映画 クラウドアトラスの感想(一回目)
2020年4月10日
クラウドアトラスという映画をNetflixにて鑑賞しました。
sense8というウォシャウスキーズ(マトリックスの監督で有名な)のドラマシリーズ、Netflixオリジナルの中ではそこまで有名では無いような気がしますが、大好きなドラマシリーズです。それ以降ウォシャウスキーズに興味が湧いてきたため本作もその流れで鑑賞という形になります。
この作品はかなり難解な映画だとされているそうです。難解の基準とかよくわかりませんが、確かに見返したりするごとに新たな発見がある、といった映画に思えます。
以下、クラウドアトラス初鑑賞の感想(少々ネタバレがあるかもしれないけど、出来る限りしないように努めています)
あと、私は考察というものは派手にやりすぎると、あたかも受け手の創作に近づくというか、なんだか不気味なものに感じるタイプなので、見てる途中とか、見終わってしばらく考えて、生まれてきたあっさりした感想になると思います。
では、感想に入ります。
鑑賞前は、トム・ハンクス、ハル・ベリー、などなどキャストも豪華だし、予算もかなりかかってて、設定もSF超大作!って感じでかなり期待していた一方、時間が172分もあったため、少し尻込みする気持ちがありました。
結論から言うと、この映画は自分の中でかなり好きな映画になりました。
この作品は6つの時間軸があって、それぞれの時代の物語は別々で進行するのですが、別々に活動している登場人物たちは思いもよらぬ形で実は繋がっているという設定自体がまず好きでした。一人の人との出会いで自分の人生が大きく変わったり、自分のとる行動は自分の死後に影響を及ぼしたりするものだというのがよく伝わってきます。作中でも、自分の命は自分一人のものではないといったことを伝えるシーンが度々現れます。
6つの時代の関わり方がどう面白かったのか、ということについて簡単に書きたいと思います。
当たり前のことですが、この映画を鑑賞する人は現在という立場に立って映画を鑑賞することになります。私の場合2020年の常識と世界情勢を自分の知ってる限りで蓄えて見ることになりました。
この映画で取り上げられている6つの時代のうちの1つに奴隷貿易の時代があります。19世紀には相次いで廃止された黒人奴隷貿易です。今の観点からすると奴隷制そのものは悪となっています。しかし、当時では基本的にそうは捉えられていません。もちろん現実だと、廃止への道は複雑で、一本道では無いし、正義感だけで行われていたわけではないとは思うんですけど、それはともかくこの映画では廃止に向かうある一つの道筋が記されています。そして、結果として今となっては廃止された奴隷貿易ではありますが、廃止によってこの奴隷貿易という道筋そのものが絶たれたわけではないし、いつだって同じようなものが新たな形で現れることはあるということがこの映画での未来パートでは語られていきます。
そして、この映画でまた面白いのは時代の隔たりがどのように作用するのかということです。
この映画の数多くのテーマの中の1つに信仰というものがあるように思えたのですが、今でも多くの宗教があるように、信仰というものはその宗教ができた時代の人々の命を超えて拡大し、維持されることが多いと思います。ですが、信仰というものが本当に信仰の元の時代を正確に写し取っているのか。この映画ではこのような時代の隔たりによる影響というものが描かれています。
他にも色々と繋がったりとあるんですが、ともかく6つの時代が絡み合ってくれるおかげでその変化を楽しむことが可能になってきます。
とはいえ、6つの時代を描くということによる難点があると思います。1つ目は、キャラクターの描き方が薄くなるということです。このことは俳優の人々の演技力や、1人で何人ものキャラクターを演じることで、他の時間軸との共通点や不思議な繋がりを分かりやすくするとともに、キャラクターを他の時間軸を含めてある程度深めることができていたと思います。また、面白く感じたのが、時間軸による映画のジャンルの越境のようなもので、全体としてはSF作品なのですが、それぞれの時代軸ごとに少しずつテイストが変わっているのです。
例えば、1つの時間軸に、とある老人が主人公である時間軸があるのですが、この時間軸はわかりやすくコメディ調になっていました。コメディ調なのはこの時間軸だけです。他にもそれぞれの時間軸でテイストはそれぞれ区別されていました。
そのため、全体としても、メリハリがついていて、172分の映画ですが、ダラダラとした印象は無かったです。むしろ、駆け足だな、というほどでした。
では、問題点は他に何かあるかなというと、上にも書きましたが壮大な物語にしては、172分は足りなかったのでしょうか、少々駆け足という感じがしたところです。勿論、これはこれで想像力が広がっていいところもあります。ですが、結局アレは何だったの?といったシーンがところどころあり、焦点をもう少し絞っても良かったなという気もしてしまいました。
あとは、細かいことになりますが、この映画は人類の進歩が一方向ではないと思わせてくれる映画であるのですが、その一方で原始人や昔の部族的なものは野蛮だと言っているように思えてしまうシーンが多々あり、これは全体の映画のコンセプトに沿わないように思えました。
でもやっぱり、この映画、もっと色んな人が見てもいいと思うな。