見出し画像

01:八壁の場合

さてさて、八壁ゆかりの「ハハヌケ」、記念すべき第一回でございます。

「毒親」なんて言葉が一般化してしばらくになりますが、おそらくこの記事を読んでくださる方は、あくまでもおそらくですが、母親、お母さまとの関係に何らかの問題・支障・しがらみ・重さ、そんなようなものを抱えてらっしゃるかと思われます。
その逆もまた然りで、「もしかして私は『毒親』だろうか?」という風に不安に駆られて覗いてらっしゃる「母サイド」の方の存在も、決してゼロではないかと考えている次第です。

今回は初回ですから、とりあえずわたくし八壁のケースを一例として挙げてみたいと思います。
がー、自分で言うのも何なんですが、私と彼女の関係は典型例ではないと思うんですね。むしろ特殊? 強烈? 熾烈? 爆裂?

なんて書くと私が彼女を憎みまくっていて、「彼女のせいで私の人生がメチャクチャに!」などと恨んでいるように聞こえるかもしれませんが、違うんです。

ハッキリ申し上げましょう。

私、彼女が大好きでございます!

人間として尊敬していますし、あの強靱な精神力には我が母ながら羨望のまなざしを送るほど。おしゃべりすぎるところはありますが、それも魅力のひとつと言えばひとつです。

しかし、彼女のことが好きで、愛しているが故に、事態がより厄介に、こんがらがってこじらせてまたこんがらがってエンドレスループ! みたいなな!

私は三十路の既婚者ですが、えーと引かないでいただきたいんですけどね、今もこう思うんです。

「彼女の自慢の子供になりたい」

……もう、どんだけ幼児なの、ゆかりさん。そりゃ主治医の鼻毛先生にも「社会的にはまだ三歳」って言われるわ……三十年遅いよ……。

もしかすると、一般的にいわゆる「毒親」と呼ばれる母親に育てられ、母を憎み、それでも完全に斬り捨てることができない(「墓守娘」なんて言葉もありますね)、そんなケースの方が一般的かもしれません。
というか、その方が分かりやすいです。多分な。

閑話休題。
いえ、私もね、なんか変だなとは思っていたんですが、以下のようなオブセッション(強迫観念)が、幼い頃からありました。

 ・彼女には全部言わなければならない(=隠しごとをしてはいけない)
 ・彼女が言えばカラスも白くなる(=間違っているのはいつも私)
 ・自分が良いと思ったものはシェアすべし(=共有欲求)

「おかしいぞ?」と思ったのは、NYCにいた時にあるセラピストに以下のように言われたのがきっかけでした。

「あなたは境界性人格障害で、全ての元凶はお母さん。
 だからご家族にはパニック障害だと言いなさい」

ボーダーであることはこの際置いておいて(誤診でしたし)、「家族=彼女に隠しごとをする」ということをいざ始めてみると、もう物凄い罪悪感が芽生え、自分が何かとてつもない悪行を働いているかのように思われました。

それでも私は、治りたかったのです。
ですから、毎日元気なふりをしてメールを書き、自傷行為を続けながらセラピーを受けました。

「私をお母さんだと思って、怒りをぶつけなさい」

ある日のセラピーでそう言われたのですが、私はただ泣きながら、

「言えません、ごめんなさい、言えません……」

と、すんすん鼻を啜っておりました。

しかし限界は来ました。自傷行為の悪化が両親にバレて、私も全て告白したのです。
本当は死ぬほど辛い、どうしたらいいのか分からないのだ、と。
わずか二日後に、父親がNYCまで来てくれました。そして、私の心情的には強制帰国。

その後、都内の閉鎖病棟に入院するわけですが、彼女にはNYのセラピストが言ったこと、即ち、

「我が子が病気になったのはあなたのせい」

ということも伝わったと聞いていましたから、酷くぎこちなく接していたように思います(記憶がほぼないですが)。

愛する娘が自分のせいでメンタルの病気に苦しみ自分の身体を傷つける。
私には子供がおりませんから想像するしかありませんが、これほど強烈でショッキングな台詞、「母親」という存在からしたらどれだけの後悔や苦悩や自責の念、憤り、その他様々な感情を抱いたか、それはもう筆舌尽くしきれないものだったはずです。

その数年後、別の医者にかかっていた時、彼は彼女にこう言いました。

「お母さんは『先回り』してしまう傾向が強いように思います。
 雨が降っている日に、子供に言われなくても傘を差しだしてしまう。いいんですよ、子供が勝手に外に出て雨に濡れて、自分で傘を取るのを見守っていればいいんです」

(……実はコレ、最近の私だったりするんですが!)

これは私も心当たりがありました。彼女はあまりにも「完璧な母」だったのです。何かあっても、彼女なら何とかしてくれる、助けてくれる。そんな風に、ほとんど刷り込みに近いような感じで、未だに頼りたくなるのです。

また、年上の親友が我が家に遊びに来て彼女と会った時、友人は思ったそうです。

「なんでこんなに素晴らしいお母さんなのに、ゆかりは辛いんだろう?」

そしてその後、こう思ったといいます。

「母親が完璧だったら、必然的に娘も完璧さを求められるかもしれない」


さて、第一回はサンプルケースとしての私の話、ほぼ自分語りと化しましたが、次回はもう少し話を広げていこうと思っています。
「ハハヌケ」は、もしかしたら私自身が思っている以上に大きな問題かもしれません。よかったらガンガンシェアとかしてやってください。私も、他のケース、助言などを伺いたいです。

ご拝読ありがとうございました!


励みになります! 否、率直に言うと米になります! 何卒!!