いやいや、まさかね。まさかまさか。
いやいや、まさかね。まさかまさか。
レジ袋の中に入っているのは、プリンだ。
何度見ても、プリン。そう、どうやって見たってそれはプリンでしかないのだ。
なにと間違えてプリンを買ってしまったんだろうか。今甘いものは気分ではないのに。最悪だ。ご丁寧にスプーンとおしぼりもついてある。俺が食べたかったのはこれではない。しっかりソレが食べたいという意思で棚から取ったつもりだ。それなのになぜプリンを手にしてしまったんだろう。そしてなぜ袋を開ける今まで気づかなかったんだろう。朝のニュースの星座占いで言っていたラッキーアイテムの「ファジカル」を使っても、解決しそうにない。
そういえば、俺はちゃんとレジで「温めお願いします」と言ったはずだ。その記憶は確かにある。「温めますか?」と言われるよりも先に、「温めお願いします」と言った。であれば、プリンをレンジで温めたというのか。客がプリンをひとつだけ買って「温めお願いします」なんていえば、普通は店員も聞き返すだろう。
じゃああのときの段階ではこれはプリンではなかったんだろうか。小さいときに読んだ、家に帰りつく前に開けてしまうと金魚がいなくなってしまう箱の話を急に思い出した。女の子は家まで見ずに持って帰ったので金魚はいなくならず、男の子は好奇心に負けてつい中身を見てしまい、金魚はいなくなってしまった。あの話のトリックは一体なんだったんだろう。ばあちゃんは大人になったら分かるよといっていたが、大人になってもよく分からない。
もしかして実は、開けてみればちゃんと中身はソレだったりしないだろうか。Instagramとかでこういうなにかが流行っていて、俺が知らずに買ってしまったのかもしれない。そう信じて皿に出してみたが、色も弾力も、中身は紛うことなきプリンだった。どうしても食べたくて晩御飯と別で2回目の外出をしたのに。しかもご飯の前にお風呂に入ってしまったから、わざわざ髪を乾かしてパジャマからまた私服に着替えてまでして家を出たのだ。そうまでしてどうしても食べたかったくせに、なぜ買うものを間違えたんだ。記憶を辿っても、どこでソレがプリンになったのか全く分からなかった。
いやいや、まさかね。まさかまさか。