海外生活②微笑みの国のひとたち+360万
私は犬派でありながら、
妻と3匹の猫と暮らしている。
ある日忽然と現れた、若くはない猫を追い払う訳にもいかず、何気なしに水を与えた。
妙に甘えた声音で足元を離れないので餌を与えた後、野良猫は我が家を頻繁に出入りするようになった。
家族としての契りを交わしているのか、
そうでないのか、宙ぶらりんのまま日が経ち、
腹が不自然に膨らんでいることを知ったときには、放っておけなくなってしまった。
慌てて、猫小屋を作ったのだった。
ところで、
タイ全土の路上生活をしている犬&猫は、
約3,600,000匹と言われている。
途方のない数字のように感じたのだが、
実際、私の自宅から市場までの、10分間に満たない道中、約2,30匹の野良犬を容易に見かけるのである。
昼間の暑い時間は日陰で昼寝でもしているのだろうが、夕方には活動的になる。
片側一車線の車道を塞いで屯していたり、
思い思いに自由に過ごしている。
私を含めた運転手たちはクラクションを鳴らして、彼らの移動を促すのが常である。
タイ王国は世界上位の交通事故大国である。
危なくないのかと言えば、やはり危険極まりない。
幹線道路には車に轢かれてしまった亡き骸を見ない日の方が圧倒的に少ない。
では、どうすればいいかと言うと、
現状までどうにもしていない
野良犬&猫を駆除するのは法律、宗教上ともに認められていない。
何より、大多数のタイの人々の心情的に許されることではないだろう。
彼らはどのように日々の食糧にありついているのかと言えば、
何処からともなく現れた老若男女、
特に年配の女性たちが餌を与えているのである。
日課のように毎日、野良犬の群れに餌を与えている見知らぬおばさんは言った。
「私はお金持ちじゃないし、家にはもう猫が何匹もいるのよ。
だから連れて帰ることが出来ないけど、
せめて、この子たちが今日だけでも美味しいものを食べることが出来たら、それでいいじゃない。ね?」
私は同意を示すため微笑を返し、
煙草を取り出し、その場を離れた。
追記
どうなることやら、である。