【Hack To 8x9】#04 吉田先生をハック
8x9のあらゆるものをハックしていく『Hack To 8x9』第4回目は、ATC校代表講師の吉田先生へのインタビューです!
“生涯現役、生粋のプログラミング講師”
―吉田先生、本日はよろしくお願いします!それでは簡単に自己紹介をお願いします!
吉田 ATC校の代表講師をしております吉田です。本日はよろしくお願いします。プログラミング指導歴は18年で、8x9はもちろんそのほか専門学校3校、中学校1校、高校1校でも指導しています。
―えっ、6校を兼任ということですか!?
吉田 そうですね、学期始まりの時期だと週7で毎日講師をしたりもします(笑)
―週7日はすごいですね…。しかも小学生から専門学生まで幅広い年齢層でご指導されてるのが驚きです。
吉田 よく言われるんですが、自分にとっては好きなことなのでしんどくはないです(笑) もともと学生の頃からプログラミングを教えたいと思っていたので今はそれが実現して願ったり叶ったりです。
―それは素敵ですね!でもなぜプログラミングを教えたいと思ったんですか?
吉田 プログラミングが好きだったからですね。学生の頃から電気や物理が好きで奈良高専(奈良工業高等専門学校)に進学したんですが、学校でやるプログラミングが楽しかったんです。
それを期にコンピュータ関連の企業に進みたいと思い日本アイ・ビー・エム株式会社(以降IBM)に就職し8年勤めたんですが、やっぱり指導面で興味あったので大学の理学部に社会人編入して29歳の時に教職課程(高校理科)を修得したんです。
―就職されてから大学に編入されたんですね!並々ならぬ決意を感じます!まさしく講師がご専門と言えますね。
吉田 はい、今はもう本当に職業が講師です(笑) ただ一方で小・中学校の先生達と比べると「自分は先生らしくない先生だな」とも思います。
“カリキュラムを形作るのは自身の職業経験”
―講師業以外でエンジニアのお仕事についてお聞きしてもよろしいでしょうか?
吉田 IBMに勤めていた頃は、電力会社が発行する検針票印刷システムの監視をしていました。IBMと聞くとThinkPad発祥のコンピュータメーカーのイメージが強いと思いますが、当時はBtoBではあらゆる企業の業務効率をITを駆使して改善していく事業をしていたんです。今風に言うとDX推進ですが、今ほどテクノロジーは進んでいなかったのでけっこう泥臭い作業が多かったです。毎日同じフロアでシステムに関わる他社の社員も含めて缶詰状態で作業なんてこともあり・・・。
―大変なお仕事をされていたんですね・・・。
吉田 20~30年前のIT企業のイメージはこれに近かったかもしれませんね(笑)。社会人編入した大学で教職課程を習得した後の数年間はスタートアップ企業を複数社渡り歩いていた時期もあります。2000年シドニーオリンピックの時期にとあるスポーツ企業のオリンピック特設サイトを運用したり、ひたすらIoT製品のプロトタイプを制作したり…色々やりましたね。
―スポーツ企業のオリンピック特設サイトを運用って凄いですね!
当時はホスティングに物理サーバーを使うのが当たり前だったのでこれもけっこう大変でした。サーバーは大阪のデータセンターに置いていたのでアラート(警告)が出るとデータセンターまで再起動しに行ってましたね。皆がテレビを見るであろうピーク時に至っては横で張り付いて監視、CPU使用率が100%付近に近づきシステムが不安定になってきたら再起動みたいなことしていました。
―大変なお仕事をされていたんですね…(2回目)
吉田 はい。精神的に大変でした。コマンド1つ間違えると取り返しのつかないことになってしまうことが本当にありましたから。普段8x9の生徒達には「失敗は成功の母だから間違えてもいいよ!どんどんチャレンジして!」って言うんですけど、専門学校生相手の授業では1つのミスで取り返しのつかないことが起こる恐れもあることを経験として伝えていったりもしていますね。
―なるほど、エンジニア経験が指導に活きているわけですね。そう言えばIoTと言うと8x9にもIoT電子工作コースがありますね!
※IoT…Internet of Thingsの略。モノ×インターネットの組み合わせのこと。身近な製品だとスマホで操作できる洗濯機やエアコン、アレクサ、GoogleHomeなどIoT家電がイメージしやすい
吉田 そうなんです。IoT電子工作コースは私が担当するコースですが、こちらもエンジニア時代に経験した開発プロダクトをアレンジしてカリキュラムに落とし込んでいるものがあります。
―すごいですね!そういえば気温センサーの授業されていましたよね!
吉田 よくご存知ですね。あ、そう言えば事務デスクの裏で生徒が作ったセンサーがずっと起動していましたね。自然のデータって普段から私達の身の回りにあるので子供たちにも何を作るか伝えやすいし、子供たちも目的が見えるから取り組みやすいんですよね。
かく言う私も当時は自然エネルギーに関するIoT機器のプロトタイプばかり制作していました。自転車のタイヤに羽根をつけてを川の中に入れて水車のように回して水力発電し、そのデータをインターネットで送る小規模水力発電のデータ計測機とか、避雷針やブレーカーを販売している会社向けに空気中の静電容量を定期測定して雷が鳴るとすぐに検知して通知する機器とかですね。
“プログラミングは考える力が身につく学び”
―聞いてるだけでワクワクしますね!自分が子供の頃なら授業受けたい!ってなったと思います(笑)。では、話を変えて先生の趣味を教えてください!
吉田 ランニングとスイミングですね。今は仕事ばかりであまりできていないですけど、昔はフルマラソンやウルトラマラソンに参加してました。ウルトラマラソンは80km超えた辺りから100km完走するまでがすごく気持ち良いんです。
―ウルトラ!100km!?すごいですね!!
吉田 ええ、でも去年久しぶりに大阪のナイトハーフマラソンに参加した時は10km位で足が上がらなくなってきてしんどくなりました(笑)。コロナもあって体が非常に鈍ってるんで、状況を見つつ練習しながら徐々に走れる距離を伸ばしてまたフルマラソンにエントリーしたいですね。
―なるほど、吉田先生の意外な一面が垣間見えました(笑)。では続きまして、子供時代どんなお子さんでしたか?
吉田 結構、調子乗りな感じでしたね。創作することが好きでマンガを書いたりプラモデルを作るのが好きでした。
―好きな教科はなんでしたか?
吉田 数学と英語ですね。
―嫌いな教科は?
吉田 なかったですね。
―嫌いな教科なかったんですね!これだけはやっておけばよかったと思うことはありますか?
吉田 うーん、強いて言えば物理、化学、数学ですね。生徒からは「生活に関係ないのに何で勉強しなければいけないんですか?こんな公式覚えても使わないんですけど」って聞かれるときがあります。今の学習指導要領ですと子供達は知る術がないですが、学校で学ぶ部分はあくまで導入部分であり実用として用いた時にはじめて面白さが分かるんです。
実際、僕もプログラミングで数式を応用したら面白いものができた!って事を経験してます。いろんな数式(三角関数・虚数・フーリエ級数など)を使えば数学で現実世界にあるものを表現したり、制御するためのロジックを作ることができます。プログラミングにおいて絶対に数学が必要というわけではないんですけど、数式と物理(物の原理)を知っていると表現力が増えるのは経験上確実に言えます。
―なるほど、深いんですね〜。私は導入部分でつまづいてましたね(笑)。これからの子どもたちに必要なことって何でしょうか?
吉田 「自分で考えて判断する」ということですね。学校で教えてもらったことを覚える、聞かれて答える(試験)、評価される。これらも必要なことなんですけど、社会で必要なのはそれだけではないんですね。日々できること・できないことを周りの大人にほめられつつ・ダメ出しされつつ、自分で考えて必要なものを取捨選択していくことができるようになってほしいですね。そういう意味でプログラミングは自分で考える力が身につくので良い学びのツールだと思います。
―では、プログラミング分野において必要になことは何でしょう?
吉田 原理(しくみ)に興味を持つことですね。なぜこれができているのか?と気になって1つ下のレイヤーに関心を抱いたり調べたりですね。ただ原理が分からないことにこだわってしまい足踏みしたり苦手意識を持ってしまうと先に進めなくなってしまうのである程度の割り切りは大事です。
“教えるのではなく学びを触発する”
―ところで、吉田先生から見て8x9はどんなところでしょうか?
吉田 色んな学校で教えている中での比較で言うと、8x9は子供達の「プログラミングをしたい」という気持ちを伸ばすカリキュラムが揃っているのが良いですね。
学業においてカリキュラムの質、指導の質というのはもちろん重視すべき点なんですが、大事なことは案外見えない部分にあったりします。それで言うと興味関心を引き出すこと、つまり授業が楽しく感じることが重要だったりするんですね。8x9のカリキュラムはそこをよく捉えています。
あとは色んな理由で子供達の居場所になっているのも良いですね。純粋にプログラミングを身につけたい生徒もいれば、レッスンが楽しくて通ってくれる生徒、多くの習い事を掛け持ちしていて息抜きの場になってる生徒、学校には通えてないけどコンピュータは好きだから8x9には通ってる生徒など、色んな理由で子供達が集まる場になっています。
こうした居場所で他者と意見や価値観を交わすことで思考の種を得ていくので、8x9は創造する場として上手く機能していると思います。
―なるほど〜、そうなのですね。現在、吉田先生がご担当されているのはどのレッスンですか?
吉田 主にATC校で全コース担当しています。六甲道ではIoT電子工作コースも担当していますね。
―先生が授業をしているとき、面白いと思う時はどんな時ですか?!
吉田 例えばプログラミングで「繰り返し」を教えるのですが、その中で数字が変化していくんですけど、教えている最中にその子の頭の中で変数の中身が変化して上手く回りだしたな、と分かる時があるんです。電球がピカッと光る感じで。これは小学生から専門学校生までみんなそうなんですけど、分かった後が違うんですね。急に伸びるてくるんです。
―すごい、吉田先生には見えるんですね!
吉田 最初は曖昧な感じだったんですけど、今ではそれを意識して見るようになりました。特にプログラミングはペーパー試験の採点などが上手く機能しません。ですので、その子が「気づきを得た場面」を見逃さないことが講師のスキルとして重要と感じます。
この「わかった!」のタイミングを講師側で導線を作って仕向けることができたら教育の革命だとも思いますね。それぐらい理解し覚醒した子は一気に伸びるのでとても興味深いです。
―なるほど。では吉田先生から見てこれは難しいと思うことはありますか?
吉田 どれもこれも難しいですよ(笑)。強いて言うなら子供達のメンタリティのコントロールは本当に難しいです。気分が乗らない時はその子にとってはレッスンが理不尽なことになってしまいます。
人間の感情は浮き沈みがあるので、レッスンの中でどうやっても琴線に触れることがない場合もあったりして…。無理強いすることなく「面白い→学ぶ→わかる→さらに面白くなる→できる!」の流れを作るのは今現在でも難しいと感じます。
―本当に仰る通りだと思います。吉田先生がレッスンで大切にされている部分をお聞きしたいです!
吉田 自分の力で何かをしようと思っている子は、私の支えがなくても自分で考えてどんどん新しいことをするので、レッスンの内容と異なっていてもさえぎらず見守るようにしています。一方でそうではない子に対しても無理やりはさせずに自然に仕向けるように心がけていますね。
僕は常々1人1人が自分で学びたいことを学ぶというか、その時その子によって必要な知識が学べたらいいと思っています。完璧に順序立てたところでその子自身が「わかった!」ルートに入らないとうまくハマらないですし、そもそも学びは自身が本当に興味あるものを自発的に掴み取っていくものだから1から10まで教えなくてもいいと思っています。要は何らかの形で関わることで子供達の学びを触発できたらいいなと。
“子供が持つ可能性全てを想う”
―ありがとうございます。素敵な考え方ですね!それではこれから挑戦したいことはありますか?
吉田 「ITパスポート」の資格取得のコースを作ることにチャレンジしたいなと思っています。既存のレッスンではモノづくりを意識したレッスンが多いですが、それとは別に知識のインプットが有益に働くレッスンがあっても良いなと。どっちが良いかではなくどっちもできる子が育ってくれたらいいなという想いで現在準備を進めています。
―ITパスポート資格取得コース良いですね!楽しみです!それでは子どもたちに向けてメッセージをお願いします。
吉田 何事においてもそうですが、できなかったことができるようになると楽しいものです。そして周りができないことを自分ができるようになるのは自己肯定感を高めていく上で大切なことですし、社会は得意・不得意を補い合うことで回っているので、これからもどんどん学んで自分ができることを増やしていってください!
―それでは、最後に恒例の…吉田先生のハックしたいことをお願いします。
吉田 ❝「想い」をハックする!❞
多くの子どもは社会経験があるわけではないので、親や先生など大人の言うことが判断基準になっていますよね。でもいつかどこかで自分で考えて想いをもって判断するようになります。
そこで初めて社会や他者を意識して自分の世界観を持つようになりますが、そんな時に自分を知るための考え方、在り方といった思考の種、あるいは気づきを与える一助になれたらいいなと思います。
―本日は長時間貴重なお話をありがとうございました!
今回は吉田先生のインタビューでした!次回のHackTo8x9は辻先生をhackする予定です!どうぞお楽しみに(^-^)ノ
(取材・執筆:藤田 / 撮影・デザイン:岩崎)
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