短編小説コンビニ物語
お会計は777円になります。
「おっ、おっ、お客様!777円です。」
店に幸福に包まれた元気な声が響き渡った。
金沢のコンビニがザワザワする。
そのザワザワが兼六園まで届き、
池の水に波紋ができた。
そんな時代もあったねと、私は無人のコンビニで
機械にお金を入れようと財布を探している。
「ご入金をお願いします。」
メッセージが流れた。
その時、お客さんの声がした。
「あら、2度目だわ。」
振り返ると、年配の女性が居た。
「声を出してすみません。私は昔、ここでレジをしていまして、
777円のお客さんを一度だけみたことがあるんです。」
これは、名探偵コナンじゃなくても、気付いてしまう。
あの時の店員さんだ。
「それって、たぶん私です。
この3つの商品を買うと777円になるんです。
でも、あの時と違って、このレジ袋を含めて4つ買うとですけど。」
「そうでしたか。あの頃はレジ袋も無料でしたね。
今は、レジも無人化して、私の仕事もなくなりましたわ。
もう年ですけどね。」
なつかしい気持ちとともに、
なんでも無人化してしまい、人との会話も減ってしまった時代なんだなと
悲しい気持ちになった。
あの日、笑顔でコンビニを出ていき、雪ですべって転んだ記憶が蘇る。
「ぜんぜん、運良くないじゃん。」
でも、温かい気持ちでチャリで帰り、また転んだあの日。
いつの間にか、10分ほど時間が過ぎていてレジの列は21世紀美術館まで
続いていた。
「これって、令和のアートですね。」
そう言って、年配の女性は何も買わずに帰っていった。
「みなさん、お待たせしました。私がみなさんのお会計が777円になるように、レジ袋を足りない分だけ買わせていただきます。」
苦笑いしてるお客さんの顔が見えたけど、どうでもいい。
財布を忘れて、自分の支払いも出来ないのに。
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おわり