Plot:1stシーズン*紗雪の章
【プロフィール】
諏訪大社のお膝元下諏訪町の和菓子屋の一人娘として育つ。京都で和菓子商いを学ぶ傍ら粋な文化に影響を受ける。後継を含め和菓子屋で繰り広げられる出来事。紗雪の成長と葛藤とは。養子を避ける?やりたいことをとるか?果して、シャッター通りの町が蘇るのか?
【自分らしい生き方をめざして】
紗雪の育った中仙屋は、諏訪大社下社秋宮にほど近い大通りにある。
父の和菓子屋を継ぎ、養子をとるか?自分のやりたいことをとるか。まだ答えは出せていない。
紗雪には、東日本大震災を境に、下諏訪での生き方に迷いがあった。町の人口も、もはや2万人を切り減少は止まらない。和菓子の消費量も減っており、後継者問題で廃業している店も多い。移住で町が蘇るのか。
終わりなき和菓子の道に入り9年目。28歳になり同世代は、結婚したり仕事で歩みをすすめていたりする。これからどうしてゆこうか。漠然と迷い、希望や不安を抱きつつも、修行の地である京都をはなれ下諏訪へのUターンを決意した。
遠回りして東京からの高速バス。車窓から、八ヶ岳が目に飛び込んできた。氷餅を作る秋山さんは、元気だろうか?諏訪湖ののどかな風景はそのままか…
紗雪は、八ヶ岳周辺の自然が大好き、そして、市井の人たちの息遣いにゆっくり寄り添う和菓子屋が好きだと気づく。
【和菓子道】
厳しいながらも無限の魅力をもつ京都の和菓子環境と、下諏訪の宿屋町で日々営なまれる和菓子づくりとの違いに直面する紗雪。この店は父が作りあげた店で、自分のやりたいことができるわけではない。自分で確信の持てる餡の味が出せるようになるまでにも、もう少し時間がかかる。
夏至を過ぎて、お舟祭りと雅楽の季節。祭りの当日、葛餅を市井の人たちに振る舞う。
休日、京都で一緒に学んだフランス人のセーラに再会する。セーラの和菓子に対する情熱は相変わらず高く、ノートにぎっしりと書かれた絵付きのレシピや、注意点メモを紗雪に見せる。紗雪もオリジナルの菓子帳「紗雪スペシャル」を披露する。和菓子談義に華がさく二人。紗雪はセーラに、一緒にパリで和菓子をつくろうと誘われる。
多くの災害に、どこに住もうと災難を被ることはあると思う紗雪。
どこに住み、どこで仕事をするのか、「待ち」の生き方ではなく、積極的に自分で選びたいと思い始める。
【和菓子への愛ゆえに】
平和の象徴、和菓子は、あらゆる人に愛されている。茶道文化の一部としての和菓子だけではなく、農作業のかたわらで食すお萩や、お祭りの屋台で食す綿飴や飴細工。古くは、栗や、柿を甘味として食していたものまで含めると日本のお菓子は、日本の歴史そのものといえる。
新しい和菓子を作り続ける大切さ。大鷲のグル飛来は、地元住民に感動をもたらす。和菓子屋は和菓子だけ売るわけじゃない。餡作りの奥深さや匠の技を提供し、感動をもたらす幸福の象徴として新作を位置付けている。
新年の茶会に向けて新作の和菓子づくりの準備にはいる。京都では、和菓子屋が一年でもっとも華やぐ時でもあった。紗雪が下諏訪に帰って初めての茶会である。
下諏訪の和菓子屋では、あまり干菓子をつくらない。メーカーの既製品を並べている。京都の店では、職人が木型で干菓子を作っていたのにと、うな垂れる紗雪。下諏訪の旅館の女将と相談して、木型和菓子をつくる教室を開催する。
【太古〜無限の世界を求めて】
漸くパリ行きを真剣に検討し始める紗雪。パリは、きっと自分を成長させてくれるだろう。セーラがいるから怖くはない。でも、中仙屋をそのままにしてゆけるのか?
立春、休みを利用しパリ祭が開催される京都にセーラを尋ねる。春分、今度は、セーラを下諏訪に招いて、歴史を紹介する。一万年つづいた世界的に類を見ない縄文文化や、万治の石仏など。もちろんお菓子の食べ歩きも。厳冬の八ヶ岳山麓で作られる天然乾燥の寒天を使った新鶴さんの塩羊羹は、楢の薪を焚いて職人の手作業で練り上げられる。
なぜパリなのか。フランス料理は、見た目も楽しむ文化、味も大切だがアートとして捉える。日本の和菓子も見た目を楽しむ。すなわち意匠性を大事にする文化。きっと通用すると思う。今やインターネットで店を出せる時代。バーチャル和菓子屋ができるかもしれない。受注生産に切り替えれば、お店も最小限の規模ですむし、お客様との新しい関係を作れるかもしれない。
無限の可能性を求めてパリへ。