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PC・DAW向けのおすすめのアンプシミュレーター

PCやDAW向けのアンプシミュレーターは、ギタリストにとって非常に重要なツールです。

アンプシミュレーターを使用することでリアルなアンプのサウンドを再現し、簡単にレコーディングの音質を向上させることができます。

この記事では、PCやDAW向けのアンプシミュレーターを整理した上で、おすすめについても紹介します。


◆アンプシミュレーターとは何か?

アンプシミュレーターは、ギターなどの音をデジタル的に処理し、リアルなアンプのサウンドをシミュレーションするツールです。

これにより、実機のアンプやエフェクトユニットを持たなくても高品質なサウンドを簡単に得ることができるようになります。

◆アンプシミュレーターの主なメリット

実機のアンプと違ってアンプシミュレーターにはいくつもの利点・メリットがあります。

① コスト削減

アンプシミュレーターの一番のメリットはやはりコストパフォーマンスだと思います。

実機のアンプヘッドやキャビネットを複数揃えるとなると数10万円~数100万円が消えて無くなります。

他方でソフトウェアのアンプシミュレーターの場合、無料で使えるものも多数ありますし、ハイエンドクラスのシミュレーターでも数万円程度で買えるものがほとんどです。

② 場所をとらない、騒音問題を解決できる

実機のアンプヘッドやキャビネットを部屋に沢山置くことにはロマンがありますが、実際に部屋に実機のアンプヘッドやキャビネットを置くことは無理がありますし、実機の真空管アンプから音を出して録音をしようとするととんでもない爆音が出るため一般的な住宅では現実的ではありません。

他方でソフトウェアのアンプシミュレーターはSSDなどに保存すれば何百台ものモデルを保管できますし、録音もPCやDAWで内部処理できるので騒音の問題もありません。

③ 様々なアンプモデルを簡単に試せる

実機のアンプの中にはダンブルアンプのように現実的には入手が非常に困難なものも多いです。

アンプシミュレーターであれば幻のアンプや伝説的なアンプも簡単にシミュレーターで試すことができます。

④ 誰でも高音質を出せる、簡単に録音できる

実機のアンプの音の録音は実際にやってみたことがある人であれば分かると思いますが、かなり難しいです。

マイクの位置が数ミリずれているだけでも音が変わってきますし、真空管アンプは気温や使っている時間によって音が微妙に変わったりして全く同じ音を録音するのはほぼ不可能です。

また実機のアンプを録音する場合にはエンジニアさんがマイクで拾った音だけをモニターできるようにするために、プレイヤーさんがアンプを弾く部屋と、エンジニアさんがモニターをする部屋が分かれているほうが良いのですが、そのようなレコーディング環境を確保できる人は多くないと思います。

ソフトウェアのアンプシミュレーターであればギターをオーディオインターフィエスに繋いで、プラグインを立ち上げれば簡単に良い音が出せますし、録音ボタンをクリックするだけで簡単に録音ができます。

◆アンプシミュレーターのデメリット

アンプシミュレーターにはメリットだけでなく、いくつかデメリットもあります。

① レイテンシーの問題

アンプシミュレーターはギターの音をCPUという計算機のような機械で複雑な計算処理して音を出すため、必ず音の遅れ(レイテンシー)が発生します。

ただ、レイテンシーに関してはそれなりの処理能力のあるPCと(あまり古くないCPUでCorei5以上かRyzen 5以上、メモリは16GB以上)、ASIOという規格に対応しているオーディオインターフェイスなどがあれば、ほとんど気にならない程度まで短くすることは可能です。

なお、古いパソコンでCPU負荷が極端に重いシミュレーターを使うと、音がプツプツと途切れる場合があります。

② パソコン、オーディオインターフェイス(場合によってはDAW)が必要

ソフトウェアのアンプシミュレーターを使う場合、PC(又はMac)とオーディオインターフェイスが必要になります。

またスタンドアロン(DAWがなくても使えるタイプのソフト)に対応していない場合には、DAWを用意する必要があります。

ただ、ソフトウェアのアンプシミュレーターを動かすだけであれば高額なPCでなくても良いですし、実機の真空管アンプを買うよりも、PCやオーディオインターフェイスを買うほうが安いです。

またDAWもオーディオインターフェイスを買うとオマケで付いてくることも多いですし、無料のDAWもあります。

また個人的には実機のアンプシュミレーターやエフェクタータイプのアンプシミュレーター(Helixなど)よりも、ソフトウェアのアンプシミュレーターのほうがコスパは良いと思います。

③ スタジオやライブでは使いづらい

スタジオやライブで使う場合にはソフトウェアのアンプシミュレーターよりも、実機のアンプシュミレーターやHelixといったエフェクタータイプのアンプシミュレーターのほうが圧倒的に使い勝手はよいです。

最近ではTONEX Pedalなどのようにソフトウェアのアンプシミュレーターをスタジオやライブで使うための機材が注目を集めていたりしますが、それでもスタジオやライブでその場の環境に合わせて臨機応変に対応するという点では、実機のアンプシュミレーターやエフェクタータイプのアンプシミュレーターのほうが便利です。

またアンプシミュレーターは基本的にアンプのキャビネット(スピーカー)から出てくる音をマイクで拾った音を再現しているためスタジオやライブハウスで鳴らそうとすると実機の音とは違った雰囲気になってしまうことが多いです。

スタジオ・ライブなどでの真空管アンプの再現という点ではFenderの「Tone Master」シリーズやBOSSの「KATANA」シリーズなどのように、アンプシミュレーターとキャビネットが一体となって設計されたモデリングアンプのほうが再現度は高いと思います。


④ 実機と全く同じ音は出ない

アンプシミュレーターはあくまでシミュレーションなので実機と全く同じ音は出ません。

ただ最近のアンプシミュレーターのクオリティは高く、レコーディングなどで使う場合には、実機のアンプの音と、アンプシュミレーターの音を聞きわけるのが難しいという場面も増えてきましたし、FRACTAL Audio SystemsやNeural DSPのように現実世界の実機のアンプには出せないような繊細な音色や分離感の高いサウンドを出せるようなシミュレーターも増えてきています。

知識や経験のあるエンジニアの方であれば別ですが、経験の少ないアマチュアの場合には実機よりもアンプシミュレーターのほうがクオリティの高い音を録音しやすくなっている、というのが最近の実情だと思います。


◆【無料】おすすめのPC・DAW向けアンプシミュレーター

無料のアンプシミュレーターをいくつか紹介します。

◇Emissary Bundle(Ignite Amps- Emissary2.0 + Nad IR)(STL Tones)


無料のアンプシミュレーターを探している人だけでなく、すでに有料のアンプシミュレーターを持っている人も、とりあえず「Emissary Bundle」を入れておくと便利だと思います。
「Emissary Bundle」には「Ignite Amps- Emissary2.0」というアンプヘッド部分のシミュレーターと、「Nad IR」というキャビネットシミュレーター(IRローダー)が入っています。
そして、このうち特に「Nad IR」というキャビネットシミュレーター(IRローダー)の使い勝手が良いです。

(IRが良く分からないという人は「ギター用アンプシミュレーターにおけるIR(インパルス・レスポンス)の重要性」という記事も参考にしてください。)

話を戻しますが、「Emissary Bundle」の「Nad IR」はハイパス、ローパスフィルターなどの基本的な機能があるだけでなく、2種類のIRデータを読み込んでブレンドできるようになっていたり、IRデータを「Nad IR」のブラウザ上でサクサクと切り替えることができるようになっていたりと使い勝手が良いです。
他のプラグインのIRローダーだと、IRデータを切り替えるたびに

フォルダボタンをクリック

フォルダを探す

IRデータを探す

読み込む

コレジャナイ

フォルダボタンをクリック

(以下同じ)


という面倒な作業を延々と繰り返す必要があるものが多いのですが、この「Nad IR」はそのような手間がありません。
様々なアンプシミュレーターを使っていると「他のIRデータを使いたいな」という場面が出てくることが良くあるのですが、その時はアンプシミュレーターの中のキャビネットシミュレーターをオフにして、「Nad IR」を別途立ち上げて「Nad IR」からIRデータを読み込むようにすると、アンプのヘッド部分とキャビネットシミュレーターの2画面をPCの画面上に同時に表示しながら調整できたりもするので便利だと思います。


◇5034 Fluff (ML Sound Lab)

ML Sound Labの「Amped Roots」というプラグインには4つのアンプモデルが入っていますが、そのうち「5034 Fluff」というアンプがフリーで使えるようになっています。
私のPC(Intel Core i5-9400F)の場合CPUの40%くらいを持っていかれるので、重いほうだと思います。
CPU負荷が大きい分、音のキメが細かくて音は良いですが、主張が強めの重厚なサウンドなのでジャンルや好みを選ぶアンプだと思います。
ノイズゲート、コンプ、歪みペダル、コーラス、ディレイ、リバーブといった基本的なペダルのプラグインが含まれているのも便利です。


◇DJENT GOD(ML Sound Lab)


前記と同様ML Sound Labというメーカーのプラグインで「Amped Stevie T」というプラグインに入っているアンプモデルのうち「DJENT GOD」というアンプがフリーで使えるようになっています。
CPU負荷は重いほうですが、「5034 Fluff」よりは軽いです。
音質も良く弾いていて気持ちよくインパクトのある音ですが少しこもったようにも聞こえる癖もあり、こちらも他の楽器との相性との合う合わないがあると思います。
ノイズゲート、歪みペダル、ディレイ、リバーブのペダルのプラグインが含まれています。


◇neurotube(audiosingularity)

SoldanoのSLO-100(実機は50万円くらい)とLaneyのTF-300というアンプのシミュレーターです。
Soldanoのシミュレーターは高域がシャリシャリと鳴って使いづらいものも多いですが、このneurotubeのSoldanoは出音が素直で、他の楽器の音と混ぜても溶けて無くなる感じもないので、非常に扱いやすいです。
ペダルエフェクトにAI技術が使われているとのこと。


◇Cypress TT-15(Black Rooster Audio)

OrangeのTiny Terror(楽器屋さんに良くある小さめの可愛らしいOrangeのヘッドアンプ)のモデリングのようです。
音は良いと思います。
TS 系オーバードライブを踏んだ時のハイゲインサウンドも良いというレビューがありました。
オレンジのアンプの傾向なのかも知れませんが歪ませ過ぎると音の輪郭がなくなっていくので注意が必要かも知れません。
キャビネットはオフにして、Nad IRでサードパーティのIRを使ったほうが扱いやすいと思います。


◇Amp Locker(Audio Assault)

プレキシ・マーシャルを元にしたアンプシミュレーターのようです。
ハイの抜け感が気持ち良くクリーンからクランチまで出せますが、ヴィンテージのマーシャルということもありハイゲインを出すためには付属の系のペダルを使う必要があります。
個人的にはキャビネットはオフにして、Nad IRでサードパーティのIR(「faIR Modern Rock」や「Free IR Pack – faIR Post Grunge」など)を使ったほうがマーシャルのギラギラ感が出て好きでした。

◇HyBrit Head、LE456、LeCto、LeGion、LeXtac(LePou Plugins)


無料で様々なアンプヘッドの音が出せるのがメリットです。
LE456⇒ENGL(たぶん)
LeCto⇒Mesa Boogie Triple Rectifier
LeGion⇒オリジナル?
LeXtac⇒DIEZEL(?)
キャビネットシュミレーターが付いていないのでNad IRなどを併用する必要があります。


◇7170 / 8505(Nick Crow Lab)

見た目から5150のシミュレーターであると思われます。
古いプラグインらしく強めにコンプレッサーをかけたような音になることもありますが、相性の良いIRと組み合わせることでカッコ良い音が作れます。


◇Tonocracy(TMT Technologies)


Neural Amp Modeler(NAM)という、TONEXやKemperのように実機のサウンドをキャプチャして再現できるプログラムを使用してるようで、キャビにはML Sound LabなどのIRが使われているようです。

最近流行りの高音域が痛いか感じの音ではなく、音の分離も良いので使いやすいと感じました。

ギターの練習の時にオケと一緒に流しても自分の演奏がはっきりと聞き取りやすいのも良いです。

プリセットの音も使いやすいものが多いです。

UIがシンプル過ぎるのと、自分で音作りをする場合にはキャビを変えたりする作業が少し面倒だなと思いました。

◇Brainworx bx_rockrack V3(Plugin Alliance)

無料版だとパラメーター(ゲインやEQ)を調整することはできず、プリセット(20個くらい)を選んで使うことになります。
・・・・AmpliTubeのように音が「もっさり」としている感じで、個人的にはあまり好みではありませんでした。

https://www.plugin-alliance.com/en/products/bx_rockrack_v3_player.html


◇TONEX(IK Multimedia)

ToneXはKemperのように実機のサウンドをキャプチャして再現できるプラグインで、「プラグイン版のKemper」的なイメージです。
無料版だと20種類程度のトーンモデル(Kemperのリグ的なもの)が使えます。
細かく音を作り込むとうよりもキャプチャされた音色から自分の好み・環境に合うものを選んでいくタイプのプラグインなので無料版の20種類は少し少ないと感じるかも知れません。



◆【無料】おすすめのエフェクター(ペダル)シミュレーター


◇DR DRIVE(Audiority)


HORIZON DEVICESの「Precision Drive」というペダルのモデリングみたいです。
ハイゲイン用途でも使えますしドライブを低めにしてクリーン系でも使えます。

https://sonicwire.com/product/B4969


◇THE PRINCE(GutarML)


通すだけで音が良くなる感じですが、実機のエフェクターにはない不思議な印象もあります。
配布サイトには英語で「ニューラルネットワークを使ったトランスペアレント系のペダルです」的なことが書いてあって、今流行りのAI技術を使っているようです。


◇TSB-1 Tyrant Screamer、TS-999 SubScreamer(STL Tones)


チューブスクリーマーのモデリング。


◇Greed Smasher、TSC(mercuriall)


Greed Smasher ⇒ GRID SLAMMER(Mesa Boogie)
TSC ⇒ TS-808
その他にMT-2、コーラスペダルのモデリングなどが無料配布されています。
JCM800のモデリングなども配布されていますが、古い規格のものは私の環境では読み込めませんでした。


【有料】おすすめのPC・DAW向けアンプシミュレーター

無料のアンプシミュレーターを使っているうちに有料のアンプシミュレーターを試してみたくなるかも知れません。

そのため、有料のアンプシミュレーターについてもいくつか紹介をしたいと思います。

◇SS-11X(Mercuriall)


Mercuriallは日本では知らない人が多いと思いますが海外の掲示板サイトなどでは頻繁に名前が出てきて好意的なレビューも多いです。
評判どおり音も良いですが、安くてコスパが良いです(現在は2500円くらい。円安になる前は1600円くらいだった。)。
AMT ElectronicsのSS-11AとSS-11Bというペダル型の真空管プリアンプをモデリングしたシミュレーターのようです。
真空管(プリアンプのミニチュア管の部分と思われる)は12AX7と6N2P-EVから選べるようになっています。
プリアンプの他にノイズゲート、歪系ペダル(TS-808、TS-808Mod、TS-7、TS-7 Mod、Grid Slammer)、キャビネットシュミレーターが付いていて、それぞれの機能をオン・オフできるようになっているので、「プリアンプ部分だけ使う」とか「ペダル部分だけ使う」というような使い方もできます。
プリアンプのモデリングはクリーンとハイゲイン2種類があって、どれも使いやすいです。
ペダルはTSのModとGrid Slammerが良い感じでした。
海外のサイト(英語)で「パワーアンプのシミュレーターが入っていないのではないか」ということが話題になっていましたが、メーカーの人が「キャビネットシュミレーターのIRの中にパワーアンプのIRも含まれているので問題はない」という感じの回答していました。
ただ、「SS-11X」のキャビネットシュミレーターをオフにして、パワーアンプシミュレータ(Ignite Amps のTPA-1など)と、IRローダープラグイン(Nad IRなど)を使ったほうが良いというような情報もありました。
実際に試してみると確かにTPA-1とサードパーティのIRを使ったほうが音の輪郭ははっきりする傾向があるとは思います。


◇Neural DSPのプラグイン


個人的にはPC・DAW用のアンプシミュレーターの中では音が良くて好きなメーカーです。
Neural DSPはQuad Cortexというフロア型のギタープロセッサーで有名ですが、高音質なギターアンプのシミュレータープラグインをいくつも出しています。
1個から4個ほどのアンプやキャビネットがセットになった「Archetype」が個別で€99~€149で販売されており、他のメーカーのシミュレーターに比べると割高な印象がありますが、音の分離が良く、付属している空間系のエフェクトもかなり品質が高いのでギター用のアンプシミュレータープラグインとしては最高峰的の地位を築いていると思います。
メタル系のラインナップが多いですが、1つの「Archetype」を買うとクリーン、クランチ、リード、激し目の歪みと幅広い音色を出せるようになっています。
オールジャンルで使いたい場合には「Archetype: Nolly」「Archetype: Plini」「Archetype Abasi」「Fortin Cali Suite」あたりが守備範囲が広く使えると思います。
クリーンからクランチをメインで使う人であれば「Tone King Imperial MKII」「Cory Wong」なども良いと思います。
メーカーサイトのデモ音源は芸術的すぎてあまり参考になりませんが、無料で一定期間トライアルできるので、実際に自分で使って試してみて気に入ったものを買うと良いと思います。
音はハイファイで特に高域のレンジが広いのでシングルコイルのギターだとハイが痛く感じるものも多いです。メタル系のラインナップが多いことからもハムバッカーやアクティブのピックアップと相性が良いように思われます。
ブラックフライデーやその他の時期にセールで半額になることもあるのでセールを待ってから買ったほうが良いかも知れません。

以下、いくつか試用してみた個人的な感想です。

  • ○Plini X
    クリーン、クランチから激しい歪みまで幅広い音色を作ることができオールジャンルに対応できる。
    以前の「Plini」というプラグインも個人的にはかなり好きな音色でしたがCPUの負荷がかなり重く、自分のPC(Intel Core i5-9400F・2.9GHz)の場合、単体で鳴らすことは出来るものの、他のプラグインと一緒に立ち上げると音がプツプツと途切れるという状況でした。(Plini でCPU負荷を変更できるようになっているが、負荷を下げてもダメ)
    しかし新しくなった「Plini X」のほうはCPU負荷軽くなり私の環境でも同時に複数のプラグインを立ち上げられるようになりました。音は華やかでモダンな雰囲気ですが、人によっては少しデジタルっぽさを感じるかも知れません。

  • ○Nolly
    海外の口コミサイトでは「PliniかNollyか」という議論を見かけることも多く、Pliniと並んで人気だと思われます。
    ヘッドアンプとキャビネットがそれぞれ4つあるため、Pliniよりも音作りの幅が広いかも知れません。
    歪みは繊細な雰囲気がもありながらジャキジャキと弾いていて気持ち良いです。
    ミックス用に既にローカットされたような音でギター単体で弾くと物足りなさを感じることもありますが、他のオケと合わせるとちょうど良い感じになります。
    自分のシングルコイルのストラトキャスター(フェンダー)で弾いた際に高域の「ギッ」というような倍音が気になったのでハムバッカーのほうが相性が良いかも知れません。

  • ○Abasi
    海外の口コミサイトでは「PliniやNollyがあればAbasiはいらない」というコメントもありましたが、自分のストラトではAbasiを立ち上げてそのまま弾くだけで格好いい音が出せたので、PliniやNollyよりもAbasiのほうが好きでした。
    Nollyと違ってキャビネットは1種類だけのようですが、音作りの幅は非常に広いです。
    白い「Rhythm」というヘッドアンプの歪み自然で「リズム」という名前の割にはリードとしても使えるような強い歪みも出せるようになっています。調整することでMarshalのJCM800のようなジャキジャキとした音も作れます。
    Cleanは自然なクリーントーンで付属のリバーブと組み合わせると幻想的な音色が簡単に作れますし、BLENDというノブを回すとエレアコのような音を作ることもできるようになっています。
    付属されている歪み系ペダルもプリアンプ的な使い方ができるようになっていて、実質的にClean、Rhythm、Lead、ペダルの4つのプリアンプがあるという感じです。
    Leadはメタル系の歪みなのでほぼ全てのジャンルをカバーしていると言って良いと思いますが、お洒落なクランチサウンド的なものを作りたい場合には「Cory Wong」や「Tone king Imperial mk2」のほうが良いと思います。

  • ○Cali Suite
    クリーントーンが綺麗に作れます。
    歪みはPliniなどに比べると音の線が細く、ゲインを上げるとローが増えてきて暑苦しい感じになる(OCDのペダルのような挙動をする)ので、個人的には扱いにくいと思いました。

  • ○Gojira
    名前は強そうですがCleanの音が素晴らしく付属のコーラスペダルの質も良いので綺麗な澄み切ったようなサウンドを作ることができます。
    Hotという名前のヘッドアンプも既にローカット処理されているような音色でオケ馴染みも良く弾いいて気持ちの良い音ですが、シングルコイルだとシャリ付くような印象がありました。
    Rustという名前のヘッド暗譜は汚れた感じの歪みでメタル系に特化している印象でした。

  • ○Tim Henson
    Tim Hensonのあの綺麗で鋭く尖ったようなサウンドが出せるというファンにとってはたまらないシミュレーターです。Cleanという名前のヘッドアンプはエレアコみたいな音ですが、真ん中のODというヘッドアンプのゲインを下げることで綺麗なクリーンを作ることができます。
    クランチサウンドも良い感じです。
    強く歪ませるとノイズのような倍音が増えてきてヌケも悪くなるのでクリーンとクランチの範囲で使うのが良さそうです。

  • ○Tone king Imperial mk2
    クリーンから軽めのクランチまでは非常に素晴らしく芯の太い音が作れます。クリーントーンの中では個人的に一番好きなサウンドです。
    ゲインのノブがないようなので歪ませるためには付属のOverdriveのペダルを組み合わせる必要がありますが強く歪ませるとこもったような音色になりやすく、激しい歪みは苦手(メタルやハードロックには向かない)と思われます。
    負荷がやや強めですが、私の環境では他のプラグインとTone king Imperial mk2を4つ立ち上げても問題ありませんでした。

  • ○Cory Wong
    こちらもクリーンからクランチまでは素晴らしい音が出せます。
    歪みはレトロでローファイな感じの音色になりやすいので好みが分かれる(メタルやハードロックには向かない)と思います。


◇Amplitube(IK Multimedia)

一昔前は「アンプシミュレーターと言えばAmplitube」という人が多かったと思いますが最近は他のメーカーの高品質なシミュレーターが増えてきてAmplitubeの存在感は少し薄くなってきているかも知れませんが、老舗だけあって使い勝手は良いです。
膨大な量のアンプモデルやペダルがあってキャビネットシュミレーターもマイクの種類・位置・距離を細かく調整して音作りできるのが魅力的です。
音はやや「もっさり」としている印象で存在感がやや薄い音ですが、その分オケには馴染みやすいです。
最近は後述の「ToneX」を組み込んで使えるようになりました。
Amplitubeだけ単体で買うこともできますがIK MultimediaはTotal Studio 4 MAXというバンドル製品(Amplitubeの他に膨大な量の音源やエフェクトが入ったもの)をセールで大幅値下げすることがあるのでDTMerであればセールを待ってAmplitubeの入ったバンドル製品を買ったほうがお得かも知れません。
また後述のとおり「TONEX Pedal」という実機を買うとAmplitube5とTONEX MAXのプラグインのライセンスが付いてきます。


◇ToneX(IK Multimedia)

最近話題になっているのが無料版のところでも紹介したIK Multimedia社のという製品です。
ToneXはKemperのように実機のサウンドをキャプチャして再現できるプラグインで、プラグイン版Kemper的なイメージです。
さらにIK Multimedia はプラグインとしてのToneX の音をスタジオやライブで使うための「TONEX Pedal」という実機タイプの製品の販売を始めたのですが、一時期は売り切れが続出するくらいの人気になっていました。
価格はKemperよりも大幅に安く、Kemperよりも音が好きという人もいるので、Kemperをシェアをどれだけ奪えるのか今後に注目です。
世界中の様々なアンプをキャプチャした音色が使えるが魅力で様々な音色を試すことができるのが非常に楽しいですが、有料版のToneXは音色の数があまりにも多いので好みの音色を見つけるまでの作業が大変かも知れません。
ちなみに「TONEX Pedal」という実機を買うとAmplitube5とTONEX MAXのプラグインのライセンスが付いてくるので、プラグインのセールの時期でなければAmplitube5とTONEX MAXのプラグインのライセンスだけを買うよりも「TONEX Pedal」を買ったほうがコスパが良いです。
なお「TONEX Pedal」をPCと連携して使う場合には登録が必要なようですので中古で買う場合には注意が必要です。



◇Guitar Rig(Native Instruments)

Native InstrumentsのKOMPLETというバンドル製品を買うとその中にGuitar Rigというシミュレーターが入っています。
(Guitar Rigだけ単体で買うこともできます。)
Native Instrumentsの製品は業務用的でユーザフレンドリーではないインターフェイスのものが多く、正直なところGuitar Rigもあまり使い勝手は良くないです。
KOMPLETにオマケ的に入っているシミュレーターというイメージを持っている人も多く最近はGuitar Rigを推している人も少ないと思いますが、Native Instrumentsらしい味付けの濃いエフェクトが特徴的で飛び道具的な音を作りたい場合やインパクトの強い音色を作りたい場合には重宝するかも知れません。
MarshalのJCM800、RolandのJC120、Fender TWIN REVERB、5150など様々なアンプのシミュレーターが入っていますが、キャビシュミをオフにしてNad IRでサードパーティのIRを使うと実機に近い音が出せるかも知れません。

◇Helix Native(Line 6)

Helix NativeはLine 6のハイエンドのギタープロセッサーHelixと同じ セットが入ったプラグインです。
音が良いということで評判は良いですが、ハードとプラグインからの違いからかハード(実機)のHelixと同じ音は出ないようです。
ちなみにハードのHelixやPod Goを持っている人はHelix Nativeを安く買うことができます。
ハードを買う予定がある人は先にプラグインのHelix Nativeを買うと損をすることになるので注意が必要です。


◇Amp Room(Softube)

SoftubeはMarshalが販売しているCODEシリーズなどのモデリングアンプで技術協力をしていたりと、その音の良さには定評のあるメーカーで、Amp Roomという名称のプラグインを販売しています。
2023年にアンプモデリングの販売方法が再構成されて、往年のMarshalの名機が入った「Marshall Suite」、メタル系の音楽をやる人に便利な「Metal Suite」、ビンテージトーンをまとめた「Vintage Suite」などのラインナップが用意されています。
音色は派手目な味付けのものが多くて弾いていて気持ちが良いです。
個人的にはオケ音源などを作成する時にAmp Roomのモデリングを使うことも多いです。
ただDAWで読み込む際にアドオンを含めて読み込み作業が入るようで、Amp Roomを入れるとDAWの起動にもの凄く時間がかかるようになります。(DAWで起動時にプラグインの検索をしない設定にすると早く立ち上がるようになります。)
Marshalが好きな人にはたまらないと思いますが、系統的には似たようなアンプが複数入っていて守備範囲がやや狭いのでNeural DSPなどと比べるとコスパは悪いかも知れません。


◆比較動画

一部のアンプシミュレーターについては以前に比較動画も作っていますので参考にしていただければです。



◆コンプレッサーとイコライザーについて


DAW上でアンプシミュレーターを使っていて「プロの音源のようなサウンドが作れない」という場合には、コンプレッサーやイコライザーで調整をすると市販の音源に近いサウンドになることがあります。

◇コンプレッサー


アンプシミュレーターの後段にコンプレッサーを入れると市販の楽曲に近い感じの雰囲気がでます。

ギタリストからするとコンプレッサーは「アンプの前段に入れるもの」と考えている人が多いと思いますが、市販の楽曲ではミックスをする際に後段にラック(アウトボード)タイプのコンプレッサーをかけることも多いです。

コンプレッサーは様々な種類があるのでDAWに付属しているものでも良いと思いますし、自分が好きなものを使えば良いと思いますが、個人的にはギターには「1176」(UNIVERSAL AUDIO、昔はUREIだった)や「Fairchild 670」のプラグインを入れることが多いです。

「1176」の実機は多くのスタジオに置いてあるのでレコーディングをする人であれば見ることも多いと思います。

1176のプラグインも様々なメーカーが販売していますが、本家のUNIVERSAL AUDIOの1176のプラグインが実機に近いような気がします。

アタック、リリースともに速めに設定するとギターを気持ち良く鳴らすことができると思います。

UNIVERSAL AUDIOからはペダルタイプの「1176」も販売されていますので、ライブやスタジオなどでも使いたい場合には、こちらのほうが便利かも知れません。

コンプレッサーはかけたほうがカッコ良くなりますがミスや細かいニュアンスも分かりにくくなるので、シビアに練習をしたい人は頼りすぎないほうが良いかも知れません。


◇イコライザー・ディエッサーの活用について


アンプシミュレーターで上手く音作りができない場合にはイコライザーでインプットの高域と低域を削ってあげると実機のアンプのような生っぽいサウンドに近づくことが多いです。


一般的なオーディオインターフェイスのインストゥルメント入力(DI入力)はギターに負荷をかけないので、アンプシミュレータにはギター本体がもつ特性がそのまま入力されます。歪んだサウンド(特にハイゲイン)を作る場合は、アンプシミュレータの前で高域をロールオフすれば、実際のアンプで起きているようなクリーミーなトーンが得られることでしょう。また、低域のロールオフでボトムを引き締めてあげることも大事です。

「アンプシミュレータでよりリアルな音を作るテクニック」
© Media Integration


またディエッサーを使って入力音を調整するのも便利です。

私はボーカルの歯擦音はダイナミックEQで処理することが多いですがギターの音が耳に痛く感じる時はディエッサーを使うことも多く、ディエッサーはほぼギター専用のプラグインになっています。

アンプシミュレータの「前」にDeEsserを挿入するのも効果的なテクニックです。これは、弦を強くピッキングしたときだけに効果を発揮する「インテリジェントな」高周波フィルターのような役割。弱いピッキングで演奏しているときは、高域はそのまま通過してくれます。弱いピッキングなので、さほど歪むこともないでしょう。

もしもブライトなギターサウンドを求めるのであれば、上の方法でディエッサーを通したあとにアンプシミュレータを通し、その後にトレブルブースターなどを入れてあげるとよりギターアンプらしいサウンドになるでしょう。

「アンプシミュレータでよりリアルな音を作るテクニック」
© Media Integration


◆UNIVERSAL AUDIO 「OX」について


ギタリストの中にはお気に入りのアンプヘッドは持っているけど自宅では音が大きすぎて鳴らせないという人も多いと思います。

そんな時に便利なのがUNIVERSAL AUDIOの「OX」です。

「OX」は、アッテネーターとキャビネットシミュレーターをセットにしたような機材で、アンプヘッドのボリュームを爆音の設定にしたまま、自宅でも鳴らせる程度の音量でキャビネットを通したアンプサウンドを再現できたり、そのままレコーディングに使ったりすることができます。

アッテネーター(アンプの音量を下げる機材)は以前からあったのですがサウンドが変わってしまうものも多かったです。

しかし「OX」は真空管アンプの音をリアルに再現できるということでプロのギタリストやエンジニアでも使っている人が増えてきています。

高額な機材ではありますがキャビネットを複数揃えるよりは安いので、自宅でお気に入りの実機のアンプヘッドのサウンドを楽しみたいという人にとってはおすすめです。





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