「睡眠時間」は、チャットAIに「健康に関する単語」「漢字を含む2文字以上の単語」などの条件で単語をたくさん挙げてもらって題材を探しました。AIの進化によってまた制作方法の幅が広がったように感じます。
2023-5月号(お題:回文)
「字回すわマジ」は以前の回文の日に考えた自作回文です。「すわマジ」の部分に文字組みの妙が効いていたり、矢印の意匠で「わ」のカーブや「マ」の点を理由づけていたり、「回」に「字」の最終画が隠れるような構造で「わ」と「マ」を分割していたりと細かな技巧が盛り込まれています。
有名な回文単語から選択した「希塩酸液」もとてもかっこよく描けて気に入っています。
2023-6月号(お題:本)
アンビグラム関連の書籍を題材にしようと思い、「ゲーデル、エッシャー、バッハ——あるいは不思議の環」で制作しました。
カナなどと「議」や「環」などとの密度が合うように文字の大きさを調整し、さまざまな文字組みを試してみてこの形に決まりました。「姫森ルーナ」型のような特殊文字組みもここまで発展させられるようになり大いに役立っています。
2023-7月号(お題:神話)
「神話」というお題から思いついた単語のなかから「安全神話」を選択。他の候補「神々の黄昏」ものちに制作しました。
以前「神の杖」で「申」/「木」の対応を制作していたおかげで、「礻」/「申」の対応にも可能性を感じられました。
2023-8月号(お題:ジャングル)
このころ久しぶりに文字列生成型を制作したいと思っていたのと、お題から連想した単語として『コンクリートジャングル』の雰囲気がよかったものの『混凝土の密林』だけだと回らなさそうだったのとで、文字列生成型を考えることにしました。文章のイメージが先に決まっているところから文章を考えていったことになります。全体的におしゃれにまとめられて気に入っています。
2023-9月号(お題:日本史)
中学校の歴史の教科書を引っ張り出してめくりながら題材を探しました。
角度をずらす技法(本作だと「譜/様」は/軸鏡像関係、「代/外」は│軸鏡像関係にあるところを、間の角度を取ることによって鏡像軸を同一にしている)(→参考)もかなり自然に発想できるようになってきていたころで、このアンビグラマビリティもしっかり感知できました。「譜」の「並」が実際の形とはかなり違うものの、表情の雰囲気でしっかりと読みやすくできていそうなのもお気に入りポイントです。
2023-10月号(お題:ヒーロー)
ヒーローというお題にかなり悩みましたが、ヒーローから連想した曲をいろいろ聴きつつタイトルや印象的な歌詞でアンビグラマビリティを検討し、ハチさんの『パンダヒーロー』の歌詞中のフレーズに決めました。「さら」/「イナー」がいくらかわかりやすいアンビグラマビリティ感知ポイントになりました。「ば一昨」/「殺︎︎人ラ」のところが地味に特殊文字組み対応になっているのもポイントです。
「は」の右側/「又・人」などの対応のために手描きっぽいニュアンスにすることにしました。形を整えるのはやはりIllustratorがやりやすいのでIllustratorで下描きしてから描画ソフトで制作しました。
2023-11月号(お題:ゲーム)
偶然にもちょうどお題が出たタイミングで制作途中だったので、月刊アンビグラムを期に仕上げました。
やはり「囗」の解釈が最大のポイントになりそうです。「囚」の「人」/「マ」で柔らかい対応づけが必要だったので、「さらば一昨日殺人ライナー」と同様の工程で手描き風に制作しました。
2023-12月号(お題:時事)
今年の個人的一大出来事ということで「アンビグラム情報局」で制作。偶然にもアンビグラマビリティが高くて描いていて楽しかったです。やはり姫森ルーナ型は全体の見た目がまとまった印象になるのがいいですね。
「生成系AI」は「成」/「AI」が特にお気に入りです。「成」は崩れの少ない字形によって、「AI」はフォントっぽさによる多少の崩れの補完によって読ませている感じです。数箇所の対応難をうずまき模様で一気に解決できているのも統一感があっていいと思います。背景はIllustratorのベクター生成機能で「ambigram」で生成してもらいました。
今年も引き続き素敵な場に参加させていただけてありがたい限りです。
参加者の増加や参加システムの変更など変化も大きかった今年、月刊アンビグラムはますます盛り上がりを見せていたように感じます。次号以降も楽しみでなりません。
ほかの作家さんの作品もすばらしい作品ばかりなので、もしまだ見ていない号がありましたらぜひご覧ください。