加藤邸

今日の建築家「石村大輔+根市拓」

加藤邸 Photo by Sobajima Toshihiro (トップ画像)

足立区北千住を拠点に活動する建築家「石村大輔+根市拓」のお二人に創造系不動産本山と鈴木が会いに行ってきました。

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(左:根市拓、右:石村大輔)

建築家HP 石村大輔+根市拓 

本山(創造系):12月14日(土)の創造系レクチャーシリーズ「設計と独立のあいだ」にむけて事前にお話を聞きに来ました。内容としては、独立して建築設計をやっていくことについて、3事務所のクロストークをメインに考えています。

ざっくばらんに会場含めて意見交換できるような場にしたいな~と。

創造系レクチャーシリーズVol.4「設計と施工のあいだ」はこちら

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石村さん:よろしくお願いします。僕たちは一体なんの話をすればいいんだろう?他の二組は生き方も面白い気がしますね。

本山(創造系):僕は、お二人の作品とプランを見ていると、美学を感じるから、それがすごい好きです。シンプルな中で、いろんな問題を解決してというか。そういうバリバリ建築の話もしてほしいですね。逆に王道でやっていくことが、つらいってことが感じられる中で「あえてそこで勝負していく」ってところにいってる理由も聞きたいですね。

根市さん:僕ら結構、今までたまたま仕事があったから、新築ができていたんですよね。だからシンプルに建築と向き合って、作品をつくることができたんだと思います。でも今正直これから、どうなるか分からない時期になってきています。

鈴木(創造系):そうなんですね。続く仕事が途絶えているとかですか?

「もうちょっと社会性にシフトする可能性」

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根市さん:街に関わる機会が増えてきています。自分たちの考えとしても、今までのように新築を作っていっても、社会的に乖離がありすぎて、図面上の建築から少し違った、「どうやって作っていくか」の方に、入り込みたいと思っています。

こないだの住宅特集に、載せてもらったときの若手建築家号では、建築の社会性の話が結構出ていましたよね。僕らとしては独立当初、石村+根市は王道建築家でやっていこうっていう意思はありました。しかし実際の日々に考えることは、どうやって安く住むかということでもあって、「新築」ってものが、どんどん実生活と離れていっている感覚があるんですね。
だから、もうちょっと社会性にシフトしていく可能性もあるし、どちらもやっていきたいとか、正直悩んでいる時期です。

事務所もこれから、もう少し北千住の駅の近くに引っ越しをするんですけど、橋を渡って、こちら側という距離で事務所をやってみて、北千住という街に愛着が出てきました。正直街に関わることをしたくなってきています。街の人となるべく会うようにしていたり、ローカル建築家的な動きが、北千住という独特な環境だと、まだできそうなので、そういうことも面白いかもしれないと思っています。

本山(創造系):東京ローカル建築家…いいですね。

根市さん:家賃はこれから上がっていくのだろうと思いますが、まだ北千住は安い方なんです。
特に昔からある下町の文化とか、古い建物とか空き家が多かったり、街に入り込んでいくという「余地や余白」が東京の割にはあって、おもしろくなるんじゃないかと思ってます。

鈴木(創造系):なるほど。

石村さん:僕らも最初の住宅やっている時は、「社会性」をあんまり気にしていなくて、建築がよければそれがいいことだろうって思っていました。だから、建築雑誌を見ててもピンとこないときもあった。空間が何もないのに、ただの箱があって、中に社会的な活動があるっていうだけで評価されたりとか、そういうことに対して、よくわかんないなって当時は思っていました。一作目の新築できてみてしばらくたって、今は「建築が良くてもしょうがないのかな」って思ったりもしますよね。(笑)

一同:(笑)

石村さん:あと、だれかと建築の話をしていても通じない時がありますね。
例えば学校の授業でも、手書きで設計製図をしていたころは、図面を読み取るような教育だったけれど、今は卒業設計なんかを見ていると建築がもっと広いフィールドになっているように感じます。だから必然的に、社会的なことを学ばなければならなくなる。
僕はそれがいやで、建築らしい建築を作りたいなって独立して設計してきたんですよね。でも今逆にそれができたからって、それは社会と接続してないなっていう部分も実感しました。
正直どうそうすればいいんだろうなーって思っています(笑)

「このまま建築作っても街は変わらない」

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根市さん:単純に生活を豊かにしたいとか、価値観を変えたい、新しく価値観を作りたい、というところで建築をやってきたけど、何をもって豊かさにつながるかが分かりにくくなってますよね。

空間だけでそういうことをやるっていうよりかは、もっと、例えば庶民の建築で、ものすごく安く作れて、住む人たちが別のことにお金を使えるほうが、その人たちにとって豊かもしれない。その人たちが浮いたお金で街に貢献する可能性もある。だからかもしれないですが、このまま建築作っていっても街は変わらないと感じました。

本山(創造系):王道建築設計のやり方と、自分たちの生活が大きく違ったんですね。

石村さん:だから転換期ですよね。

本山(創造系):すごい時期にお呼びしてしまいました。

石村さん:方向性定まってない話になりそうですね(笑)

鈴木(創造系):大丈夫です。二人の「今日」をお伝えしてもらうのが、今回のイベントの大切なところだと思います。

石村さん:でも、一方で建築はやっぱりすごいと思うんですよね。
職人の時代の建築家の作品を見に行く機会があったのですが、なんかもう入った瞬間から「ありがとうございます!」みたいな感じでした。「ご飯何杯でもいけます!」みたいな感じなんですよ(笑) もうほんとにすごいんですよ。(笑)こんな建築作りたいなってほんとに思った。ある一つの理想の建築でしたね。

ただ東京に戻ってきて、普段の生活していると、そういう空間も確かに重要なんだけど、なんかね。難しいですよね。

「建築家のやっていることと自分たちの生活が違いすぎる」

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根市さん:そうですね…例えば家賃。僕らにとって例えば家賃が5万円減ったら、その5万円で別のことができるって普通に考えるし、それが建築の問題なのかってのは、ちょっと分からないですけど。単純に建築家のやっていることと、自分たちの生活が違いすぎるんです。

石村さん:建築が大好きですけどね。

本山(創造系):そうなんですね。
ふたりとももっと、王道建築家のしびれる世界を追究する感じでやってるんだと勝手におもってました。

根市さん:そんなことないですよ。
例えば、ずっとこれまでいわゆる営業をしてこなかったんですが、最近は心境が変化してきています。新築を2つやって、その後まだ新築案件はないんですが、どうやって仕事を手にいれていくかを考えたときに、可能性としては、自分たちの生活の延長で、やれる仕事を探していくほうがいいのかなと最近は思っています。

石村さん:そういう話だと、こんなこともありましたね。
情報社会が進んで、ピンタレストとかインスタグラムの画像が設計打合せの時に、たくさん送られて来るようになってしまって。分かりやすい半面、表層としてのコミュニケーションになっていて。建築の面白いところはもっと深くにあるんだよなあ…ってなりますね。

もし、そういった理解のない人の仕事をしたくないのであれば、面白い人たちと付き合わざる負えないし、そのためにはおそらく、自分たちの生活環境を変えないといけない、ということをひしひしと感じています。だから、そこをどのように社会と接続して、仕事をしていくかということなんだけれど。

そもそも、面白い人と出会うっていいですよね。

根市さん:そうだよね。今までの建築家の仕事のやり方だと、仕事来るのを待つっていうイメージが強くて、建築メディア経由でっていうのを想像していたけれど、そういうことをしていると、プロジェクトの良し悪しが分からない、どんなに徹夜して渾身の案をつくっても、その段階では気づけない人が多いので、時間と労力がかかりますよね。だから、こっちから面白い人を見つけて、その人のために仕事ができるほうがいいなって、おもっています。

石村さん:ある程度有名な建築家になれば、仕事がたくさんあるから、来た相談の中で、面白そうなものをやればいいって話なんですけどね。そんな訳にはいかないですからね実際は。

本山(創造系):なるほど、じゃあ二人は、結局最終的には、面白い仕事をってところに行きつくんですね。

石村さん:うーんなんだろう。革命を起こしたいんじゃないですかね?

根市さん:いやいや、そんこともないでしょ(笑)

一同:(笑)

根市さん:革命っていうと大げさですけど、要は社会や周りに面白くないタイミングがあるから、少しでも良くしていけたらいいなって思いますね。

「面白くならないといけないし、いろんな面白い人と、つながろう」

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石村さん:最終的には時代のマスターピースになるような建築を作りたいですね。それするためにはやっぱり理解のある施主と、建築家としての技量がないといけないですね。

でも今のとことは、社会構造が変わったり、建築家に求められることが変わってきたせいで、そういうことのできる可能性が変わってきてしまっている。だから如何に面白い人を見つけるかに、かかってくるんだろうなって思ってきています。

たとえば、今やっている倉庫のリノベを依頼してくれた人は、たまたま事務所の目の前を通りかかった、近くの電気屋の人で、「この通りでこんなおしゃれに暮らしている人たち初めて見たわ、僕は足立区諦めてたんだけど」って。
「次なんか絶対面白い仕事持ってくるから!」って言われてから、今年の1月くらいにその人が戻ってきた。
それで、「千住で倉庫借りたんだけど一緒にやらない?」って言ってくれたんですよ。

鈴木(創造系):え、たまたま通りがかった人ですか?

石村さん:そうです(笑)。
もちろん最初は疑問だったんです。その人は僕らの模型は見てくれていたけど、当時は実作まだ一個もできていなくて、なんの資料も無くて、そんな状況なのに、なんで仕事頼んでくれるのかと。

それで、なぜ僕らに仕事をお願いしたか、確認したところ「デザインができる。上手い下手。とかはもちろんあると思うんだけど、こいつらと一緒に仕事したいなって思わせるのが重要なんだ。」って言ってくれて。素直にかっこいいなって二人でなって。
そんなことがきっかけで、僕ら面白くならないといけないし、いろんな面白い人と、つながろうと心から実感しています。


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